[1190] 蛋白制限食を摂取している糖尿病顕性腎症3B~4期患者は運動療法により除脂肪量減少を抑制しているか
Keywords:糖尿病腎症, 除脂肪量, 蛋白制限食
【はじめに,目的】
糖尿病患者は,肥満を改善することでインスリン抵抗性の改善,糖尿病腎症の進展抑制が期待できる。肥満治療は,筋肉量を反映する除脂肪量の減少抑制が肝要であり,運動療法が推奨される。しかし,筋蛋白異化亢進,蛋白制限(PC),尿蛋白量増加が背景にある糖尿病顕性腎症(DN3B~4)患者に対する効果は明らかにされていない。今回,糖尿病教育入院中にPC食を摂取しているDN3B~4患者は,運動療法により除脂肪量減少を抑制しているかを後方的調査にて検討する。
【方法】
対象は,2010年1月から2013年3月の間に当院において糖尿病教育入院中に理学療法を行い,PC食を摂取しているDN3B~4期患者12名(PC食群)と,栄養調整(EC)食を摂取しているeGFR60ml/min以上の21名(EC群)。除外基準は,50歳未満または80歳以上の患者,歩行困難,浮腫・腹水,著明な視力低下,下肢切断を有する患者,利尿剤を使用していない患者,診療録により経過が追えない患者とした。対象群の比較として年齢,入院時BMI,在院日数,HbA1c,eGFR,尿蛋白量,指示エネルギーをWilcoxonの符号付き順位検定を行った。また,両群のインスリン療法使用率を算出した。運動項目はストレッチ,有酸素運動,レジスタンストレーニング(RT)に分類し,実施割合を算出した。身体組成(体重,除脂肪量,脂肪量)は,入院時,退院時に測定し,Wilcoxonの符号付き順位検定を行った。機器はインピーダンス法(タニタBF-220)を用いた。入院時,退院時の身体組成の変化率と,尿蛋白量にピアソンの相関分析を行った。統計学的分析は統計ソフトDr.SPSSII for Windowsを用い,いずれも有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,後方視的な調査である。調査時に継続して当院を受診している対象者に対しては口頭で研究概要を説明し同意を得た。調査は当院倫理委員会の承認を受けて実施した。ヘルシンキ宣言を遵守し,個人が特定されることがないよう注意した。また,研究への同意を撤回する権利を有することを説明した。
【結果】
両群の年齢,入院時BMI,在院日数に有意差はみられなかった。HbA1c,eGFR,尿蛋白量に有意差(p<0.01)がみられ,指示エネルギーに有意差(p<0.05)がみられた。インスリン療法使用率はPC群66.6%,EC群23.8%であった。ストレッチと有酸素運動は,ほぼ全例に実施していた。RTは,PC群16%,EC群57%に実施していた。PC群は,体重が67.5±12.1kgから64.6±10.8kg,除脂肪量が52.1±8.1kgから48.9±7.0kgと有意(p<0.01)に減少していた。EC群は,体重が62.1±12.0kgから60.3±11.2kgと有意(p<0.01)に減少し,脂肪量が21.0±8.5kgから19.6±8.3kgと有意(p<0.05)に減少していた。PC群の除脂肪量の変化率と尿蛋白量に相関(r=0.68,p<0.05)していた。
【考察】
PC群は,除脂肪量が有意に減少していた。PC群は運動制限があり,運動負荷の高いRTの実施が困難であったと考えられる。RTは,有酸素運動と併用することで除脂肪量減少の抑制効果を高めるとしており,RTの実施頻度が低いことは,PC群の除脂肪量減少の要因と考えられた。EC群は,RTの実施頻度が高く,除脂肪量減少を抑制しつつ減量が可能であったと考えられた。また,PC群は入院中に体重が約3kg減少していた。短期間の急激な減量は,除脂肪量減少を伴うとされており,1か月の適正な減量は1~2kgとしている。1か月未満での3kgの減量は,PC群の除脂肪量減少を抑制できなかった要因と考えられ,教育入院中の消費エネルギーに対する摂取エネルギーの調整が課題として挙げられた。PC群の除脂肪量変化率と尿蛋白量が相関していた。尿蛋白量の増加が,除脂肪量減少の要因と考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
