第49回日本理学療法学術大会

講演情報

発表演題 ポスター » 神経理学療法 ポスター

発達障害理学療法3

2014年5月31日(土) 14:50 〜 15:40 ポスター会場 (神経)

座長:日浦伸祐(社会医療法人大道会森之宮病院リハビリテーション部)

神経 ポスター

[1140] 小児外来理学療法利用者へ行った訪問への移行調査

五十嵐大貴1, 江川奈美1, 工藤友治1, 岡村綾子1, 小岩幹2, 森鉄矢3, 齋藤大地3 (1.社会医療法人北斗十勝リハビリテーションセンター医療技術部理学療法科, 2.社会医療法人北斗北斗病院医療技術部理学療法科, 3.株式会社はこぶね訪問看護ステーションはこぶね)

キーワード:小児, 訪問リハビリテーション, 移行調査

【目的】当院は北海道十勝圏域の中心である帯広市(人口17万人)にあり,外来リハビリテーション(以下リハ)の対象として地域の肢体不自由児・者を積極的に受け入れている。現在,小児外来理学療法利用児・者は約160名となり,重度高齢化した利用者も増加傾向にある。一方,訪問リハでも若干名の肢体不自由児・者を受け入れているが,潜在的な利用希望人数が把握できておらず,今後の方向性が不明確であった。
今回,小児外来理学療法利用者の訪問リハに対する興味や利用希望を調査し,さらに保護者・子供年齢と重症度による分類からも訪問リハに対する興味や利用希望を分析し報告する。
【方法】対象は,1回/月以上の頻度で定期的に小児外来理学療法を利用している肢体不自由児・者及びその保護者とした。
2012年9月~11月の期間にアンケート(自記式)を実施。得られた回答は無効回答を除き単純集計し,自由記載は文ごとの内容をK-J法にてカテゴリー化した。調査項目は,基本情報について,保護者年齢,子供年齢,重症度(GMFCS)など8項目。訪問リハについて,訪問リハに対する興味,興味ある/なしの理由(自由記載)。興味あると回答した方のみ,訪問リハの利用希望,希望なし理由(自由記載)とした。ただし,訪問リハの利用に関して,訪問時間は1時間,頻度は最大1回/週,外来リハの併用不可の3つの条件が適用されることとした。
分類は,対象を保護者年齢,子供年齢,重症度及び訪問リハの興味・利用希望とその理由がすべて有効回答であった者とした。主成分分析により第1主成分を保護者・子供年齢,第2主成分を重症度とし,非階層的クラスター分析により,①保護者子供年齢・重症度共に低い,②保護者子供年齢・重症度共に高い,③重症度のみ高い,④保護者子供年齢のみ高いの4グループに分類,訪問リハの興味・利用希望について分析した。分析にはSPSS(Ver.20)を使用した。
【説明と同意】アンケート調査は無記名とし,対象者には調査内容と情報の取り扱いについて書面で説明し,研究発表について同意を得た。
【結果】92名に配布し,45名から回答を得た(回収率49%)。
アンケート:基本情報について,保護者年齢は20歳代2名,30歳代14名,40歳代20名,50歳代5名,60歳以上3名。子供年齢は0~5歳11名,6~12歳13名,13~15歳6名,16~18歳3名,19~30歳8名,31歳以上3名。重症度はI7名,II8名,III3名,IV9名,V16名。訪問リハについて,興味ある28名(67%),なし14名(33%)。興味ある理由「保護者の問題」「通院困難」「日常生活での指導」,なし理由「通院可能」「外来リハがよい」が多かった。利用希望はある/なし共に14名(50%)。希望なし理由「外来リハ併用希望」「訪問頻度が足りない」「外来リハがよい」が多かった。
分類:構成比は,①5名(12%),②7名(17%),③19名(46%),④10名(24%)。訪問リハに興味あるは,①3名(60%),②6名(86%),③14名(76%),④5名(50%)。利用希望あるは,①2名(40%),②4名(57%),③5名(26%),④3名(30%)。興味ある理由は,②で「保護者の問題」「本人の問題」,③で「日常生活での指導」「通院困難」「保護者の問題」「本人の問題」が多かった。利用希望なし理由は,③で「外来リハ併用希望」「頻度が足りない」「外来リハでよい」が多かった。
【考察】アンケートから,「訪問リハに興味ある」は67%となり,多くの方が興味を示した。「利用希望ある」は条件付きながら回答者全体の31%となった。分類から,重度高齢化した利用者が属する②が興味・利用希望共に高い割合を示し,訪問リハを希望する傾向にあった。一方,全グループで個々の“通院困難感”から訪問リハを必要としていた。興味と利用希望のグループ間比較では,興味あるは②が86%,③が74%と高い割合を示したが,利用希望あるでは②が57%に対して,③は26%で最下位となった。その理由として,興味ある理由では②③共に保護者・本人の問題が挙がった一方,③は日常生活での指導が一番多かった。利用希望なし理由でも③は外来リハとの併用や頻度の不足を多く挙げており,利用条件の調整により訪問リハを有効に利用したいとする一方,そうでなければ外来リハでよいという考えであった。重症度のみ高い③の利用者とその保護者も加齢とともに②の状態に移行するため,長期的な関わりの中で訪問リハ資源の情報提供と,より良いタイミングでの訪問リハ移行を促す必要があると考える。
【理学療法学研究としての意義】前田は,小児医療の問題としてNICUや小児科病棟に長期入院後,自宅や地域に退院する児を指摘する一方,もともと自宅,地域で暮らす重症児の加齢に伴う重症化の問題も指摘し,小児在宅医療の整備の重要性を訴えている。小児の訪問リハ分野でも同様の問題を抱えているが,それに対する研究は少なく,今回の報告はその基礎的研究に成り得ると考える。