第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 口述 » 運動器理学療法 口述

骨・関節10

Sat. May 31, 2014 2:50 PM - 3:40 PM 第12会場 (5F 502)

座長:石垣直輝(船橋整形外科病院理学診療部)

運動器 口述

[1087] タオルギャザリングエクササイズと足趾底屈エクササイズの表面筋電図解析

城下貴司 (群馬パース大学)

Keywords:足趾, 表面筋電図, タオルギャリングエクササイズ

【目的】
我々は足趾エクササイズについて,第42と43回理学療法学術大会では臨床研究を,第46回では表面筋電図による実験研究を,第47と48回では横断および縦断研究で形態学的研究を行ってきた。
いずれもタオルギャザリングエクササイズ(以下TGE)と足内側縦アーチとの関連性は低いと報告したが,その根拠を示す必要性があった。
我々は足趾底屈エクササイズの表面筋電図解析は既に報告した,本研究は足趾底屈エクササイズと併せたTGEの表面筋電図解析を比較することに着目し,TGEの運動学的根拠を示すことを目的とした。
【方法】
機材は小型データロガシステムpicoFA-DL-2000(4アシスト)とFA-DL-140ディスポ電極を使用しサンプリング周波数は1kHz,5~500Hzの周波数を抽出,時定数0.03secとした。
対象は特に足趾や足関節運動をしても問題のなく,過去6ヶ月間,足関節周囲の傷害により医療機関にかかっていない健常者14名14足,年齢24.6±6.3歳とした。
実験項目は全趾での底屈エクササイズ,母趾での底屈エクササイズ,2から5趾での底屈エクササイズ,そしてTGEとした。
足趾底屈エクササイズは被験者に端坐位姿勢,大腿遠位端に3kgの重錘をのせ趾頭で踵を挙上させるように底屈エクサイサイズ(等尺性収縮約5秒間)をおこなった。膝および股関節の代償運動抑制を目的に,被験者の体幹前傾,膝の鉛直線上に頭部を位置させた。
TGEは被験者に端坐位姿勢,足趾完全伸展から完全屈曲を1周期とし,母趾頭にフットスイッチを貼付し1周期を算出した。
電極は腓骨小頭直下の長腓骨筋,内果やや後上方の内がえし筋群,腓腹筋内側頭筋腹,腓腹筋外側頭筋腹の4カ所に貼付した。足趾底屈エクササイズの解析は定常状態と思われる等尺性収縮5秒間の内,2秒間の筋電積分値(IEMG)を採用した。全趾による底屈エクササイズのIEMGをベースラインとして他の条件を正規化(%IEMG)した。TGEの解析は3から5周期を計測し,定常状態と思われる任意の1周期を採用した。エクサイサイズ別の各筋出力の比較はKruskal Wallis検定後,Mann-Whitney検定を採用した。統計ソフトはSPSS21.0を使用した。
【説明と同意】
すべての被験者に対して,実験説明書予め配布し研究の主旨と内容について十分説明をした後,同意書に署名がされた。また本研究は群馬パース大学および早稲田大学の倫理委員会の承認のもと行った。
【結果】
母趾底屈エクササイズでは,長腓骨筋が126.3±9.8%,内がえし筋群が112.4±13.1%,腓腹筋外側頭が79.2±8.1%,内側頭は90.2±5.9%であり,有意に長腓骨筋が腓腹筋内外側頭よりも高値を示した(p=0.003,0.000)。
2から5趾底屈エクササイズでは,長腓骨筋が64.4±5.2,内がえし筋群が161.9±25.2%,外側頭は76.1±7.8%,内側頭97.8±5.0%を示し,内がえし筋群が長腓骨筋や腓腹筋外側頭よりも有意に高値を,長腓骨筋が腓腹筋内側頭よりも有意に低値を示した(p=0.000,0.003,0.000)。
TGEでは,長腓骨筋が44.5±6.1%,内がえし筋群が145.1±21.4%,腓腹筋外側頭が18.8.±2.9%,内側頭は26.3±4.8%であった。内がえし筋群が他の筋群よりも有意に高値を示した(p=0.000,0.000,0.000)。
【考察】
本研究は筆者が考案した足趾底屈エクササイズとTGEを表面筋電図解析で比較したものである。
足趾底屈エクササイズの筋放電パターンに関しては,本研究は先行研究と類似した。
足趾底屈エクササイズとTGEを併せて比較すると,本研究のTGEおよび2から5趾底屈エクササイズは内がえし筋群が優位となり,母趾底屈エクササイズは長腓骨筋が優位な筋放電パターンを示した,すなわちTGEと2から5趾底屈エクササイズの筋放電パターンが類似した。
形態学的変化に着目した先行研究では,TGEおよび母趾底屈エクササイズは足内側縦アーチとの関連性は低く,2から5趾底屈エクササイズと足内側縦アーチとの関連性は高かった,すなわちTGEと母趾底屈エクササイズの形態学的な研究結果は類似した。
以上から,形態学的研究と表面筋電図解析による結果が一致しなかった。表面筋電図解析だけでは形態学的研究の根拠を示すことが困難であった。
本研究の内がえし筋群の電極は後脛骨筋,長趾屈筋,長母趾屈筋のクロストークによるものである,単独筋ごとに明確な変化を示せない表面筋電図の限界があった,そのことは形態学的研究と結果が一致しなかった原因の一つと考えられた。今後は上述の矛盾した結果についてさらに研究していく課題が残された。
【理学療法学研究としての意義】
本研究から,足趾の評価治療は全趾を評価するのでなく足趾ごと評価治療することの必要性の意義を改めて示した。足関節の研究において表面筋電図のみで臨床的な現象を解釈することの困難さも示せた。