[1188] 肝機能障害モデルラットに対する運動療法施行後の骨格筋機能的変化
―トレッドミルを用いて―
キーワード:肝機能障害モデル, 運動療法, 骨格筋機能の変化
【はじめに,目的】
肝臓は代謝の中心臓器であり,肝機能低下によってさまざまな代謝異常が出現する。肝臓は糖代謝・蛋白質代謝・脂質代謝の中間機能をもち,生命維持に必要不可欠な臓器である。以前は,肝機能障害への運動は肝機能障害を悪化させると考えられており,安静の必要性を述べられていた。しかし,近年では,安静による身体機能の低下を防ぐために,適度な運動が必要であるといわている。運動の必要性が述べられている中で肝機能障害が骨格筋機能にどのような影響を与えるかは明らかではない。本研究は,肝機能障害モデルラットを作成し,肝機能障害が骨格筋機能にどのような影響を与えるのかを目的とした。
【方法】
9週齢のWistar系雄性ラット12匹を対象とし,肝機能障害モデルを作成した。作成には四塩化炭素(0.25ml/500g)を混合したオリーブオイルを1日1回,週2~3日の頻度で30日間投与し,血液データにおいてAST(IU/L),ALT(IU/L),r-GT(IU/L),T-BIL(mg/dL)の項目に関して異常値をきたし肝機能障害が生じていることを確認した。モデル作成後,ランダムに非運動群(LD群n=6)と運動群(RUN群n=6)の2群に区分した。RUN群にはトレッドミル走行(18m/min,30min,勾配±0%)を週3回の頻度で30日間実施した。すべてのラットにおいて餌や給水は自由に摂取させた。実験期間終了後,麻酔下にてヒラメ筋(SOL)と長趾伸筋(EDL)を摘出し,In vitroにおいて電気刺激を行い,筋疲労指数(FI)を測定した。筋長ならびに筋湿重量を計測後,横断切片を作成し,コハク酸脱水素酵素染色およびATP-ase染色において単位断面積当たりの筋線維タイプ別筋組成比,筋線維タイプ別筋横断面積を計測した。得られた結果は,2群間における有意性の検定としてF検定後にT検定を実施し,危険率5%未満を有意差とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本実験は,畿央大学動物実験倫理委員会の承認を得て行った。
【結果】
FIではSOLの開始1min後においてRUN群はLD群と比べ有意な差を認めず,開始2min後にRUN群はLD群と比べ有意に低値を認めた。EDLの開始1min,2min後ともにRUN群はLD群と比べ有意差を認めなかった。筋線維タイプ別筋組成比では,SOLのRUN群はLD群と比べSO線維が有意に高値を認め,FOG線維が有意に低値を認めた。EDLのRUN群はLD群と比べSO線維,FOG線維が有意に高値を認め,FG線維が有意に低値を認めた。筋線維タイプ別筋横断面積では,SOLのRUN群はLD群と比べSO線維が有意に高値を認めた。EDLのRUN群はLD群と比べSO線維,FG線維が有意に高値を認めた。
【考察】
本実験は肝機能障害モデル作成後,トレッドミルを用いた運動療法を実施し,運動療法が骨格筋機能にどのような影響を与えるかを検討した。RUN群では筋疲労指数から持久性が低下したと考えられる。筋線維タイプ別筋組成比からSO線維,FOG線維が増加傾向となり,遅筋化が起こったことが考えられる。筋線維タイプ別横断面積からSO線維,FOG線維,FG線維が増加傾向となり,筋の肥大化が起こったことが考えられる。トレッドミルを用いた運動療法において,骨格筋機能は筋肥大し遅筋化が起こり,持久性は向上することが知られている。しかし,本実験では,筋肥大と遅筋化は起こったが持久性は低下した。これは,肝機能障害に対して18m/min,30minの運動は過度であったことが考えられる。血液データのAST(IU/L),ALT(IU/L),r-GT(IU/L),T-BIL(mg/dL)が異常値を示していることから,糖代謝と蛋白質代謝の低下が出現し,乳酸の分解力低下とグルコース供給量低下が生じた。このことにより運動へのエネルギー供給量が低下し,筋疲労が起こりやすい状態となり持久性の低下に繋がったと考えられる。本実験では,肝機能障害モデルにおいて運動負荷量が過負荷によって持久性の低下が起こったと考えられる。今後,運動の負荷量の変化や継続期間を長くすることによって骨格筋機能の改善から代謝の改善を立証することが出来ればと考える。
【理学療法学研究としての意義】
