[1058] 早産・低出生体重児への家族を中心としたケア~理学療法士の関わり~
Keywords:早産児, 低出生体重児, 家族
【はじめに,目的】理学療法士(PT)が様々な予後不良リスクを抱える早産・低出生体重児の発達支援を行うケースが増えている。その介入において育児を行う家族を中心としたケア(Family centered care;FCC)は重要である。脳性まひをはじめとする障がいを持った子どもに対するリハビリテーションにおいて,FCCの重要性が示されているが,早産・低出生体重児で発達支援を必要とする児に対するFCCの実践については報告がない。また,児や家族の状況に応じたPTの関わり方については明らかにされていない。そこで,本研究の目的はFCCに対する親とPTの視点を比較すること,児の特徴との関連を検討することとした。
【方法】対象は北海道内3施設で修正6ヶ月以降まで理学療法士が継続的に介入している早産・低出生体重児24名(男児16名,女児8名)とその親22名,担当したPT9名とした。FCCについて親はThe Measure of Processes of Care-20(MPOC-20)の5領域(「励ましと協力」,「全般的な情報提供」,「子どもに関する具体的な情報提供」,「対等で包括的な関わり」,「尊重と支え」),PTはMeasure of Processes of Care for Service Providers(MPOC-SP)の4領域(「思いやり」,「全般的な情報提供」,「子供に関する情報提供」,「敬意ある対応」)を用いて評価した。児の特徴(出生体重,在胎週数,Dubowitzの神経学的評価法,予後不良疾患(脳室周囲白質軟化症,脳室内出血,新生児慢性肺疾患)罹患の有無,修正6ヶ月時の粗大運動発達,修正6ヶ月時の体重)はカルテ情報より収集した。修正6ヶ月時の粗大運動発達はAlbert Infant Motor Scale(AIMS)で評価した。MPOC-20とMPOC-SPの領域,質問項目ごとに比較検討した。また,児の特徴とMPOC-20の関係をPearsonの相関係数およびMann-WhitneyのU検定を用いて検討した(有意水準は5%)。すべての統計処理はSPSS18.0Jを用いた。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は札幌医科大学倫理委員会の承認を得て行った。対象となる児の親には書面と口頭による説明を行い,署名による同意を得た上でデータ収集を行った。
【結果】MPOC-20の領域別スコアは「励ましと協力」が最も高く,「全般的な情報提供」が最も低かった。個々の項目の分析では,地域サービスの情報提供や情報へのアクセス,書面での情報開示,哺乳や啼泣といった身体面以外への関わりが低く評価された。MPOC-SPの領域月スコアは「敬意ある対応」が最も高く,「子どもに関する情報提供」が最も低かった。情報へのアクセス,書面での情報開示,家族全員への情報提供を低く評価している割合が多かった。児の特徴とMPOC-20の関係は出生体重と「子どもに対する情報提供」(r=-0.49)に有意な相関を認めた(p<0.05)。また,新生児慢性肺疾患のある場合,「励ましと協力」(p=0.029)と「対等で包括的な関わり」(p=0.017)が有意に高い結果であった。その他の児の特徴に関係を認めなかった。
【考察】早産児の発達支援に関わるPTはFCCを実践しており,親も同様の視点を評価していることか明らかになった。早産・低出生体重児の予後や病態に関する情報提供は親を不安にさせる可能性があり,また,PTは診断や病状に関わる説明を行う権限がなく,それらが影響し,情報提供の領域では親,PT共に低い結果となった可能性が考えられた。早産・低出生体重児は出生体重が小さいほど,脳性まひ,精神発達遅滞などのリスクが高くなるとされている。PTはこのような背景を基により情報提供を積極的に行い関わっている可能性がある。また,新生児慢性肺疾患は予後不良因子であり,人工呼吸器管理期間や酸素投与期間が長く,経口哺乳開始の遅延など関わり方により一層の配慮が必要となる場合があり,より包括的な関わりを持っていることが示めされた。その他の周産期データや粗大運動発達レベルとMPOC-20に関係は認められなかった。発達支援においてPTは現在の発達レベルにとらわれず,分け隔てなくFCCを実践していることが示された。子どもの発達や機能の獲得はさまざまな因子とのダイナミックな相互作用の結果,家庭や社会生活のなかでみられる。PTは運動発達に重きを置きがちであるが,今回明らかとなった改善点を考慮することで発達支援の重要な役割を担うことができると考えられる。本研究の限界は対象者が少ないこと,横断研究であり発達支援のアウトカムや疾患と家族への関わりの因果関係までは言及できないことである。
