第49回日本理学療法学術大会

講演情報

発表演題 ポスター » 教育・管理理学療法 ポスター

管理運営系1

2014年5月31日(土) 14:50 〜 15:40 ポスター会場 (教育・管理)

座長:浅野信一(つくばセントラル病院総合リハビリテーションセンター)

教育・管理 ポスター

[1121] 拡大理事役員会による福島県理学療法士会組織力強化の検討

本田知久1,2, 江井邦夫1,3 (1.一般社団法人福島県理学療法士会, 2.活性化委員会, 3.支部調整局)

キーワード:組織力強化, 会議, 都道府県士会

【はじめに,目的】
我々一般社団法人福島県理学療法士会(以下,福島県士会)は平成24年に一般社団法人格を取得し,新組織は組織力強化として,ミッション「みんなの笑顔をつくりだす」の策定,理事16名から7名体制へ変更,職務分担内規による役割分担の明確化等を行ってきた。これらにより現在の理事会はより活発になり決裁が進むというメリットがあった反面,以前理事を兼務していた各委員長,局長,支部長らと理事,監事間の情報共有が以前よりも不十分との懸念も生じた。そこで理事,監事に加え委員長,局長,支部役員ら(以下,役員)を集め,理事の考えの伝達や意見交換するために拡大理事役員会(以下,拡大会議)の開催となった。
本研究の目的は会議手法を用いた拡大会議の効果を明らかにし,我々の会議に必要なことを検討することとした。
【方法】
(会議の準備と方法)
ゼネラル・エレクトリック社のワークアウト手法を主に参考にして,グリッピィ(目標と成果物,役割と責任,プロセスと活動,個人間/チーム間の合意)に着目し,拡大会議用に整え実施した。会議の内容は新組織のあり方,新事務所準備,理事会決定事項や各組織の活動等についての報告と意見交換であった。今回のアイスブレイクは30秒で他者紹介を行い,会議中の質疑時間も一人30秒以内とルール設定した。進行表は進行を分刻みで設定した。進行役はファシリテーション(発言や参加を促し合意形成や相互理解を支援促進)を行った。会議目標は効果測定に用いられるカークパトリックの4段階評価法を応用し作成した。レベル1は満足度,レベル2は理解度,レベル3は行動変容度,レベル4は成果達成度であり,レベル1と2は会議内容について,3と4は県士会活動について目標を設定した。
(調査方法)
対象は拡大会議に参加した役員30名とし,役職分類として理事監事をA群,委員長と局長をB群,支部役員をC群とした。方法は紙面による意識調査で,拡大会議直後に回収した。調査票は我々が独自に作成し,設問は役職分類1問,目標達成度4問,自由記載2問の合計7問で構成されている。目標達成度は回答項目の定量化処理(そう思う4点,ややそう思う3点,あまり思わない2点,そう思わない1点に配点)し,得点を求めた。得られた得点により各目標間の比較と各群間の比較を行った。統計処理は統計ソフトR2.8.1を使用し,有意水準は危険率5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
プライバシーの保護と公表について紙面と口頭で説明した。無記名調査し,回答をもって同意を得たものとした。なお本研究は福島県士会理事会の承認を得ている。
【結果】
アンケート回収数は24/30名(80.0%)であった。A群7名,B群7名,C群10名であった。会議目標達成度に関して,満足度の全回答平均は3.9点,A群4.0点,B群3.9点,C群3.9点。理解度の全回答平均は3.5点,A群3.7点,B群3.4点,C群3.3点。行動変容度の全回答平均は3.6点,A群3.9点,B群3.4点,C群3.5点。成果達成度の全回答平均は3.6点,A群3.9点,B群3.6点,C群3.5点(標準偏差,中央値,四分位範囲は省略)。全回答による各目標間の比較はKruskal-Wallis検定が選択され,すべての項目で有意差はなかった。各目標の群間比較はANOVA分析にて要因と交互作用に有意差はなかった。自由記載には,拡大会議をさらに発展,回数の増加を望む記載や情報共有できた等の報奨13件。事前資料配布等の事前準備の要望が5件あった。
【考察】
一般的に会議は,決まった人ばかり話す,なにが決まったかわからない等で参加者の不満が多いといわれている。本研究結果では4つの目標達成度はすべて高得点であり,特に満足度は高く拡大会議は効果的だったと思われる。これは十分とは言えないがワークアウトの手法を参考に拡大会議の準備,ファシリテーションが円滑に行えたためと考えられる。各目標や役職分類による比較については目標達成度に統計学的な差がないという結果だった。しかし,理事監事と比較し他役員は理解度,行動変容度,成果達成度の意識がやや低い傾向が見られた。ひとつはルールの不徹底により当日資料が多くなってしまい,予備知識の差が理解度の差に繋がったと考える。さらに福島県士会の方針が検討中であることも行動や成果に影響していると考える。これらより今後の会議はただ開催するのではなく,会議手法を用い工夫して運営すること,日々の情報共有を見直すこと,早急に県士会ビジョンを策定することの3点が有意義な会議に特に必要であると示唆された。会議を効果的に運営することで福島県士会の組織力強化に繋げていきたい。
【理学療法学研究としての意義】
都道府県士会の会議に関した報告はあまり見られず,本研究は今後の都道府県士会の組織力強化の一助になりうると考えられる。