[1079] ウェアラブルモーションセンサを用いた膝外反評価の信頼性および妥当性
キーワード:加速度計, 動作解析, 信頼性
【はじめに,目的】
動作解析を行う方法として,従来から床反力計や三次元動作解析装置を用いることが多く,これらを用いた研究は多数報告されている。しかし,これらは高額で測定環境も限定されることから臨床場面やスポーツ現場に十分普及されているとは言い難い。そこで近年では,小型で持ち運び可能である加速度計が普及しつつあり,加速度計を用いた動作解析が行われてきているが,その信頼性や妥当性については不明な点が多い。また,加速度計を歩行分析に用いた研究報告は散見されるが,動作時の膝外反を加速度計にて評価した報告は渉猟し得ない。本研究の目的は,片脚立位および片脚膝屈曲時の膝外反をウェアラブルモーションセンサおよび静止画像にて評価し,ウェアラブルモーションセンサの信頼性および妥当性を検討することである。
【方法】
対象は,健常成人20名40脚(男性:11名,女性:9名,平均年齢:28.3±5.6歳)とした。モーションセンサは3軸加速度センサ(LSM303D,STMicroelectronics),3軸角速度センサ(L3GD20,STMicroelectronics),マイクロプロセッサ,Bluetoothを内蔵しており,各センサから得られたデータはBluetoothを介してサンプリング周波数200HzでPCに記録される。モーションセンサの外形寸法およびバッテリを含む重量は37×63×16mm,40gと小型軽量であり,これをキネシオロジーテープにて大腿部(膝蓋骨より5cm上縁で大腿の中央)と下腿部(脛骨粗面)に装着し,測定側の足部を第2趾から踵中央を矢状面上に設定した後に静止立位5秒,片脚立位5秒,片脚膝屈曲5秒(膝屈曲角度30度)を連続して左右1回計測した。大腿部と下腿部ともに静止立位時のロール角を0degに較正した後,片脚立位,片脚膝屈曲との差分から大腿部と下腿部の角変位を求めた。解析区間はそれぞれ5秒間のうち中間3秒間とし平均値を用いた。また,計測中は被験者正面(足部から2m,地面上40cm)よりビデオ撮影し,各動作を静止画像にて抜粋した。被験者には事前に上前腸骨棘,膝蓋骨中央,母趾中央にランドマークをつけており,画像解析ソフト(Image J)を用いて膝外反の有無を評価した。検者は2人(検者A,B)とし,1週間後に同条件にて計2回計測した。統計学的解析は,級内相関係数(Intraclass Correlation Coefficient:ICC)を用いて,検者内信頼性ICC(1.1),検者間信頼性ICC(2.1)を課題動作である静止立位と片脚膝屈曲の各課題でそれぞれ算出し,モーションセンサと画像解析の関連はカッパ係数(k係数)を用いて評価した。解析ソフトにはSPSSver12.0を用い,有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は当院倫理委員会の承認を得て実施し,対象者には研究の意義,目的,方法などの説明を十分行い,同意を得た後に実施した。
【結果】
片脚立位時のICC(1.1)は検者Aにて右0.633,左0.755,検者Bにて右0.724,左0.711であり,ICC(2.1)は右0.852左0.765であった。片脚膝屈曲時のICC(1.1)は検者Aにて右0.617,左0.710,検者Bにて右0.78,左0.534であり,ICC(2.1)は右0.505,左0.562であった。k係数は右0.800(p=0.000),左0.600(p=0.006)であった。
【考察】
ICCの解釈には桑原の判定基準を用い,片脚立位時の検者内および検者間信頼性は可能~良好であったが,片脚膝屈曲時の検者内および検者間信頼性は要再考~普通という結果であった。これは課題動作である片脚膝屈曲の難易度が高く,動作自体の信頼性が低いことが影響したのではないかと考える。また,モーションセンサと画像解析の膝外反有無の一致度はLandisの判定基準からModerate~Substantialであり,モーションセンサにて膝外反を評価することは十分可能であることが示唆された。本研究結果より,モーションセンサは高い妥当性を認めたが,運動課題の信頼性については十分な検討が必要である。
【理学療法学研究としての意義】
近年注目されている小型加速度計を用いて膝外反を評価し,その信頼性および妥当性を明らかにした。本研究結果は加速度計を用いて研究する上で重要な情報であり,妥当性について良好な結果を示したモーションセンサの有用性が示唆された一方,評価する動作の再現性については課題が残ることを提示できたことは今後の理学療法研究への意義があると考える。
