第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 基礎理学療法 ポスター

運動生理学2

Sat. May 31, 2014 3:45 PM - 4:35 PM ポスター会場 (基礎)

座長:高橋真(広島大学大学院医歯薬保健学研究院統合健康科学部門)

基礎 ポスター

[1189] 全身振動刺激(whole body vibration)実施時の筋循環動態および筋活動の特徴

藤田俊文 (弘前大学大学院保健学研究科)

Keywords:全身振動刺激(whole body vibration), 筋活動, 筋循環動態

【目的】
近年,全身振動刺激(Whole Body Vibration;WBV)を用いた運動介入が,短時間の介入で効果的であるとの報告があり注目されている。特に,筋力・筋パワー向上およびパフォーマンスの向上を認めるとの報告があり,筋機能向上に大きく貢献するものと考えられる。その中でも筋電図学的な研究報告も見られ,筋機能の詳細(筋活動量や周波数分析)についても分析されてきている。しかしながら,筋電図学的な分析の際には,動作に伴うアーチファクトの影響もあり結果の解釈には十分な注意が必要である。加えて,筋活動と筋循環動態は大きく関連していると思われるが,WBV実施時の特徴については十分に検討されていない。そこで本研究では,筋電図学的分析および筋循環動態測定を実施し,WBV実施時の筋機能についての特徴を調査することである。
【方法】
研究対象は健常成人8名としたが,その内,データ欠損があった3名を除いた5名とした。運動負荷には,全身振動刺激装置G-Flexを用いて実施した。実施姿勢は,足部を20cm開脚し,膝関節軽度屈曲位(約40度)を維持したスクワット肢位とした。運動負荷プロトコルは,開始前座位安静5分・WBV実施時間3分(30Hz)・終了後座位安静5分とした。測定は,筋循環動態評価として簡易型近赤外線組織酸素モニタ(PocketNIRS Duo,株式会社ダイナセンス社製)を使用し,右下肢の大腿部内側(内側広筋),下腿後面(腓腹筋内側)にプローブを貼付した。安静時からWBV実施時および終了後安静5分まで常時測定した。また筋機能評価は,表面筋電計(バイオモニターME6000,MEGA社製)を使用し,電極を酸素モニタのプローブに重ならないように同様の筋腹に貼付して測定した。筋電図測定はWBV実施時の3分間測定し,サンプリング周波数は1000Hzとした。筋循環動態の特徴については,安静時からのトータルヘモグロビン,酸化ヘモグロビン,脱酸化ヘモグロビンの経時的変化の特徴について調査した。また,得られた筋電図測定より得られた値については,生データの特徴を把握し,その上でアーチファクトと思われる周波数を確認しノッチフィルタおよび5-500Hzのバンドパスフィルタを実施した。その上で30秒毎に積分値の算出,高速フーリエ変換を実施し,筋活動量と周波数特性について調査した。酸素モニタの解析にはPocketNIRS Duo付属のソフト,筋電図の解析にはMegaWin(MEGA社製)を使用した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は所属施設の倫理委員会の承認後に実施し,対象者へ研究の趣旨と内容について十分説明し同意を得た上で行った。
【結果】
WBV実施中の酸素モニタの結果では,内側広筋では運動直後から60秒程度まで安静時よりもトータルヘモグロビンが若干低下し,その後運動終了3分まで上昇を続ける傾向がみられた。また腓腹筋内側では実施直後から終了後までトータルヘモグロビンが安静時よりも低い状態となる傾向がみられた。介入終了後の安静座位において筋循環は安静時よりも高い状態で5分間経過していた。また,筋電図学的分析では,開始直後から30秒程度までが筋活動も高く,周波数解析の結果,内側広筋・腓腹筋とも高周波成分が多く含まれていた。
【考察】
本研究では,WBV実施時の筋循環動態と筋活動の特徴について調査した。WBVを用いた運動は高速振動により外的刺激を与える装置であり,緊張性振動反射により筋活動が促通されているといわれている。筋電図の特徴からも,開始30秒程度の運動は高頻度に筋収縮が引き起こされ,これは速筋線維が優位に活動していることが示唆された。また,筋循環動態の特徴として,運動開始30秒程度で循環動態の低下が見られやすく,有酸素性の運動よりも無酸素性の運動が優位であることが示唆された。また内側広筋の筋組成の特性上,遅筋線維が多く含まれていうということを考慮すると,開始後ある一定の時間を過ぎた時点から有酸素性のエネルギー供給が増加すること,逆に腓腹筋に関しては速筋線維が多く含まれているという点から運動中は無酸素的なエネルギー供給割合が大きいことが示唆された。ただし,個人レベルで特異的な反応をしている印象もあり,今後さらに対象者数を増やして対象者の特性(身体組成や運動歴など)などからの検証を行うことでより詳細な結果が得られる可能性がある。
【理学療法学研究としての意義】
WBVを用いた運動の特性を十分踏まえた上で,臨床上でWBVを使用する根拠としてのひとつの指標を示すことができたと考えられる。