[1159] 足底感覚入力型インソールの開発研究
キーワード:足底感覚, インソール, 三次元動作解析
【はじめに,目的】足部は体重を支持し,力を伝達する効果器としての役割とともに,接地面の情報をフィードバックする感覚器としての役割を担う。一方,現在流通するインソールや靴は,足部の効果器としての役割をサポートする目的で作製されているものが多く,感覚器としての役割に働きかける履物は少ない。そこで,我々の研究グループでは足底感覚を用い動作を制御する手法の検討を行い,現在,履物を用いた足底感覚入力方法の有効性を検証している。以下に研究開発のコンセプトと経緯を示す。まず,靴の中に小石が入った場面を想像すると,もし不快感や痛みがなければ異物を感知しながら,動作を続けることが可能である。この際,足底感覚からは小石の形状や質感のみでなく,「異物の接触部位」や「動作中に接触が強くなるタイミング」などの情報がフィードバックされる。我々はこれらの感覚情報を動作中の「重心移動方向」や「接地・蹴り出し位置」に置換することで動作指導に用いる手法を提案し,足底感覚入力を行う突起を配したインソール(以下,知覚インソール)を試作した。また,先行研究にて試作品の着用により重心移動方向の制御が可能になることを報告した。本研究では知覚インソールの次なる展開として,初期接地時の踵接地部位を教示した際の歩容変化について調査することを目的とした。
【方法】健常成人16名(女性10名,男性6名)を対象とした。実験に先立ち,踵後外側部に接地位置を示す突起を設置した知覚インソールを作製した。実験条件はコントロール条件および知覚インソール条件とし,コントロール条件,突起条件の順で歩行を行わせた。なお,突起条件では踵後外側部の突起を「踏みながら歩く」ように指示した。計測にはVicon Motion System社製Vicon-MXおよびKistler社製床反力計からなる三次元動作解析システムを使用し,サンプリング周波数100Hzにて遊脚中における第2中足骨頭の高さ(以下,つま先高)および初期接地時における足関節背屈角度を抽出した。なお,遊脚中のつま先高は二峰性を示すことから,遊脚初期における第1ピーク値,遊脚中期から下腿下垂位に見られる下限値,遊脚終期における第2ピーク値を抽出した。統計解析には対応のあるt検定を用い条件間の比較を行った。統計学的有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】実験前に書面と口頭による実験概要の説明を行い,同意と署名を得た後に実験を実施した。なお,本研究は全てヘルシンキ宣言に基づいて実施した。
【結果】初期接地期における足関節背屈角度はコントロール条件0.3±3.5度,インソール条件9.3±6.1度となり,インソール条件にて有意な増加を認めた(p<0.001)。遊脚中におけるつま先高の第1ピーク値はコントロール条件110.3±10.5mm,インソール条件114.8±12.4mmとなり,インソール条件にて有意な増加を認めた(p=0.016)。つま先高の下限値はコントロール条件85.7±7.7mm,161.9±23.2mmとなり,インソール条件にて有意な増加を認めた(p<0.001)。つま先高の第2ピーク値はコントロール条件161.9±23.2mm,インソール条件196.0±25.3mmとなり,インソール条件にて有意な増加を認めた(p<0.001)。
【考察】まず,インソール着用条件における足関節背屈角度の増加が確認された。理由として,インソール上の突起を知覚しながら歩行するように指示したことで,着用者自身が踵後外側部の接地に必要な足関節背屈角度を判断しながら歩行したものと考える。また,遊脚期におけるつま先高の上昇が確認された。理由として,先述した初期接地時の足関節背屈角度を増加させるためには,先行する遊脚期においても足関節を背屈させておく必要がある。加えて,インソール上の突起を的確に踏みつけるために下肢の振り出し方向や高さを予測的に制御したことで,つま先高の増加に至ったものと考える。なお,本研究結果はトゥクリアランスの低下や足関節背屈角度の減少に起因する高齢者の躓き転倒を予防する手段として応用可能と考える。
