[1114] 訪問看護利用者における閉じこもりの出現と関連要因
Keywords:訪問リハビリテーション, 外出頻度, 運動機能
【はじめに,目的】訪問看護利用者には,介護保険サービスや移動支援サービスを用い,積極的に外出を行う者がいる一方,環境の変化や他者交流を好まないなど,精神・心理面の問題により通所系サービスを利用せず,自宅で閉じこもる者も多い。また,介護保険による訪問介護では,通院等の外出は認められているものの,趣味活動による外出支援は認められていないのが現状である。先行研究では,訪問看護利用者の外出を行わない理由として,物理的環境や社会的環境の問題,障害に伴う自己効力感の欠如,外出へ興味がないという心理的要因が外出に影響していたことを報告しているが,訪問看護利用者の外出行動についての研究は散見される程度である。本研究は,訪問看護利用者における外出頻度と身体機能,心理機能との関連を明らかにすることを目的とした。通所施設利用を含めた外出頻度と,通所施設利用を除いた外出頻度のそれぞれに分けて検討した。
【方法】北海道札幌市にある訪問看護ステーション利用者32人(年齢76.5±9.1歳,女性19人)に対して,外出行動に関する質問紙調査および身体機能評価を実施した。質問紙は1週間の外出頻度,生活空間(Life Space Assessment:LSA),健康関連QOL(EQ-5D),身体活動セルフ・エフィカシー(歩く自信,階段を昇る自信,物を持つ自信),抑うつ傾向(Geriatric Depression Scale:GDS-5)やる気(Apathy Scale)を聴取した。安村らの定義に従い,週1回以上外出していない状態を「閉じこもり」と定義し,通所系サービスの利用日を含めた場合と,除いた場合の閉じこもりの有無を調べた。身体機能は,Short Physical Performance Battery(SPPB),握力,およびBarthel Index(BI)を測定した。また,訪問看護記録より年齢,身長,体重,通所施設利用頻度,同居の有無,配偶者の有無,訪問看護利用期間を調べた。分析は,それぞれの外出頻度と各変数との関連についてSpearmanの順位相関係数を求めた。また,閉じこもり状態に与える因子の検討として,通所利用を含めた場合と含めない場合の閉じこもりの有無を従属変数として,年齢,性別,BMIおよび各変数を説明変数としたロジスティック回帰分析を行った。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言の主旨に沿い,質問紙調査,身体機能評価を実施するにあたり,研究の主旨および目的を口頭と文章にて説明し,書面にて同意を得た。なお,本研究は札幌医科大学倫理委員会の承認を受けて実施した。
【結果】閉じこもり者は,通所施設利用の外出を含めて7人(21.9%)であり,通所施設利用日を除いた場合には17人(53.1%)であった。通所施設利用を含めた外出頻度は,LSA(ρ=0.39)と歩く自信(ρ=0.36)との間に有意な相関を認めた。また,通所施設を除いた外出頻度は,LSA(ρ=0.43),握力(ρ=0.44),SPPB(ρ=0.44),BI(ρ=0.45),EQ-5D(ρ=0.41),歩く自信(ρ=0.45)および階段を昇る自信(ρ=0.37)との間に有意な相関を認めた。ロジスティック回帰分析の結果,通所施設利用を含めた閉じこもりの出現には,配偶者の有無(OR=0.01)とEQ-5D(効用値×1000点)(OR=0.99)がそれぞれ有意な変数として抽出され,通所施設利用日を除いた閉じこもりには,LSA(OR=0.90),握力(OR=0.75),SPPB(OR=0.71),BI(OR=0.96),歩く自信(OR=0.48),EQ-5D(OR=0.95)がそれぞれ有意な変数として抽出された。
【考察】通所施設利用の有無により関連する要因が異なることが示され,通所施設利用を含めた閉じこもりには,配偶者がいることと健康関連QOLが高いことが関連することが明らかとなった。また,通所施設利用を除いた場合には,握力,BI,SPPBといった身体機能が関わることが明らかとなり,自発的な外出行動を支援するためには,身体機能を高め,歩くための自信を高めることが重要であることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】閉じこもり予防として,身体機能を高めることが重要であることが示され,訪問リハビリテーションによる身体機能の維持向上に向けた取り組みが必要であると考えられた。
【方法】北海道札幌市にある訪問看護ステーション利用者32人(年齢76.5±9.1歳,女性19人)に対して,外出行動に関する質問紙調査および身体機能評価を実施した。質問紙は1週間の外出頻度,生活空間(Life Space Assessment:LSA),健康関連QOL(EQ-5D),身体活動セルフ・エフィカシー(歩く自信,階段を昇る自信,物を持つ自信),抑うつ傾向(Geriatric Depression Scale:GDS-5)やる気(Apathy Scale)を聴取した。安村らの定義に従い,週1回以上外出していない状態を「閉じこもり」と定義し,通所系サービスの利用日を含めた場合と,除いた場合の閉じこもりの有無を調べた。身体機能は,Short Physical Performance Battery(SPPB),握力,およびBarthel Index(BI)を測定した。また,訪問看護記録より年齢,身長,体重,通所施設利用頻度,同居の有無,配偶者の有無,訪問看護利用期間を調べた。分析は,それぞれの外出頻度と各変数との関連についてSpearmanの順位相関係数を求めた。また,閉じこもり状態に与える因子の検討として,通所利用を含めた場合と含めない場合の閉じこもりの有無を従属変数として,年齢,性別,BMIおよび各変数を説明変数としたロジスティック回帰分析を行った。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言の主旨に沿い,質問紙調査,身体機能評価を実施するにあたり,研究の主旨および目的を口頭と文章にて説明し,書面にて同意を得た。なお,本研究は札幌医科大学倫理委員会の承認を受けて実施した。
【結果】閉じこもり者は,通所施設利用の外出を含めて7人(21.9%)であり,通所施設利用日を除いた場合には17人(53.1%)であった。通所施設利用を含めた外出頻度は,LSA(ρ=0.39)と歩く自信(ρ=0.36)との間に有意な相関を認めた。また,通所施設を除いた外出頻度は,LSA(ρ=0.43),握力(ρ=0.44),SPPB(ρ=0.44),BI(ρ=0.45),EQ-5D(ρ=0.41),歩く自信(ρ=0.45)および階段を昇る自信(ρ=0.37)との間に有意な相関を認めた。ロジスティック回帰分析の結果,通所施設利用を含めた閉じこもりの出現には,配偶者の有無(OR=0.01)とEQ-5D(効用値×1000点)(OR=0.99)がそれぞれ有意な変数として抽出され,通所施設利用日を除いた閉じこもりには,LSA(OR=0.90),握力(OR=0.75),SPPB(OR=0.71),BI(OR=0.96),歩く自信(OR=0.48),EQ-5D(OR=0.95)がそれぞれ有意な変数として抽出された。
【考察】通所施設利用の有無により関連する要因が異なることが示され,通所施設利用を含めた閉じこもりには,配偶者がいることと健康関連QOLが高いことが関連することが明らかとなった。また,通所施設利用を除いた場合には,握力,BI,SPPBといった身体機能が関わることが明らかとなり,自発的な外出行動を支援するためには,身体機能を高め,歩くための自信を高めることが重要であることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】閉じこもり予防として,身体機能を高めることが重要であることが示され,訪問リハビリテーションによる身体機能の維持向上に向けた取り組みが必要であると考えられた。