[1088] 足関節捻挫後の機能的不安定性に対する経皮的電気刺激を加えたトレーニングの効果について
キーワード:足関節捻挫, 重心動揺計, 筋電図
【はじめに,目的】足関節捻挫後の機能的不安定性を有する場合は,腓骨筋群の筋力低下や筋収縮の遅延が存在するという報告がある。我々は過去の研究において,足関節捻挫後の機能的不安定性に対しての経皮的末梢経電気刺激療法(transcutaneous electrical nerve stimulation以下,TENS)が片脚立位時やジャンプ動作での片脚着地時の重心動揺を減少させ,捻挫後の早期リハビリテーションとして効果的であると報告した。またスポーツ復帰前の動きに重点をおいた理学療法では,このTENSと運動療法を組み合わせることで更なる効果が期待できる。そこで本研究の目的は,足関節捻挫後の機能的不安定性に対して運動中にTENSを加えることにより理学療法の効果が増強するかを検討することである。
【方法】当大学の運動系クラブに所属する男子学生7名(平均年齢21.3±0.9歳,平均身長172.1±4.4cm,平均体重65.0±4.4kg)である。対象は捻挫の既往がある足部(以下捻挫側)がKarlssonらの足関節機能的安定性スコア80点以下,なおかつ捻挫側は非捻挫側より15点以上差があるものを選定した。被験者に対して不安定板上(インターリハ)でバランスエクササイズを実施する条件(以下,EX条件)と不安定板上でバランスエクササイズを実施する際にTENSを加える条件(以下,TENS付加条件)の実験順序をランダムに設定する。エクササイズは,課題40分間で不安定板上での左右下肢のレッグランジ,サイドランジ,脚踏み動作,スクワット,片脚立位保持動作を含んだ10分間のEXを3回実施し,5分の休憩を2回挟んだ。TENS付加条件は,EX条件に40分間のTENSによる電気刺激を継続する課題とした。測定は,重心動揺計(ユニメック)を用いて,エクササイズ施行前・後において,30秒間の開眼片脚立位時の足圧中心(center of pressure以下COP)の移動距離(以下,COP総軌跡長)を3回計測し,平均値を算出した。また同時に開眼片脚立位時の下腿の筋活動を,腓骨筋,前脛骨筋,後脛骨筋,腓腹筋に電極を貼布し,筋電図(キッセイコムテック)で測定を実施した。TENSは総腓骨神経に感覚閾値レベルの強さ(4.7±1.2mA)を40分間実施した。また統計学検討方法として,EX条件とTENS付加EX条件の捻挫側と非捻挫側をU検定,さらに課題前後をWilcoxon検定で比較した。危険率は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,研究目的及び方法を対象者に書面にて説明し,本研究の同意書にサインを貰い同意を得ている。本研究は,本学倫理委員会で承認されている。
【結果】課題前の捻挫側と非捻挫側の比較において,EX条件におけるCOP総軌跡長は捻挫側1183.5±239.9mm,非挫側1056.9±215.9mm,TENS付加条件の捻挫側1154±259.7mm,非捻挫側1058.2mmであり,両条件共に捻挫側のCOP総軌跡長が有意に増加した。また両課題前後の比較においてEX条件におけるCOP総軌跡長は,捻挫側1183.5±239.9mmから1120.1±214.9mmと有意な変化はなかったが,TENS付加条件は,COP総軌跡長が捻挫側1154.1±259.7mmから1013.3±242.1mmと有意に減少した。また筋電図の結果では,TENS付加条件の課題前後の比較において,捻挫側の捻挫側腓骨筋群の積分値は,2160.5±155.8mVら1553.5±732.4mVと有意に減少した。
【考察】捻挫側による片脚立位時の重心動揺は,TENS付加条件の課題前後で有意に減少していた。また筋電図の結果では,TENS付加条件は,捻挫側の腓骨筋郡の筋積分値が課題前後で有意に減少していた。Wuらの報告では,正中神経への電気刺激を連続で実施し,15分間隔で脳血流量の評価を実施して30分間以上で血流が増大し,大脳皮質感覚野から皮質間連絡により運動野への興奮が伝導することを確認している。よって今回の研究によるTENSは,総腓骨神経に関連する大脳皮質感覚野から皮質間連絡により運動野への興奮が伝わり,長・短腓骨筋などの下腿筋群の反応性を高めたため,片脚立位時の重心動揺の減少及び腓骨筋の筋積分値の減少に繋がったのではないかと推察する。
