第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 内部障害理学療法 ポスター

代謝2

Sat. May 31, 2014 3:45 PM - 4:35 PM ポスター会場 (内部障害)

座長:重田暁(北里大学北里研究所病院診療技術部リハビリテーション技術科)

内部障害 ポスター

[1191] 当院における末期腎不全患者に対する包括的リハビリテーションとしての取り組み

沼田純希1, 井上宜充1, 石井顕2, 宮地竜也1, 東陽子1, 永塚信代1, 芹澤貴子3, 國保敏晴4 (1.横須賀市立市民病院リハビリテーション療法科, 2.横須賀市立うわまち病院リハビリテーション科, 3.横須賀市立市民病院透析室, 4.横須賀市立市民病院腎臓内科)

Keywords:末期腎不全, 人工透析, 運動療法

【はじめに,目的】末期腎不全(ESKD)患者,特に透析患者には全身的に合併症が併発し,活動量低下から筋力・運動耐用能低下をきたしやすく,運動療法介入の必要性は高いとされる。当院ではESKD患者の病期や透析方法に合わせた介入を実施しているが,臨床上,活動意欲の低下もみられ,介入には病期・病態や生活環境など個々の症例への配慮の必要性を感じることが多い。本報告では,後方視的に介入成果を分析し,今後の運動療法実施の一助とすることを目的とした。
【方法】対象は,①保存期のESKD患者及び家族,②血液透析(HD)患者,③腹膜透析(PD)患者とした。保存期のESKD患者及び家族に対しては「腎臓病教室」を定期的に実施し,医師・看護師・管理栄養士・理学療法士が治療の理解と進行予防の啓発活動を実施している。終了後,理解度や感想を質問紙法で聴取し次回に反映している。HD患者に対しては透析中運動療法を実施している。週1回,3ヶ月間,ゴムバンドや重錘を用いたレジスタンス運動を実施し,その他home exerciseとして下肢レジスタンス運動を処方した。開始時・終了時に,自覚症状や生活状況の聴取,hand held dynamometer:HHD(μ-Tas F-1,アニマ株式会社)を使用し等尺性膝伸展筋力体重比(以下,体重比)(%),10m歩行時間(sec)を測定し,対象者へフィードバックしている。本報告では,運動機能改善を認めた3例{男性1例(89歳),女性2例(90,63歳)}の経過を述べる。PD患者に対しては日常行動記録計(Welsupport,ニプロ社)を用い3~4ヶ月毎に1週間の活動量(kcal),歩数(steps)等を計測し,また質問紙法での活動度・自覚症状等の聴取,さらに体重比(%),6分間歩行(以下,6MD)(m)を測定し,結果から有酸素運動及び下肢筋力強化を中心とした運動指導を実施している。今回は,8例{男性7例,女性1例,年齢61.5歳(43-80),median(min-max)}の測定結果と,うち2度の指導を行った5例{全例男性,年齢69歳(56-80)}の経過を述べる。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は当院倫理委員会の承認を受け実施した(承認番号:25-28)。また,対象者には十分な説明を行い同意を得た。
【結果】腎臓病教室後の理解度アンケートでは,全体として食事療法に関する感想が多数みられた。運動療法については,運動の必要性を初めて認識したという旨の内容がみられた。HD患者についてはそれぞれ,体重比が初期で12.3,26.5,11.0(%),最終が21.2,36.1,27.5(%),10m歩行時間が初期で9.96,8.44,11.9(sec),最終が8.39,8.5,8.85(sec)と改善を認めた。PD患者については,身体活動量176.5(88.5-564)kcal/day,歩数6889(2113-14240)steps/day,体重比39.7(27.7-65.5)(%),6MD 522(411-593)mであった。また,再評価可能であった5名の各項目の変化率は活動量155%,歩数168%,四頭筋筋力108%,6MD97%であった。
【考察】保存期患者・家族からは,食事療法に関する反応が多く得られたことから,疾患と生活習慣との関係への関心の高さが示唆された。一方,運動に関しては認知度の低さが認められた。保存期患者に関して,適度な運動療法の重要性が報告されており,より早期からの運動を含めた生活習慣改善の指導が予後改善につながると考えられる。HD患者に関して,週1回の運動頻度にも関わらず運動機能改善がみられたことは,home exerciseの実施が一因と考えられる。運動定着に関しては,非透析日の運動でdrop outが多いとの報告もあり,今回の方法が他症例にも適応となるかは今後の検討が必要である。PD患者については,等尺性膝伸展筋力体重比に関して,平澤らが60代の健常者平均では男性63.6±11.6(%),女性50.2±9.6(%)であると報告しており,健常者に対するPD患者の筋力低下が示唆された。また,活動量の増加を認めたが,体重比・6MDの改善はみられなかった。これは,散歩等の有酸素運動量は増加したが,速度は至適速度で実施しており,またレジスタンス運動は実施しなかった症例が多かったためと考える。時間的制約が少ない点がPDの特性ではあるが,実際には就労していない症例や高齢者では社会参加・外出頻度は少なく,1.5~2.5lの透析液の重量による倦怠感も重なり低活動となっている症例も多く,医療者の関わり方の工夫,home exercise方法の選択が課題と考える。本研究の結果から,CKD患者の病状,身体機能や生活環境は多様であり,個々の症例に対する運動療法介入に併せ,QOL改善のため行動変容を促していく必要があると考える。
【理学療法学研究としての意義】腎臓リハビリテーションにおいて,病期,また個々の症例に応じて介入方法を考慮する必要性が示唆された。更に,早期からの運動の重要性に関する啓発が必要であると考える。