第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 教育・管理理学療法 ポスター

管理運営系1

Sat. May 31, 2014 2:50 PM - 3:40 PM ポスター会場 (教育・管理)

座長:浅野信一(つくばセントラル病院総合リハビリテーションセンター)

教育・管理 ポスター

[1119] 北米型ERにおける理学療法士の活動について

野崎惇貴, 谷内耕平, 青木啓成, 大塚功 (社会医療法人財団慈泉会相澤病院リハセラピスト部門)

Keywords:救命救急センター, 職域拡大, アンケート

【はじめに,目的】
相澤病院の救命救急センター(以下ER)では一次から三次救急まで全ての患者を受け入れる北米型ER方式をとっている。平成25年4月より理学療法士(以下PT)2名を専任として配置し,主に運動器疾患の急性期のケアや管理指導,慢性疼痛の急性増悪などに対する理学療法を外来業務として開始した。これまで欧米ではERにおいて外来業務としてPTの活動内容や成果の報告はある。しかし,それらは医師の診察の前にPTが介入している点など本邦におけるPTと法的な位置づけの違いがあり,役割なども変わってくると考えられる。
一方,本邦での報告はなくERにおいてPTの役割や効果は明らかにされていない。今回ERにPTを配置することが他職種にどのような影響を与えるかアンケート調査を実施した。本研究の目的は,ERでのPTの役割や効果,必要性について明らかにすることである。
【方法】
調査対象として当院ERに勤務する医師(救急医10名,研修医21名),看護師(33名)とした。アンケート調査の質問項目として①ERにPTが配属する前後での業務量の変化。②ERにPTが配属する前後での業務内容の変化。③②の質問で変化があった回答者にPT配属前と比べ自分の業務に専念できるようになったかの調査。④PTオーダー時に重視する項目(医師のみ,複数回答可)。⑤理学療法が有効であった項目(複数回答可)。⑥ERにおけるPTの必要性,の6項目を設定し選択方式と一部記述で実施した。なお未回答箇所は除外した。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者には調査の趣旨を説明し,同意を得たうえで調査を実施した。また無記名でアンケート調査を実施し個人が特定されないよう十分配慮を行った。
【結果】
アンケート回収率は医師93.5%,看護師96.9%であった。
質問①では「とても軽減した」(以下:医師/看護師)31%/35%,「やや軽減した」58%/55%,「変化なし」11%/10%となり医師,看護師ともに9割が業務量は軽減したと回答し,増加したという回答者はなかった。質問②では「とても変化した」37%/24%,「やや変化した」33%/45%,「変化なし」30%/31%。質問③では「とても専念できるようになった」50%/52%,「やや専念できるようになった」50%/48%となり医師,看護師の7割程度がPTの配属により自分の業務に専念しやすくなったという回答であった。質問④では疼痛軽減が93.1%,動作能力改善,帰宅支援がともに82.8%という回答であった。質問⑤では疼痛軽減は79・1%/68.7%,動作能力改善は70.8%/71.8%,帰宅支援は66.6%/96.8%,患者満足度70.8%/50%という回答であった。質問⑥では「常にいたほうが良い」90%/77%,「必要なときだけいたほうが良い」10%/23%となり医師,看護師ともに全員がERにPTはいたほうが良いという回答であった。
【考察】
今回の結果より当院のERでPTが医師から求められる役割として疼痛軽減,動作能力改善,帰宅支援の3つが特に重要とされていることが判った。そして,理学療法によるそれらの効果を医師,看護師の7割が有効と感じていることが明らかになった。その結果からもPTとして役割が果たせており,ERにPTが必要という結果に繋がったと推察される。特に疼痛軽減に関しては約8割の医師が有効と感じており,これは疼痛に対して投薬以外にも理学療法という選択肢が増えERにおける疼痛治療の幅が広がったと考えられる。
一方,看護師の約97%が帰宅支援においてPTの介入が有効であると感じていた。PT配属以前は主に帰宅支援を看護師が実施していたが,医師の診察が終わり入院の必要性はなく帰宅方針となるものの疼痛や動作能力の低下など様々な理由により帰宅に難渋するケースも少なくなかった。そのようなケースにPTが生活支援を含めたアプローチを行うことで円滑に帰宅支援が行えるようになったと考えられる。また,ERにPTが配属されたことで他職種の業務量が軽減し約7割が自分の業務に専念できるようになっており,ER全体で提供される医療の質の向上にも寄与できた可能性が示唆された。
本研究の限界としてアンケート結果によるもので職員による主観的な部分が多く,客観的な指標を用いての評価を実施していないことが挙げられる。今後の課題として理学療法による疼痛緩和や動作機能改善などの即時的な効果を客観的な指標を用いて検証を行っていく必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
ERにおいてもチーム医療の一員としてPTにも役割があることが示唆された。ERでのPTの活動は新たな職域拡大の一助となるのではないかと考えられた。