[1089] NICU退院時MRI所見と発達予後との関係について
キーワード:NICU, MRI, 予後
【はじめに】NICU(Neonatal Intensive Care Unit;以下NICU)管理を要したハイリスク児の予後は芳しくない。近年では高次脳機能の問題も注目されるが,両親にとっては,歩行が出来るか否かは最も明確でかつ最初の課題の1つである。発達予後予測において,頭部MRI所見は有用とされるが,神経学的予後に一致しないという報告もある。本研究は,NICUからリハビリテーション(以下リハ)依頼があったハイリスク児における予後予測に生かす目的で,退院時MRI所見と歩行機能に着目した発達予後の関係を検討した。
【方法】2010年4月~2012年3月にリハ依頼があった120名のうち,死亡例4名,転居や通院中断・終了による発達予後が確認できなかった23名,染色体異常等の基礎疾患を認めた9名を除いた84名を対象とした。超低出生体重児39名,極低出生体重児30名,低出生体重児9名,2500g以上6名であった。
発達予後は脳性麻痺(Cerebral Palsy;以下CP)の有無と歩行獲得月齢とし,1m程度の歩行が可能になった修正月齢を理学療法場面にて聴取もしくは診療記録より抽出した。退院時MRI所見は,放射線科医師の読影で,正常,正常範囲,異常の3群に分類し,発達予後との関係について検討した。正常範囲群は,脳室の拡大や白質量に若干の所見を認めるものの,正常範囲と読影されたものとした。また頭部MRIの再検査を行った13名については結果を同様に3群に分類し,退院時の結果と比較した。
【倫理的配慮】ヘルシンキ宣言に基づき,個人情報の扱いに留意した。
【結果】6名がCPと診断され,3名が歩行困難であった。退院時MRI所見は,未施行を加え計4群に分類した。正常群は46名,正常範囲群は10名,異常群は26名,未施行群は2名であった。再検査の施行は,正常群2名,正常範囲群1名,異常群9名の計12名で,発達の遅れに対し12~18ヶ月で施行された。正常群の2名は異常,正常範囲群の1名は正常範囲,異常群は異常が8名,正常範囲群が1名であり,3名が退院時所見と異なった。退院時MRI所見と発達予後の関係は,CPは異常群で5名,発生率が0.17,正常範囲群は0名,正常群は1名,発生率は0.02であった。異常群のCP5名で,退院時MRIにて孔脳症,脳質周囲白質軟化症(Periventricular Leukomalacia;以下PVL)を認めた3名は早期にCPと診断され,GMFCSレベル(以下レベル)I,IV,Vそれぞれ1名ずつであった。レベルIの児は18ヶ月で歩行を獲得した。退院時MRIが「右脳室拡大,陳旧姓出血変化」と「脳室内出血II°」の所見であった2名は,再検査で「右PVL」「脳室拡大,白質発達不良,PVL」を認めた。1人は片麻痺,レベルI,23ヵ月で歩行を獲得した。もう1人は両麻痺,レベルIVであった。正常群のCP1名は,再検査にて「側脳室軽度拡大,白質発達不良,PVL 」と診断,両麻痺,レベルII,26か月で歩行を獲得した。
歩行獲得月齢の平均は,正常群14ヶ月,正常範囲群17ヶ月,異常群16.3ヶ月,未施行群15ヶ月であった。また,18ヶ月において歩行が未獲得であったのは,CPを除外し,正常群1名,正常範囲群2名,異常群1名,未施行群1名の計5名であった。その内2名(正常範囲群,未施行群1名ずつ)は支持性低下に対し下肢装具を作成した。2歳過ぎに歩行を獲得した2名(異常群,正常範囲群1名ずつ)は超低出生体重児であった。
【考察】退院時MRI所見と予後については,正常群で,CP発生率が低く,平均歩行獲得月齢が早く,異常所見による装具使用や2歳過ぎの歩行獲得を認めないことから,他の群に比べ予後良好であることが確認できた。しかし,退院時MRIで正常と判定された場合でも,再検査によりCPと診断された予後不良例もあった。
反面,退院時MRI所見が異常であってもCPと診断されない場合が高率なことも確認された。正常群以外には,2歳過ぎの歩行獲得や支持性低下に対する装具の必要性を認め,これは発達障害の初期症状として報告されている「筋トーヌスの弱さ」や「活動性の低さ」,「始歩の遅れ」等と一致する可能性も示唆された。自閉症や発達性協調運動障害もMRI所見の異常を認めるという報告もあることから,異常群,正常範囲群ではこれらの障害発生についても考慮した介入が重要であると考えられた。
