[1085] 後足部外反角度変化が足圧中心位置に及ぼす影響
Keywords:後足部, 足圧中心, 片脚立位
【はじめに,目的】
臨床上,足関節捻挫や骨折等により後足部malaligmentが生じ,中でも後足部の外反不安定性が顕著にみられることが多い。後足部外反不安定性は,足関節による姿勢制御機能低下や歩行における足部の推進機能低下を招き,矢状面方向の働きを阻害する要因ともなり得る。先行研究では,後足部外反と足圧中心(以下,COP)の左右動揺について多く報告されているものの,COPの前後移動との関係性を報告している研究は散見される程度である。
よって,本研究では後足部外反角度変化がCOPの矢状面位置変化に与える影響を明確にし,足部の評価や治療の一助とすることを目的とした。
【方法】
対象は,整形外科疾患の無い健常成人8名(男性5名,女性3名,平均年齢23.4±3.0歳)とした。
測定は,片脚立位時の前後方向のCOP位置測定に足底圧分布測定装置win-pod(MEDI CAPTEURS社製)を用いた。なお,前後方向のCOP位置は第5中足骨基部後端の位置を基準として表した。
後足部外反角度は,静止立位と片脚立位時の後足部及び下腿を,後正中方向30cmの位置からデジタルビデオカメラにて撮影し,画像解析ソフトImageJ(NIH社製)にて,下腿軸と踵骨軸のなす角度を算出し,静止立位と片脚立位時の後足部外反角度を求めた。下腿軸は下腿遠位1/3と踵骨上端の2点の交線とし,踵骨軸は踵骨上端と踵骨下端の2点の交線とした。
静止立位は,先行研究を参考に固視点を設置し,対象者に注視を求め,体幹正中位,両上肢下垂位,歩幅は棘果長の50%とした。
片脚立位は,下肢を支持基底面から持ち上げ,股関節60°屈曲位,下腿と足部は下垂位を保持する肢位とした。また,すべての被験者の利き足が右側であったことから右片脚立位とした。片脚立位保持時間は2秒間とし,限りなく足関節制御によるデータを抽出するために,他部位の関与が可及的に少なくなるよう指示および学習させ,他部位での代償が観察されたものは除外した。測定は3回実施し,平均値を代表値とした。
統計学的検討は,得られた前後方向のCOP位置と静止立位から片脚立位時の後足部外反角度変化をpeasonの積率相関係数を用いて分析した。なお,統計処理には統計ソフトSPSS Statistics18を用いた。
【倫理的配慮,説明と同意】
被験者にはヘルシンキ宣言に基づいて研究の主旨を十分に説明し,同意を得た上で計測を実施した。
【結果】
後足部外反角度変化と前後方向のCOP位置変化は高い正の相関を示した(r=0.91)。
【考察】
本研究では,後足部外反角度の増大に伴いCOP位置が前方に移動することが示された。後足部外反は距踵関節の回内,外転,背屈の複合運動であり,距舟関節と踵立方関節の関節軸は,横足根関節で平行に位置することとなる。横足根関節は足部の柔軟性と固定性に関与し,横足根関節軸が平行に位置することにより可動性が増加し,柔軟な足部を形成することが確認されている。距舟関節での可動性増大は舟状骨下制を招き,内側縦アーチは低下することになる。柔軟な足部の形成や内側縦アーチの低下による支持性の低下が,片脚立位時におけるCOP位置を前方に位置させた一因であると考える。
また,後足部外反は距骨下関節回内を伴い,一般的に距骨下関節回内は歩行立脚中期以降の身体重心前方への移動を早期に生じさせることが知られている。本研究においても歩行と同様にCOP位置が前方に移動する傾向を示した。このことから,片脚立位は歩行立脚中期を反映すると考える。歩行立脚中期以降の足部は,体重を支持し推進テコとして機能する。後足部外反角度の増大は,足部の柔軟性を増加させ推進テコとしての支持機能低下を招き,COP位置を前方に位置させた一因であると考える。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の結果から,後足部とCOPには関連性があることが示唆された。下肢関節疾患における疼痛は,関節に対するメカニカルストレスと関係があると考えられている。各質量中心の相対的位置関係の変位やCOP制御機能の低下がメカニカルストレスを増大する一因となることが多い。よって,COPを客観的に把握することは理学療法を展開するにあたり臨床的意義があると推察する。COP制御には足関節制御が必須であり,特に後足部は中足部や前足部に影響を与えるとともに,近位部では下腿と直接連結しており,重要部位として位置づけられている。下肢関節疾患に対する理学療法を展開する上で,後足部を含めた足部の評価,治療は重要であると考えられる。今後は,今回の知見をより臨床に活かすため,動作時におけるCOPや後足部運動,下肢関節疾患との関連性に着目し,検討していくことが必要であると考える。