PC食を摂取しているDN3B~4患者は,運動療法による除脂肪量減少の抑制効果は低いことが示唆された。
糖尿病患者は,肥満を改善することでインスリン抵抗性の改善,糖尿病腎症の進展抑制が期待できる。肥満治療は,筋肉量を反映する除脂肪量の減少抑制が肝要であり,運動療法が推奨される。しかし,筋蛋白異化亢進,蛋白制限(PC),尿蛋白量増加が背景にある糖尿病顕性腎症(DN3B~4)患者に対する効果は明らかにされていない。今回,糖尿病教育入院中にPC食を摂取しているDN3B~4患者は,運動療法により除脂肪量減少を抑制しているかを後方的調査にて検討する。
【方法】
対象は,2010年1月から2013年3月の間に当院において糖尿病教育入院中に理学療法を行い,PC食を摂取しているDN3B~4期患者12名(PC食群)と,栄養調整(EC)食を摂取しているeGFR60ml/min以上の21名(EC群)。除外基準は,50歳未満または80歳以上の患者,歩行困難,浮腫・腹水,著明な視力低下,下肢切断を有する患者,利尿剤を使用していない患者,診療録により経過が追えない患者とした。対象群の比較として年齢,入院時BMI,在院日数,HbA1c,eGFR,尿蛋白量,指示エネルギーをWilcoxonの符号付き順位検定を行った。また,両群のインスリン療法使用率を算出した。運動項目はストレッチ,有酸素運動,レジスタンストレーニング(RT)に分類し,実施割合を算出した。身体組成(体重,除脂肪量,脂肪量)は,入院時,退院時に測定し,Wilcoxonの符号付き順位検定を行った。機器はインピーダンス法(タニタBF-220)を用いた。入院時,退院時の身体組成の変化率と,尿蛋白量にピアソンの相関分析を行った。統計学的分析は統計ソフトDr.SPSSII for Windowsを用い,いずれも有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,後方視的な調査である。調査時に継続して当院を受診している対象者に対しては口頭で研究概要を説明し同意を得た。調査は当院倫理委員会の承認を受けて実施した。ヘルシンキ宣言を遵守し,個人が特定されることがないよう注意した。また,研究への同意を撤回する権利を有することを説明した。
【結果】
両群の年齢,入院時BMI,在院日数に有意差はみられなかった。HbA1c,eGFR,尿蛋白量に有意差(p<0.01)がみられ,指示エネルギーに有意差(p<0.05)がみられた。インスリン療法使用率はPC群66.6%,EC群23.8%であった。ストレッチと有酸素運動は,ほぼ全例に実施していた。RTは,PC群16%,EC群57%に実施していた。PC群は,体重が67.5±12.1kgから64.6±10.8kg,除脂肪量が52.1±8.1kgから48.9±7.0kgと有意(p<0.01)に減少していた。EC群は,体重が62.1±12.0kgから60.3±11.2kgと有意(p<0.01)に減少し,脂肪量が21.0±8.5kgから19.6±8.3kgと有意(p<0.05)に減少していた。PC群の除脂肪量の変化率と尿蛋白量に相関(r=0.68,p<0.05)していた。
【考察】
PC群は,除脂肪量が有意に減少していた。PC群は運動制限があり,運動負荷の高いRTの実施が困難であったと考えられる。RTは,有酸素運動と併用することで除脂肪量減少の抑制効果を高めるとしており,RTの実施頻度が低いことは,PC群の除脂肪量減少の要因と考えられた。EC群は,RTの実施頻度が高く,除脂肪量減少を抑制しつつ減量が可能であったと考えられた。また,PC群は入院中に体重が約3kg減少していた。短期間の急激な減量は,除脂肪量減少を伴うとされており,1か月の適正な減量は1~2kgとしている。1か月未満での3kgの減量は,PC群の除脂肪量減少を抑制できなかった要因と考えられ,教育入院中の消費エネルギーに対する摂取エネルギーの調整が課題として挙げられた。PC群の除脂肪量変化率と尿蛋白量が相関していた。尿蛋白量の増加が,除脂肪量減少の要因と考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
PC食を摂取しているDN3B~4患者は,運動療法による除脂肪量減少の抑制効果は低いことが示唆された。