頭部MRI所見は鋭敏な検査で,頭部MRI所見がCP発生予測に有用であるとされる反面,MRIは脳実質病変が明らかであれば有用であるが,脳室拡大のみや髄鞘化の遅れのみでは予測は難しいという報告もある。今後の予後予測の精度を高める為には,異常所見についての分析を深めると共に,理学療法評価や周産期を含めた危険因子についての検討も必要と考える。
【理学療法学研究としての意義】MRI所見と発達予後について明らかにすることは,ハイリスク児の予後予測と早期介入に有益であると考える。
【方法】2010年4月~2012年3月にリハ依頼があった120名のうち,死亡例4名,転居や通院中断・終了による発達予後が確認できなかった23名,染色体異常等の基礎疾患を認めた9名を除いた84名を対象とした。超低出生体重児39名,極低出生体重児30名,低出生体重児9名,2500g以上6名であった。
発達予後は脳性麻痺(Cerebral Palsy;以下CP)の有無と歩行獲得月齢とし,1m程度の歩行が可能になった修正月齢を理学療法場面にて聴取もしくは診療記録より抽出した。退院時MRI所見は,放射線科医師の読影で,正常,正常範囲,異常の3群に分類し,発達予後との関係について検討した。正常範囲群は,脳室の拡大や白質量に若干の所見を認めるものの,正常範囲と読影されたものとした。また頭部MRIの再検査を行った13名については結果を同様に3群に分類し,退院時の結果と比較した。
【倫理的配慮】ヘルシンキ宣言に基づき,個人情報の扱いに留意した。
【結果】6名がCPと診断され,3名が歩行困難であった。退院時MRI所見は,未施行を加え計4群に分類した。正常群は46名,正常範囲群は10名,異常群は26名,未施行群は2名であった。再検査の施行は,正常群2名,正常範囲群1名,異常群9名の計12名で,発達の遅れに対し12~18ヶ月で施行された。正常群の2名は異常,正常範囲群の1名は正常範囲,異常群は異常が8名,正常範囲群が1名であり,3名が退院時所見と異なった。退院時MRI所見と発達予後の関係は,CPは異常群で5名,発生率が0.17,正常範囲群は0名,正常群は1名,発生率は0.02であった。異常群のCP5名で,退院時MRIにて孔脳症,脳質周囲白質軟化症(Periventricular Leukomalacia;以下PVL)を認めた3名は早期にCPと診断され,GMFCSレベル(以下レベル)I,IV,Vそれぞれ1名ずつであった。レベルIの児は18ヶ月で歩行を獲得した。退院時MRIが「右脳室拡大,陳旧姓出血変化」と「脳室内出血II°」の所見であった2名は,再検査で「右PVL」「脳室拡大,白質発達不良,PVL」を認めた。1人は片麻痺,レベルI,23ヵ月で歩行を獲得した。もう1人は両麻痺,レベルIVであった。正常群のCP1名は,再検査にて「側脳室軽度拡大,白質発達不良,PVL 」と診断,両麻痺,レベルII,26か月で歩行を獲得した。
歩行獲得月齢の平均は,正常群14ヶ月,正常範囲群17ヶ月,異常群16.3ヶ月,未施行群15ヶ月であった。また,18ヶ月において歩行が未獲得であったのは,CPを除外し,正常群1名,正常範囲群2名,異常群1名,未施行群1名の計5名であった。その内2名(正常範囲群,未施行群1名ずつ)は支持性低下に対し下肢装具を作成した。2歳過ぎに歩行を獲得した2名(異常群,正常範囲群1名ずつ)は超低出生体重児であった。
【考察】退院時MRI所見と予後については,正常群で,CP発生率が低く,平均歩行獲得月齢が早く,異常所見による装具使用や2歳過ぎの歩行獲得を認めないことから,他の群に比べ予後良好であることが確認できた。しかし,退院時MRIで正常と判定された場合でも,再検査によりCPと診断された予後不良例もあった。
反面,退院時MRI所見が異常であってもCPと診断されない場合が高率なことも確認された。正常群以外には,2歳過ぎの歩行獲得や支持性低下に対する装具の必要性を認め,これは発達障害の初期症状として報告されている「筋トーヌスの弱さ」や「活動性の低さ」,「始歩の遅れ」等と一致する可能性も示唆された。自閉症や発達性協調運動障害もMRI所見の異常を認めるという報告もあることから,異常群,正常範囲群ではこれらの障害発生についても考慮した介入が重要であると考えられた。
頭部MRI所見は鋭敏な検査で,頭部MRI所見がCP発生予測に有用であるとされる反面,MRIは脳実質病変が明らかであれば有用であるが,脳室拡大のみや髄鞘化の遅れのみでは予測は難しいという報告もある。今後の予後予測の精度を高める為には,異常所見についての分析を深めると共に,理学療法評価や周産期を含めた危険因子についての検討も必要と考える。
【理学療法学研究としての意義】MRI所見と発達予後について明らかにすることは,ハイリスク児の予後予測と早期介入に有益であると考える。