第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 基礎理学療法 ポスター

運動生理学2

Sat. May 31, 2014 3:45 PM - 4:35 PM ポスター会場 (基礎)

座長:高橋真(広島大学大学院医歯薬保健学研究院統合健康科学部門)

基礎 ポスター

[1186] 運動負荷方法の違いが持久力と酸化ストレス防御系におよぼす影響

菊本東陽, 丸岡弘, 星文彦 (埼玉県立大学保健医療福祉学部)

Keywords:運動負荷, 持久運動, 酸化ストレス

【はじめに,目的】
身体活動量の増加や定期的な持久的運動の実施は,持久力や抗酸化能の向上など,健康を良好に維持する上で有益に作用することが知られている。なかでも,抗酸化能に対しては,活性酸素の発生に対抗するために抗酸化能を増強させ,運動をしていないときでも活性酸素を除去し,酸化を防止する作用のあることが明らかにされている。反対に,過度の運動や精神,環境,免疫ストレスなどの生理的イベントによって,酸化ストレス度は増加することも明らかにされている。しかし,これらのヒトや動物を対象にした多くの報告における運動負荷方法は,機械による強制運動であり,運動自体がストレスとなる可能性が否定できない。本研究の目的は,持久的運動における運動負荷方法(強制運動と自発運動)の違いが持久力と酸化ストレス防御系におよぼす影響を調査し,酸化ストレスを抑制するための適切な運動負荷方法について検討することとした。
【方法】
対象は,ICR系雄性マウス(5週齢)18匹とし,無作為に強制運動群(FM群:n=6),自発運動群(LA群:n=6),対象群(CON群:n=6)の3群に区分した。運動負荷はFM群,LA群に対してのみ実施した。FM群に対しては,動物用トレッドミル(TM)を使用し,TMの運動強度を速度20m/min,傾斜10度に設定し,1日1回30分間とした。LA群に対しては,回転式運動量測定装置を使用し,回転式運動器と接続されているゲージ間の移動は自由となるように設定し,1回24時間とした。両群ともに週3回の頻度で連続4週間実施した。なお,本研究の開始前に1週間の馴化飼育期間を設けた。測定は全群に対し,4週間の運動負荷期間前後にTM走行時間,酸化ストレス防御系について実施した。TM走行時間の測定は,TMの運動強度を速度25m/min,傾斜20度とし,運動の終了基準をTM走行面後方の電気刺激装置による刺激間隔が5秒以内となった時点とした。酸化ストレス防御系の測定は,活性酸素・フリーラジカル分析装置(H&D社製FRAS4)を使用し,酸化ストレス度(d-ROM)と抗酸化能(BAP)をTM走行時間測定直後に測定し,潜在的抗酸化能(BAP/d-ROM比)を算出した。なお,酸化ストレス防御系の測定には,尾静脈を一部切開し採血を行い,遠心分離後の血漿を用いた。得られた数値は,平均値±標準偏差で表した。有意差の検定は対応のあるt検定および一元配置分散分析を実施し,有意水準5%で処理した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は本大学動物実験倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】
(1)持久力の変化
TM走行時間(秒)について,運動負荷期間開始前はFM群:2719.1±1012.8,LA群:2071.0±889.4,CON群:2675.8±1128.7,運動負荷期間終了後はFM群:2770.4±1076.4,LA群:3636.8±666.9,CON群:3114.7±1524.7であり,LA群のみ運動負荷期間前後に有意なTM走行時間の延長を認めた(p<0.05)。しかし,平均変化量の群間による比較では,有意差を認めなかった。
(2)酸化ストレス防御系の変化
d-ROM(U.CARR)について,運動負荷期間開始前はFM群:132.6±19.6,LA群:133.0±23.2,CON群:126.8±13.2,運動負荷期間終了後はFM群:139.8±32.8,LA群:174.7±24.5,CON群:139.8±32.8であり,FM群,LA群の運動負荷期間前後に有意な上昇を認めた(p<0.05)。BAP(μM)について,FM群:3136.6±307.8,LA群:3044.8±186.0,CON群:3022.5±463.6,運動負荷期間終了後はFM群:2860.4±455.4,LA群:2655.3±205.4,CON群:2956.5±647.6であり,FM群,LA群の運動負荷期間前後の比較では有意な低下を認めた(p<0.01)。BAP/d-ROM比について,FM群:24.2±5.3,LA群:23.4±3.7,CON群:23.8±1.9,運動負荷期間終了後はFM群:16.1±4.2,LA群:15.5±3.1,CON群:22.0±5.9であり,FM群,LA群の運動負荷期間前後の比較では有意な低下を認めた(p<0.01)。しかし,いずれの測定項目においても平均変化量の各群間の比較では有意差を認めなかった。
【考察】
持久力において,LA群で認めたTM走行時間の延長は回転運動器の回転数の増加と関連していた。酸化ストレス防御系において,運動負荷群にd-ROMの有意な上昇を認めたのは,測定前の運動負荷が酸化ストレス度の過度な上昇につながり,介入効果で相殺できなかったことが示唆された。また,d-ROM,BAPの平均変化量に群間差を認めなかったのは,体内でビタミンCなどの抗酸化物質を自ら産生する能力を有する標準的なマウスを選択したことも一因であると推察した。
【理学療法学研究としての意義】
理学療法による初期介入は,適度の運動負荷量であっても強制運動になりかねない。本研究で示した,自発運動で持久力の改善を認めたことから,介入時期に応じた効果的な運動負荷方法の一指標になるものと考える。