[1155] 胸腔鏡下肺切除術において術後活動量と術後運動耐容能の回復との関係について
キーワード:胸腔鏡下肺切除術, 活動量, 運動耐容能
【はじめに,目的】
当院では2012年8月~肺癌の胸腔鏡下肺切除術(以下,VATS)における術後早期の活動量評価および指導と運動耐容能の回復を目的に携帯型加速度測定器(以下,活動量計)を導入した。今回,術後の活動量の推移や活動量と運動耐容能の回復との関係について検討したため報告する。
【方法】
対象は2012年8月~2013年11月までに当院にてVATSを施行し,術前術後に6分間歩行テスト(以下,6MWT)の測定が可能であり,活動量計にて術後活動量の評価が可能であった13例(男性11例,女性2例)を対象とした。理学療法プログラムは,術前は呼吸・動作指導を行い,術後は呼吸練習・筋力増強運動・歩行練習・自転車エルゴメーター・毎日の活動量に対する評価と指導を行った。運動耐容能は6MWTとし,術後の回復率(%:術後7日目測定値/術前値)を評価した。術後6MWT回復率と術後の活動量(歩数)との関係については,Pearsonの積率相関計数を用いた。術後6MWT回復率90%以上群の8例(全例男性)をA群とし,90%以下群の5例(男性3例,女性2例)をB群に分け,年齢・術前%肺活量・術前1秒率・術前膝伸展筋力(ハンドヘルドダイナモメーターで測定し筋力体重比を算出:kgf/kg)・術前6MWT・術後の活動量についてMann-Whitney検定にて比較を行った。活動量の評価は,3軸加速度センサの活動量計Active style Pro(OMRON HJA-350IT)を使用し,術後4~7日目までの活動量(歩数)の平均値を算出し評価した。
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言にもとづいて,各対象者には本研究の施行ならびに目的を説明し,研究への参加に対する同意を得た。
【結果】
術後6MWT回復率と術後の活動量(歩数)について,有意な正の相関を認めた(r=0.628)。A群・B群の比較にて,術前%肺活量・術前1秒率・術前6MWTについて有意差はなかった。年齢ではA群64.1±6.4歳と比較しB群74.6±6.8歳と有意差を認めた(p=0.02)。術前膝伸展筋力ではA群0.61±0.15kgf/kgと比較しB群0.43±0.08kgf/kgと有意差を認めた(p=0.04)。術後活動量ではA群6706.6±1647.4歩と比較しB群3449.5±1184.8歩と有意差を認めた(p=0.008)。
【考察】
術後6MWT回復率と術後の活動量に有意な正の相関を認めた。また,先行研究ではVATS術後1週間での6MWT回復率は90%以下との報告が多いことから,当院において90%以上と以下で群間比較検討したところA群において有意に活動量が多い結果となった。上記2つの結果から,術後早期の活動量向上が早期の運動耐容能の回復に寄与することが示唆された。A・B群での比較でB群において有意に高齢が多く,術前膝伸展筋力においても有意に弱かったこと,また有意差はなかったが,術前6MWTにおいてA群531.7±78.6mと比較しB群455.8±55.1mとB群において運動機能面や運動耐容能の低下が術前から生じていることが考えられる。その術前の因子が術後の活動量減少や運動耐容能の回復の遅延に影響している可能性が考えられた。今後の課題として症例数を増やしていき,その解析を進めていくとともに運動耐容能の早期回復に寄与する因子(呼吸機能や筋力など)について調べていく必要があると考える。また,肺癌術後だけでなく,その他の周術期における活動量と運動耐容能の回復についても検討していきたいと考える。
【理学療法学研究としての意義】
肺癌術後において早期社会復帰や術後補助化学療法を進めるうえで術後早期の運動耐容能の回復は重要である。今回,術後早期の活動量と運動耐容能の回復との関係が示唆されたことにより,従来の理学療法に加え活動量計使用による活動量への評価・指導の重要性についても示せたのではないかと考える。
当院では2012年8月~肺癌の胸腔鏡下肺切除術(以下,VATS)における術後早期の活動量評価および指導と運動耐容能の回復を目的に携帯型加速度測定器(以下,活動量計)を導入した。今回,術後の活動量の推移や活動量と運動耐容能の回復との関係について検討したため報告する。
【方法】
対象は2012年8月~2013年11月までに当院にてVATSを施行し,術前術後に6分間歩行テスト(以下,6MWT)の測定が可能であり,活動量計にて術後活動量の評価が可能であった13例(男性11例,女性2例)を対象とした。理学療法プログラムは,術前は呼吸・動作指導を行い,術後は呼吸練習・筋力増強運動・歩行練習・自転車エルゴメーター・毎日の活動量に対する評価と指導を行った。運動耐容能は6MWTとし,術後の回復率(%:術後7日目測定値/術前値)を評価した。術後6MWT回復率と術後の活動量(歩数)との関係については,Pearsonの積率相関計数を用いた。術後6MWT回復率90%以上群の8例(全例男性)をA群とし,90%以下群の5例(男性3例,女性2例)をB群に分け,年齢・術前%肺活量・術前1秒率・術前膝伸展筋力(ハンドヘルドダイナモメーターで測定し筋力体重比を算出:kgf/kg)・術前6MWT・術後の活動量についてMann-Whitney検定にて比較を行った。活動量の評価は,3軸加速度センサの活動量計Active style Pro(OMRON HJA-350IT)を使用し,術後4~7日目までの活動量(歩数)の平均値を算出し評価した。
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言にもとづいて,各対象者には本研究の施行ならびに目的を説明し,研究への参加に対する同意を得た。
【結果】
術後6MWT回復率と術後の活動量(歩数)について,有意な正の相関を認めた(r=0.628)。A群・B群の比較にて,術前%肺活量・術前1秒率・術前6MWTについて有意差はなかった。年齢ではA群64.1±6.4歳と比較しB群74.6±6.8歳と有意差を認めた(p=0.02)。術前膝伸展筋力ではA群0.61±0.15kgf/kgと比較しB群0.43±0.08kgf/kgと有意差を認めた(p=0.04)。術後活動量ではA群6706.6±1647.4歩と比較しB群3449.5±1184.8歩と有意差を認めた(p=0.008)。
【考察】
術後6MWT回復率と術後の活動量に有意な正の相関を認めた。また,先行研究ではVATS術後1週間での6MWT回復率は90%以下との報告が多いことから,当院において90%以上と以下で群間比較検討したところA群において有意に活動量が多い結果となった。上記2つの結果から,術後早期の活動量向上が早期の運動耐容能の回復に寄与することが示唆された。A・B群での比較でB群において有意に高齢が多く,術前膝伸展筋力においても有意に弱かったこと,また有意差はなかったが,術前6MWTにおいてA群531.7±78.6mと比較しB群455.8±55.1mとB群において運動機能面や運動耐容能の低下が術前から生じていることが考えられる。その術前の因子が術後の活動量減少や運動耐容能の回復の遅延に影響している可能性が考えられた。今後の課題として症例数を増やしていき,その解析を進めていくとともに運動耐容能の早期回復に寄与する因子(呼吸機能や筋力など)について調べていく必要があると考える。また,肺癌術後だけでなく,その他の周術期における活動量と運動耐容能の回復についても検討していきたいと考える。
【理学療法学研究としての意義】
肺癌術後において早期社会復帰や術後補助化学療法を進めるうえで術後早期の運動耐容能の回復は重要である。今回,術後早期の活動量と運動耐容能の回復との関係が示唆されたことにより,従来の理学療法に加え活動量計使用による活動量への評価・指導の重要性についても示せたのではないかと考える。