[1063] 最大呼気流速と腹部筋群の筋厚との関係
Keywords:超音波, 呼気筋, 筋厚
【はじめに,目的】排痰手技のハッフィングでは気道内の痰を移動させるために速い呼気流速が必要で,腹部筋群(腹直筋,外腹斜筋,内腹斜筋,腹横筋)は呼気流速に寄与する主要な筋群とされている。腹部筋群は,腹腔内圧を高め横隔膜を上方に押し上げること,胸郭を引き下げながら前後径を小さくすることによって呼気流速を高めることに寄与するが,どの腹部筋が最も貢献度が高いのかは不明である。本研究では,各腹部筋群の筋力は直接測定できないため,間接的に筋力を示す値として各筋の筋厚を測定し,最大呼気流速と腹部筋群の筋厚との関係を明らかにすることを目的とした。
【方法】対象は健常男性23名(平均年齢21.1±3.0歳,身長172.2±7.2cm,体重65.7±10.9kg)とした。最大呼気流速はフィリップス・レスピロニクス社製のアセスピークフローメータ(フルレンジ)にマウスピースを装着して測定した。測定は端座位でノーズクリップを付け,最大吸気位から最大限の力で急速に息を呼出させた。数回の練習の後に,3回の最大呼気流速(L/min)の計測を行い,最大値を代表値とした。腹部筋群の筋厚はアロカ社製の超音波診断装置(SSD-3500SX)の10MHzのリニア型プローブを使用し,Bモードで計測した。測定は背臥位で,腹直筋は臍の右側4cm,側腹部(外腹斜筋,内腹斜筋,腹横筋)の筋厚は右肋骨弓下端と腸骨稜上端の中間で中腋窩線の2.5cm前方で画像化を行った。接触させる力によって筋厚は変化するため,プローブの設置位置と角度は自作のホルダーを用いて固定した後に,多量のゲルを介在させてプローブが腹部に接触しないように調節しながら安静呼気位で静止画像の撮影を行った。撮影は各3回で,計測部位は撮影した画像の左右を二等分する位置に統一し,計測した各筋の厚さ(mm)の平均値を解析に用いた。統計にはIBM SPSS Statistics 22.0を用い,Pearsonの積率相関係数によって最大呼気流速と腹部筋群の筋厚との関係を検討した(p<0.05)。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,被験者全員に対し十分な説明を行い,書面による同意を得てから計測を行った。また,所属機関の倫理委員会の承認を受けている。
【結果】最大呼気流速は604.8±66.9L/minであった。以下,各筋の筋厚,相関係数を示す。腹直筋は13.1±2.6mm,r=0.348で有意な相関はなかった。外腹斜筋は10.8±1.9mm,r=0.530で有意な相関が認められた(p<0.01)。内腹斜筋は9.0±2.2mm,r=0.362で有意な相関はなかった。腹横筋は3.3±0.8mm,r=0.278で有意な相関はなかった。
【考察】本研究では,外腹斜筋の筋厚のみ最大呼気流速との間に有意な相関関係のあることが分かった。これは,腹部筋群の中でも外腹斜筋が呼気流速を高めるために最も貢献している可能性を示している。先行研究では,外腹斜筋が下部肋骨の横径を小さくするように作用し,腹直筋が下部肋骨の前後径を小さくするに作用することが示されている。また,最大呼気時の胸郭の動きを解析した先行研究では,前後径に先行し左右径が小さくなることが示されている。そのため,本研究で腹直筋ではなく外腹斜筋に最大呼気流速との相関関係があったことは妥当と考える。一方,腹直筋も胸郭の動きに関与すること,腹圧の変化は外腹斜筋よりも腹横筋や内腹斜筋の筋活動量と相関関係にあることが先行研究で示されていることを勘案すると,外腹斜筋以外の腹部筋群と最大呼気流速との間に有意な相関関係が認められなかったことに疑問は残る。
【理学療法学研究としての意義】本研究の結果は,腹部筋群の中でも外腹斜筋が呼気流速を高めるために最も貢献している可能性を示し,呼気流速の維持・改善のための運動療法の基礎的資料として意義がある。
【方法】対象は健常男性23名(平均年齢21.1±3.0歳,身長172.2±7.2cm,体重65.7±10.9kg)とした。最大呼気流速はフィリップス・レスピロニクス社製のアセスピークフローメータ(フルレンジ)にマウスピースを装着して測定した。測定は端座位でノーズクリップを付け,最大吸気位から最大限の力で急速に息を呼出させた。数回の練習の後に,3回の最大呼気流速(L/min)の計測を行い,最大値を代表値とした。腹部筋群の筋厚はアロカ社製の超音波診断装置(SSD-3500SX)の10MHzのリニア型プローブを使用し,Bモードで計測した。測定は背臥位で,腹直筋は臍の右側4cm,側腹部(外腹斜筋,内腹斜筋,腹横筋)の筋厚は右肋骨弓下端と腸骨稜上端の中間で中腋窩線の2.5cm前方で画像化を行った。接触させる力によって筋厚は変化するため,プローブの設置位置と角度は自作のホルダーを用いて固定した後に,多量のゲルを介在させてプローブが腹部に接触しないように調節しながら安静呼気位で静止画像の撮影を行った。撮影は各3回で,計測部位は撮影した画像の左右を二等分する位置に統一し,計測した各筋の厚さ(mm)の平均値を解析に用いた。統計にはIBM SPSS Statistics 22.0を用い,Pearsonの積率相関係数によって最大呼気流速と腹部筋群の筋厚との関係を検討した(p<0.05)。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,被験者全員に対し十分な説明を行い,書面による同意を得てから計測を行った。また,所属機関の倫理委員会の承認を受けている。
【結果】最大呼気流速は604.8±66.9L/minであった。以下,各筋の筋厚,相関係数を示す。腹直筋は13.1±2.6mm,r=0.348で有意な相関はなかった。外腹斜筋は10.8±1.9mm,r=0.530で有意な相関が認められた(p<0.01)。内腹斜筋は9.0±2.2mm,r=0.362で有意な相関はなかった。腹横筋は3.3±0.8mm,r=0.278で有意な相関はなかった。
【考察】本研究では,外腹斜筋の筋厚のみ最大呼気流速との間に有意な相関関係のあることが分かった。これは,腹部筋群の中でも外腹斜筋が呼気流速を高めるために最も貢献している可能性を示している。先行研究では,外腹斜筋が下部肋骨の横径を小さくするように作用し,腹直筋が下部肋骨の前後径を小さくするに作用することが示されている。また,最大呼気時の胸郭の動きを解析した先行研究では,前後径に先行し左右径が小さくなることが示されている。そのため,本研究で腹直筋ではなく外腹斜筋に最大呼気流速との相関関係があったことは妥当と考える。一方,腹直筋も胸郭の動きに関与すること,腹圧の変化は外腹斜筋よりも腹横筋や内腹斜筋の筋活動量と相関関係にあることが先行研究で示されていることを勘案すると,外腹斜筋以外の腹部筋群と最大呼気流速との間に有意な相関関係が認められなかったことに疑問は残る。
【理学療法学研究としての意義】本研究の結果は,腹部筋群の中でも外腹斜筋が呼気流速を高めるために最も貢献している可能性を示し,呼気流速の維持・改善のための運動療法の基礎的資料として意義がある。