【理学療法学研究としての意義】本研究は,足関節捻挫後の運動療法にTENSを加える事により,理学療法の効果が増大する可能性を示唆し,足関節捻挫のリハビリテーション発展に寄与すると考える。
【方法】当大学の運動系クラブに所属する男子学生7名(平均年齢21.3±0.9歳,平均身長172.1±4.4cm,平均体重65.0±4.4kg)である。対象は捻挫の既往がある足部(以下捻挫側)がKarlssonらの足関節機能的安定性スコア80点以下,なおかつ捻挫側は非捻挫側より15点以上差があるものを選定した。被験者に対して不安定板上(インターリハ)でバランスエクササイズを実施する条件(以下,EX条件)と不安定板上でバランスエクササイズを実施する際にTENSを加える条件(以下,TENS付加条件)の実験順序をランダムに設定する。エクササイズは,課題40分間で不安定板上での左右下肢のレッグランジ,サイドランジ,脚踏み動作,スクワット,片脚立位保持動作を含んだ10分間のEXを3回実施し,5分の休憩を2回挟んだ。TENS付加条件は,EX条件に40分間のTENSによる電気刺激を継続する課題とした。測定は,重心動揺計(ユニメック)を用いて,エクササイズ施行前・後において,30秒間の開眼片脚立位時の足圧中心(center of pressure以下COP)の移動距離(以下,COP総軌跡長)を3回計測し,平均値を算出した。また同時に開眼片脚立位時の下腿の筋活動を,腓骨筋,前脛骨筋,後脛骨筋,腓腹筋に電極を貼布し,筋電図(キッセイコムテック)で測定を実施した。TENSは総腓骨神経に感覚閾値レベルの強さ(4.7±1.2mA)を40分間実施した。また統計学検討方法として,EX条件とTENS付加EX条件の捻挫側と非捻挫側をU検定,さらに課題前後をWilcoxon検定で比較した。危険率は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,研究目的及び方法を対象者に書面にて説明し,本研究の同意書にサインを貰い同意を得ている。本研究は,本学倫理委員会で承認されている。
【結果】課題前の捻挫側と非捻挫側の比較において,EX条件におけるCOP総軌跡長は捻挫側1183.5±239.9mm,非挫側1056.9±215.9mm,TENS付加条件の捻挫側1154±259.7mm,非捻挫側1058.2mmであり,両条件共に捻挫側のCOP総軌跡長が有意に増加した。また両課題前後の比較においてEX条件におけるCOP総軌跡長は,捻挫側1183.5±239.9mmから1120.1±214.9mmと有意な変化はなかったが,TENS付加条件は,COP総軌跡長が捻挫側1154.1±259.7mmから1013.3±242.1mmと有意に減少した。また筋電図の結果では,TENS付加条件の課題前後の比較において,捻挫側の捻挫側腓骨筋群の積分値は,2160.5±155.8mVら1553.5±732.4mVと有意に減少した。
【考察】捻挫側による片脚立位時の重心動揺は,TENS付加条件の課題前後で有意に減少していた。また筋電図の結果では,TENS付加条件は,捻挫側の腓骨筋郡の筋積分値が課題前後で有意に減少していた。Wuらの報告では,正中神経への電気刺激を連続で実施し,15分間隔で脳血流量の評価を実施して30分間以上で血流が増大し,大脳皮質感覚野から皮質間連絡により運動野への興奮が伝導することを確認している。よって今回の研究によるTENSは,総腓骨神経に関連する大脳皮質感覚野から皮質間連絡により運動野への興奮が伝わり,長・短腓骨筋などの下腿筋群の反応性を高めたため,片脚立位時の重心動揺の減少及び腓骨筋の筋積分値の減少に繋がったのではないかと推察する。
【理学療法学研究としての意義】本研究は,足関節捻挫後の運動療法にTENSを加える事により,理学療法の効果が増大する可能性を示唆し,足関節捻挫のリハビリテーション発展に寄与すると考える。