動作解析を行う方法として,従来から床反力計や三次元動作解析装置を用いることが多く,これらを用いた研究は多数報告されている。しかし,これらは高額で測定環境も限定されることから臨床場面やスポーツ現場に十分普及されているとは言い難い。そこで近年では,小型で持ち運び可能である加速度計が普及しつつあり,加速度計を用いた動作解析が行われてきているが,その信頼性や妥当性については不明な点が多い。また,加速度計を歩行分析に用いた研究報告は散見されるが,動作時の膝外反を加速度計にて評価した報告は渉猟し得ない。本研究の目的は,片脚立位および片脚膝屈曲時の膝外反をウェアラブルモーションセンサおよび静止画像にて評価し,ウェアラブルモーションセンサの信頼性および妥当性を検討することである。
【方法】
対象は,健常成人20名40脚(男性:11名,女性:9名,平均年齢:28.3±5.6歳)とした。モーションセンサは3軸加速度センサ(LSM303D,STMicroelectronics),3軸角速度センサ(L3GD20,STMicroelectronics),マイクロプロセッサ,Bluetoothを内蔵しており,各センサから得られたデータはBluetoothを介してサンプリング周波数200HzでPCに記録される。モーションセンサの外形寸法およびバッテリを含む重量は37×63×16mm,40gと小型軽量であり,これをキネシオロジーテープにて大腿部(膝蓋骨より5cm上縁で大腿の中央)と下腿部(脛骨粗面)に装着し,測定側の足部を第2趾から踵中央を矢状面上に設定した後に静止立位5秒,片脚立位5秒,片脚膝屈曲5秒(膝屈曲角度30度)を連続して左右1回計測した。大腿部と下腿部ともに静止立位時のロール角を0degに較正した後,片脚立位,片脚膝屈曲との差分から大腿部と下腿部の角変位を求めた。解析区間はそれぞれ5秒間のうち中間3秒間とし平均値を用いた。また,計測中は被験者正面(足部から2m,地面上40cm)よりビデオ撮影し,各動作を静止画像にて抜粋した。被験者には事前に上前腸骨棘,膝蓋骨中央,母趾中央にランドマークをつけており,画像解析ソフト(Image J)を用いて膝外反の有無を評価した。検者は2人(検者A,B)とし,1週間後に同条件にて計2回計測した。統計学的解析は,級内相関係数(Intraclass Correlation Coefficient:ICC)を用いて,検者内信頼性ICC(1.1),検者間信頼性ICC(2.1)を課題動作である静止立位と片脚膝屈曲の各課題でそれぞれ算出し,モーションセンサと画像解析の関連はカッパ係数(k係数)を用いて評価した。解析ソフトにはSPSSver12.0を用い,有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は当院倫理委員会の承認を得て実施し,対象者には研究の意義,目的,方法などの説明を十分行い,同意を得た後に実施した。
【結果】
片脚立位時のICC(1.1)は検者Aにて右0.633,左0.755,検者Bにて右0.724,左0.711であり,ICC(2.1)は右0.852左0.765であった。片脚膝屈曲時のICC(1.1)は検者Aにて右0.617,左0.710,検者Bにて右0.78,左0.534であり,ICC(2.1)は右0.505,左0.562であった。k係数は右0.800(p=0.000),左0.600(p=0.006)であった。
【考察】
ICCの解釈には桑原の判定基準を用い,片脚立位時の検者内および検者間信頼性は可能~良好であったが,片脚膝屈曲時の検者内および検者間信頼性は要再考~普通という結果であった。これは課題動作である片脚膝屈曲の難易度が高く,動作自体の信頼性が低いことが影響したのではないかと考える。また,モーションセンサと画像解析の膝外反有無の一致度はLandisの判定基準からModerate~Substantialであり,モーションセンサにて膝外反を評価することは十分可能であることが示唆された。本研究結果より,モーションセンサは高い妥当性を認めたが,運動課題の信頼性については十分な検討が必要である。
【理学療法学研究としての意義】
近年注目されている小型加速度計を用いて膝外反を評価し,その信頼性および妥当性を明らかにした。本研究結果は加速度計を用いて研究する上で重要な情報であり,妥当性について良好な結果を示したモーションセンサの有用性が示唆された一方,評価する動作の再現性については課題が残ることを提示できたことは今後の理学療法研究への意義があると考える。