肝機能障害への運動療法において,骨格筋機能の変化は認められた。今後,運動療法の負荷量を調節することにより,肝機能障害への運動療法の負荷量を明らかにできる可能性がある。
肝臓は代謝の中心臓器であり,肝機能低下によってさまざまな代謝異常が出現する。肝臓は糖代謝・蛋白質代謝・脂質代謝の中間機能をもち,生命維持に必要不可欠な臓器である。以前は,肝機能障害への運動は肝機能障害を悪化させると考えられており,安静の必要性を述べられていた。しかし,近年では,安静による身体機能の低下を防ぐために,適度な運動が必要であるといわている。運動の必要性が述べられている中で肝機能障害が骨格筋機能にどのような影響を与えるかは明らかではない。本研究は,肝機能障害モデルラットを作成し,肝機能障害が骨格筋機能にどのような影響を与えるのかを目的とした。
【方法】
9週齢のWistar系雄性ラット12匹を対象とし,肝機能障害モデルを作成した。作成には四塩化炭素(0.25ml/500g)を混合したオリーブオイルを1日1回,週2~3日の頻度で30日間投与し,血液データにおいてAST(IU/L),ALT(IU/L),r-GT(IU/L),T-BIL(mg/dL)の項目に関して異常値をきたし肝機能障害が生じていることを確認した。モデル作成後,ランダムに非運動群(LD群n=6)と運動群(RUN群n=6)の2群に区分した。RUN群にはトレッドミル走行(18m/min,30min,勾配±0%)を週3回の頻度で30日間実施した。すべてのラットにおいて餌や給水は自由に摂取させた。実験期間終了後,麻酔下にてヒラメ筋(SOL)と長趾伸筋(EDL)を摘出し,In vitroにおいて電気刺激を行い,筋疲労指数(FI)を測定した。筋長ならびに筋湿重量を計測後,横断切片を作成し,コハク酸脱水素酵素染色およびATP-ase染色において単位断面積当たりの筋線維タイプ別筋組成比,筋線維タイプ別筋横断面積を計測した。得られた結果は,2群間における有意性の検定としてF検定後にT検定を実施し,危険率5%未満を有意差とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本実験は,畿央大学動物実験倫理委員会の承認を得て行った。
【結果】
FIではSOLの開始1min後においてRUN群はLD群と比べ有意な差を認めず,開始2min後にRUN群はLD群と比べ有意に低値を認めた。EDLの開始1min,2min後ともにRUN群はLD群と比べ有意差を認めなかった。筋線維タイプ別筋組成比では,SOLのRUN群はLD群と比べSO線維が有意に高値を認め,FOG線維が有意に低値を認めた。EDLのRUN群はLD群と比べSO線維,FOG線維が有意に高値を認め,FG線維が有意に低値を認めた。筋線維タイプ別筋横断面積では,SOLのRUN群はLD群と比べSO線維が有意に高値を認めた。EDLのRUN群はLD群と比べSO線維,FG線維が有意に高値を認めた。
【考察】
本実験は肝機能障害モデル作成後,トレッドミルを用いた運動療法を実施し,運動療法が骨格筋機能にどのような影響を与えるかを検討した。RUN群では筋疲労指数から持久性が低下したと考えられる。筋線維タイプ別筋組成比からSO線維,FOG線維が増加傾向となり,遅筋化が起こったことが考えられる。筋線維タイプ別横断面積からSO線維,FOG線維,FG線維が増加傾向となり,筋の肥大化が起こったことが考えられる。トレッドミルを用いた運動療法において,骨格筋機能は筋肥大し遅筋化が起こり,持久性は向上することが知られている。しかし,本実験では,筋肥大と遅筋化は起こったが持久性は低下した。これは,肝機能障害に対して18m/min,30minの運動は過度であったことが考えられる。血液データのAST(IU/L),ALT(IU/L),r-GT(IU/L),T-BIL(mg/dL)が異常値を示していることから,糖代謝と蛋白質代謝の低下が出現し,乳酸の分解力低下とグルコース供給量低下が生じた。このことにより運動へのエネルギー供給量が低下し,筋疲労が起こりやすい状態となり持久性の低下に繋がったと考えられる。本実験では,肝機能障害モデルにおいて運動負荷量が過負荷によって持久性の低下が起こったと考えられる。今後,運動の負荷量の変化や継続期間を長くすることによって骨格筋機能の改善から代謝の改善を立証することが出来ればと考える。
【理学療法学研究としての意義】
肝機能障害への運動療法において,骨格筋機能の変化は認められた。今後,運動療法の負荷量を調節することにより,肝機能障害への運動療法の負荷量を明らかにできる可能性がある。