【理学療法研究としての意義】発達支援は育児を行う家族を中心として介入する必要があるが,理学療法士としての関わり方を明確に示した報告はなかった。本研究の結果は今後の早産・低出生体重児の理学療法介入において,根拠をもって家族と関わる上で重要な情報となりうる。
【方法】対象は北海道内3施設で修正6ヶ月以降まで理学療法士が継続的に介入している早産・低出生体重児24名(男児16名,女児8名)とその親22名,担当したPT9名とした。FCCについて親はThe Measure of Processes of Care-20(MPOC-20)の5領域(「励ましと協力」,「全般的な情報提供」,「子どもに関する具体的な情報提供」,「対等で包括的な関わり」,「尊重と支え」),PTはMeasure of Processes of Care for Service Providers(MPOC-SP)の4領域(「思いやり」,「全般的な情報提供」,「子供に関する情報提供」,「敬意ある対応」)を用いて評価した。児の特徴(出生体重,在胎週数,Dubowitzの神経学的評価法,予後不良疾患(脳室周囲白質軟化症,脳室内出血,新生児慢性肺疾患)罹患の有無,修正6ヶ月時の粗大運動発達,修正6ヶ月時の体重)はカルテ情報より収集した。修正6ヶ月時の粗大運動発達はAlbert Infant Motor Scale(AIMS)で評価した。MPOC-20とMPOC-SPの領域,質問項目ごとに比較検討した。また,児の特徴とMPOC-20の関係をPearsonの相関係数およびMann-WhitneyのU検定を用いて検討した(有意水準は5%)。すべての統計処理はSPSS18.0Jを用いた。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は札幌医科大学倫理委員会の承認を得て行った。対象となる児の親には書面と口頭による説明を行い,署名による同意を得た上でデータ収集を行った。
【結果】MPOC-20の領域別スコアは「励ましと協力」が最も高く,「全般的な情報提供」が最も低かった。個々の項目の分析では,地域サービスの情報提供や情報へのアクセス,書面での情報開示,哺乳や啼泣といった身体面以外への関わりが低く評価された。MPOC-SPの領域月スコアは「敬意ある対応」が最も高く,「子どもに関する情報提供」が最も低かった。情報へのアクセス,書面での情報開示,家族全員への情報提供を低く評価している割合が多かった。児の特徴とMPOC-20の関係は出生体重と「子どもに対する情報提供」(r=-0.49)に有意な相関を認めた(p<0.05)。また,新生児慢性肺疾患のある場合,「励ましと協力」(p=0.029)と「対等で包括的な関わり」(p=0.017)が有意に高い結果であった。その他の児の特徴に関係を認めなかった。
【考察】早産児の発達支援に関わるPTはFCCを実践しており,親も同様の視点を評価していることか明らかになった。早産・低出生体重児の予後や病態に関する情報提供は親を不安にさせる可能性があり,また,PTは診断や病状に関わる説明を行う権限がなく,それらが影響し,情報提供の領域では親,PT共に低い結果となった可能性が考えられた。早産・低出生体重児は出生体重が小さいほど,脳性まひ,精神発達遅滞などのリスクが高くなるとされている。PTはこのような背景を基により情報提供を積極的に行い関わっている可能性がある。また,新生児慢性肺疾患は予後不良因子であり,人工呼吸器管理期間や酸素投与期間が長く,経口哺乳開始の遅延など関わり方により一層の配慮が必要となる場合があり,より包括的な関わりを持っていることが示めされた。その他の周産期データや粗大運動発達レベルとMPOC-20に関係は認められなかった。発達支援においてPTは現在の発達レベルにとらわれず,分け隔てなくFCCを実践していることが示された。子どもの発達や機能の獲得はさまざまな因子とのダイナミックな相互作用の結果,家庭や社会生活のなかでみられる。PTは運動発達に重きを置きがちであるが,今回明らかとなった改善点を考慮することで発達支援の重要な役割を担うことができると考えられる。本研究の限界は対象者が少ないこと,横断研究であり発達支援のアウトカムや疾患と家族への関わりの因果関係までは言及できないことである。
【理学療法研究としての意義】発達支援は育児を行う家族を中心として介入する必要があるが,理学療法士としての関わり方を明確に示した報告はなかった。本研究の結果は今後の早産・低出生体重児の理学療法介入において,根拠をもって家族と関わる上で重要な情報となりうる。