【理学療法学研究としての意義】知覚インソールが立脚期のみでなく遊脚期にも効果を発揮することを確認した。足底感覚を用いて着用者の意識に働きかける本手法は今後のインソールや履物の開発に新たな展開をもたらす可能性がある。また,知覚インソールの作製は突起を靴底に貼付するのみで汎用性が高い。そのため,臨床場面における動作指導や運動学習の諸相にも利用可能と考える。そのため今後,知覚インソールが動作指導や運動学習に与える影響について検証を進めていきたい。なお,本研究は平成25年度科学研究費助成(挑戦的萌芽研究:課題番号25560290)を受け実施した。
【方法】健常成人16名(女性10名,男性6名)を対象とした。実験に先立ち,踵後外側部に接地位置を示す突起を設置した知覚インソールを作製した。実験条件はコントロール条件および知覚インソール条件とし,コントロール条件,突起条件の順で歩行を行わせた。なお,突起条件では踵後外側部の突起を「踏みながら歩く」ように指示した。計測にはVicon Motion System社製Vicon-MXおよびKistler社製床反力計からなる三次元動作解析システムを使用し,サンプリング周波数100Hzにて遊脚中における第2中足骨頭の高さ(以下,つま先高)および初期接地時における足関節背屈角度を抽出した。なお,遊脚中のつま先高は二峰性を示すことから,遊脚初期における第1ピーク値,遊脚中期から下腿下垂位に見られる下限値,遊脚終期における第2ピーク値を抽出した。統計解析には対応のあるt検定を用い条件間の比較を行った。統計学的有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】実験前に書面と口頭による実験概要の説明を行い,同意と署名を得た後に実験を実施した。なお,本研究は全てヘルシンキ宣言に基づいて実施した。
【結果】初期接地期における足関節背屈角度はコントロール条件0.3±3.5度,インソール条件9.3±6.1度となり,インソール条件にて有意な増加を認めた(p<0.001)。遊脚中におけるつま先高の第1ピーク値はコントロール条件110.3±10.5mm,インソール条件114.8±12.4mmとなり,インソール条件にて有意な増加を認めた(p=0.016)。つま先高の下限値はコントロール条件85.7±7.7mm,161.9±23.2mmとなり,インソール条件にて有意な増加を認めた(p<0.001)。つま先高の第2ピーク値はコントロール条件161.9±23.2mm,インソール条件196.0±25.3mmとなり,インソール条件にて有意な増加を認めた(p<0.001)。
【考察】まず,インソール着用条件における足関節背屈角度の増加が確認された。理由として,インソール上の突起を知覚しながら歩行するように指示したことで,着用者自身が踵後外側部の接地に必要な足関節背屈角度を判断しながら歩行したものと考える。また,遊脚期におけるつま先高の上昇が確認された。理由として,先述した初期接地時の足関節背屈角度を増加させるためには,先行する遊脚期においても足関節を背屈させておく必要がある。加えて,インソール上の突起を的確に踏みつけるために下肢の振り出し方向や高さを予測的に制御したことで,つま先高の増加に至ったものと考える。なお,本研究結果はトゥクリアランスの低下や足関節背屈角度の減少に起因する高齢者の躓き転倒を予防する手段として応用可能と考える。
【理学療法学研究としての意義】知覚インソールが立脚期のみでなく遊脚期にも効果を発揮することを確認した。足底感覚を用いて着用者の意識に働きかける本手法は今後のインソールや履物の開発に新たな展開をもたらす可能性がある。また,知覚インソールの作製は突起を靴底に貼付するのみで汎用性が高い。そのため,臨床場面における動作指導や運動学習の諸相にも利用可能と考える。そのため今後,知覚インソールが動作指導や運動学習に与える影響について検証を進めていきたい。なお,本研究は平成25年度科学研究費助成(挑戦的萌芽研究:課題番号25560290)を受け実施した。