臨床上,足関節捻挫や骨折等により後足部malaligmentが生じ,中でも後足部の外反不安定性が顕著にみられることが多い。後足部外反不安定性は,足関節による姿勢制御機能低下や歩行における足部の推進機能低下を招き,矢状面方向の働きを阻害する要因ともなり得る。先行研究では,後足部外反と足圧中心(以下,COP)の左右動揺について多く報告されているものの,COPの前後移動との関係性を報告している研究は散見される程度である。
よって,本研究では後足部外反角度変化がCOPの矢状面位置変化に与える影響を明確にし,足部の評価や治療の一助とすることを目的とした。
【方法】
対象は,整形外科疾患の無い健常成人8名(男性5名,女性3名,平均年齢23.4±3.0歳)とした。
測定は,片脚立位時の前後方向のCOP位置測定に足底圧分布測定装置win-pod(MEDI CAPTEURS社製)を用いた。なお,前後方向のCOP位置は第5中足骨基部後端の位置を基準として表した。
後足部外反角度は,静止立位と片脚立位時の後足部及び下腿を,後正中方向30cmの位置からデジタルビデオカメラにて撮影し,画像解析ソフトImageJ(NIH社製)にて,下腿軸と踵骨軸のなす角度を算出し,静止立位と片脚立位時の後足部外反角度を求めた。下腿軸は下腿遠位1/3と踵骨上端の2点の交線とし,踵骨軸は踵骨上端と踵骨下端の2点の交線とした。
静止立位は,先行研究を参考に固視点を設置し,対象者に注視を求め,体幹正中位,両上肢下垂位,歩幅は棘果長の50%とした。
片脚立位は,下肢を支持基底面から持ち上げ,股関節60°屈曲位,下腿と足部は下垂位を保持する肢位とした。また,すべての被験者の利き足が右側であったことから右片脚立位とした。片脚立位保持時間は2秒間とし,限りなく足関節制御によるデータを抽出するために,他部位の関与が可及的に少なくなるよう指示および学習させ,他部位での代償が観察されたものは除外した。測定は3回実施し,平均値を代表値とした。
統計学的検討は,得られた前後方向のCOP位置と静止立位から片脚立位時の後足部外反角度変化をpeasonの積率相関係数を用いて分析した。なお,統計処理には統計ソフトSPSS Statistics18を用いた。
【倫理的配慮,説明と同意】
被験者にはヘルシンキ宣言に基づいて研究の主旨を十分に説明し,同意を得た上で計測を実施した。
【結果】
後足部外反角度変化と前後方向のCOP位置変化は高い正の相関を示した(r=0.91)。
【考察】
本研究では,後足部外反角度の増大に伴いCOP位置が前方に移動することが示された。後足部外反は距踵関節の回内,外転,背屈の複合運動であり,距舟関節と踵立方関節の関節軸は,横足根関節で平行に位置することとなる。横足根関節は足部の柔軟性と固定性に関与し,横足根関節軸が平行に位置することにより可動性が増加し,柔軟な足部を形成することが確認されている。距舟関節での可動性増大は舟状骨下制を招き,内側縦アーチは低下することになる。柔軟な足部の形成や内側縦アーチの低下による支持性の低下が,片脚立位時におけるCOP位置を前方に位置させた一因であると考える。
また,後足部外反は距骨下関節回内を伴い,一般的に距骨下関節回内は歩行立脚中期以降の身体重心前方への移動を早期に生じさせることが知られている。本研究においても歩行と同様にCOP位置が前方に移動する傾向を示した。このことから,片脚立位は歩行立脚中期を反映すると考える。歩行立脚中期以降の足部は,体重を支持し推進テコとして機能する。後足部外反角度の増大は,足部の柔軟性を増加させ推進テコとしての支持機能低下を招き,COP位置を前方に位置させた一因であると考える。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の結果から,後足部とCOPには関連性があることが示唆された。下肢関節疾患における疼痛は,関節に対するメカニカルストレスと関係があると考えられている。各質量中心の相対的位置関係の変位やCOP制御機能の低下がメカニカルストレスを増大する一因となることが多い。よって,COPを客観的に把握することは理学療法を展開するにあたり臨床的意義があると推察する。COP制御には足関節制御が必須であり,特に後足部は中足部や前足部に影響を与えるとともに,近位部では下腿と直接連結しており,重要部位として位置づけられている。下肢関節疾患に対する理学療法を展開する上で,後足部を含めた足部の評価,治療は重要であると考えられる。今後は,今回の知見をより臨床に活かすため,動作時におけるCOPや後足部運動,下肢関節疾患との関連性に着目し,検討していくことが必要であると考える。