第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 生活環境支援理学療法 ポスター

福祉用具・地域在宅6

Sat. May 31, 2014 2:50 PM - 3:40 PM ポスター会場 (生活環境支援)

座長:大森豊(訪問看護リハビリテーションネットワーク)

生活環境支援 ポスター

[1112] 要介護高齢者の在宅生活を支える訪問理学療法士の役割

島袋壮仁 (亀田メディカルセンターリハビリテーション事業部訪問リハビリテーション)

Keywords:介護負担感, 在宅介護生活, 訪問リハビリテーション

【はじめに,目的】
高齢化の進展に伴い,独居高齢者や老老介護世帯に対する支援は喫緊の社会的課題である。本研究では在宅で高齢障害者介護を担っている家族の身体的精神的負担を調査し,その影響要因を分析して今後の対策につなげることを目的とした。
【方法】
対象は当センターの訪問リハビリテーション(以下;訪問リハ)を利用中で,本研究に協力の得られた21名(男性12名,女性9名,平均年齢81.5歳)とその主介護者とした。疾患内訳は,脳損傷8名,脊髄障害4名,内部(心・腎不全)障害3名,認知症3名,その他(骨折,がん,筋炎)3名であった。調査項目は介護度,ADL能力(Barthel Index以下;BI),同居者数,主介護者の続柄と年齢,Zarit介護負担尺度日本語版(以下;J-ZBI)と介護サービス(デイサービス,ショートステイ,訪問介護,訪問入浴)の利用状況,認知症または高次脳機能障害の有無とした。また主介護者の続柄で配偶者(配偶者群)とその他(嫁または実子,以下;嫁・子群)の2群に分けて,上記の調査項目を群間比較した。
【倫理的配慮,説明と同意】
当センターの定める個人情報保護規定に基づき,口頭で説明して同意を得て主介護者に対して自記式質問紙調査を行った。その他は電子カルテよりデータを抽出し,匿名化して個人が特定されないように保管し管理した。
【結果】
対象の介護度はそれぞれ,要介護1:1名,2:6名,3:2名,4:8名,5:4名で,要介護4・5が57%であった。主介護者の続柄は配偶者が13件,嫁が2件,実子が6件で,主介護者の平均年齢は67.9歳であった。患者のBIは,配偶者群が53.8±28.6(平均±標準偏差)点,嫁・子群は61.3±19.2点で両群間に有意な差は認めなかった。在宅生活の同居人数は2人:14件,3人:3件,4人以上:4件で,2人暮らしが67%を占めていた。J-ZBIでは配偶者群が21.5±15.2点,嫁・子群は37.4±20.3点で,嫁・子群の介護負担感が有意に強かった(p=0.04)。介護サービス利用状況は,配偶者群13名では施設系サービス(デイサービス5名,ショートステイ2名)が利用,訪問系サービス(訪問介護3名,訪問入浴3名)と利用率は全て半数以下であったのに対し,嫁・子群8名はそれぞれデイサービス7名,ショートステイ5名,訪問介護7名,訪問入浴0件と,訪問入浴以外は利用率が高い状況であった。認知症・高次脳機能障害の併存状況は,配偶者群が13名中6名で嫁・子群は8名中6名が合併していた。
【考察】
老夫婦での老老介護の状況よりも,実子や嫁が主介護者となって在宅介護している状況で介護負担感がより強かった。患者のBIは配偶者群よりも嫁・子群の方が高い傾向であったにも関わらず,介護負担感が強かった要因には身体的なストレスよりも精神的なストレスが起因すると考えられ,理学療法士として訪問リハで基本動作やADLの維持や介助量軽減だけでは対応が不十分であると示唆された。また認知症や高次脳障害を合併する患者の割合が多いことも影響していると予想され,疾病や障害の理解と受容など介護者やその家族への教育・啓蒙などの介入や支援も必要であると考えられた。J-ZBIを項目別にみると,嫁・子群では「介護のほかに家事や仕事などもこなしていかなければならずストレスだなと思うことがありますか」,「介護があるので家族や友人と付き合いづらくなっていると思いますか」,「介護が始まって以来,自分の思い通りの生活ができなくなったと思うことがありますか」,の3つの質問項目で配偶者群よりも介護負担が強い傾向があった。介護サービスの利用状況は配偶者群よりも多いが,「忙しさ」や「自身のプライベートな時間や活動に対する不満」を解消するには至らないため,サービスの利用を促すこと以外にも介護者の状況を察して,介護ストレスの軽減策を個別に検討する必要がある。
【理学療法研究としての意義】
要介護高齢者の在宅療養生活は今後も増加していくことが予想され,地域包括ケアシステムの構築のため,在宅医療・介護サービスの充実が求められている。その中で理学療法士は地域包括ケアを支える役割が期待されており,住環境および介護者を含めた,患者の生活支援への関わりが重要となる。介護者の身体的精神的負担を把握し,その軽減策を検討することは安定した在宅療養生活の継続につながるため意義があると考える。