[1196] 訪問リハビリテーションでの低周波治療の効果
キーワード:訪問リハビリテーション, 経皮的電気刺激, ホームエクササイズ
【目的】
脳卒中ガイドラインのリハビリテーションでは,痙縮軽減に対して経皮的電気刺激(以下TENS)が勧められている。しかし,訪問リハビリテーション場面で,その効果を検証している研究は少ない。そこで,本研究では,訪問リハビリテーションにおいて,TENSのホームエクササイズを指導し,それを行うことで,上肢の実用性の向上,歩行の安定性の向上が得られるかABA型シングルケースデザインで実施した。
【対象と方法】
対象は33歳男性,3年前に前頭葉出血にて左片麻痺を呈した症例である。上肢はブルーンストロームステージ3,下肢はブルーンストロームステージ3,基本動作,日常生活動作ともに自立し,就労している。
A期間(介入期)は,訪問リハビリテーション時の運動療法とTENSを実施した。低周波治療器は,伊藤超短波トリオ300を使用した。麻痺側上肢は,手関節背屈筋群(橈側手根伸筋)に電極を設置した。麻痺側下肢は,足関節背屈筋群(前脛骨筋)に接置した。上肢,下肢ともに30mmA,100Hzに合わせ毎日30分間実施するように指導し,それを5週間実施した。B期間(未介入期)は,運動療法のみを5週間実施した。A1期,B期,A2期に渡って,15週間を研究期間とした。
評価について上肢は,握力(血圧計を使用),Modified Ashworth scale(以下MAS,6段階を1~6と表記した),Fugl- Meyer-TEST(以下FMT),下肢は,歩行速度(5m)30秒間立ち上がりテスト,Times up and Go Test(以下TUG),Functional Reach Test(以下FRT)を実施した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,対象者,家族にヘルシンキ宣言に基づいた研究の主旨の説明を行い,同意を得て進行した。また,当所属法人の倫理委員会で承認された研究である
【結果】
上肢において握力は,A1期5.6±1.5mmHg,B期7.9±2.3mmHg,A2期6.4±2.2mmHg,MASで肘関節伸展は,A1期4.0,B期4.0,A2期3.4±0.9,肘関節屈曲は,A1期2.8±0.8,B期3.4±0.5,A2期3.0±1.0,手関節回外は,A1期5.2±0.4,B期5.0,A2期5.4±0.5,手関節回内は,A1期1.0,B期1.0,A2期1.0,FMTは,A1期28.4±1.5,B期29.8±2.7,A2期32.6±1.8であった。
下肢において歩行速度は,A1期7.1±0.6秒,B期7.0±0.9秒,A2期7.9±0.4秒,30秒間立ち上がりテストは,A1期14.5±0.5回,B期13.4±0.5回,A2期13.5±0.8回,TUGは,A1期13.5±0.9秒,B期12.7±0.9秒,A2期13.1±0.8秒,FRTは,A1期15.4±2.9cm,B期15.5±2.8cm,A2期19.8±3.2cmであった。
【考察】
脳卒中治療ガイドライン2009より,痙縮に対し,高頻度のTENSを施行することが勧められている。脳卒中片麻痺患者に対し,訪問リハビリテーションでのホームエクササイズ指導によるTENSによって,上肢では,どれだけの筋緊張低下,随意性の向上がみられるかどうか,下肢では,歩行能力,バランス能力の向上がみられるかどうかを検討した。脳卒中治療ガイドラインより,TENSは刺激頻度や評価期間により,効果判定に差がみられている。長期効果としてTENS(1.7Hz,60分,週5)を施行し,3年間の評価では痙縮の改善が有意にみられていない(Ib)。100Hzの高頻度のTENSを施行することにより,8週間での評価では,痙縮の改善が有意にみられている(Ib),とのことから,今回は100Hzの高頻度のTENSを利用し自宅でのホームエクササイズとして容易にできるよう麻痺側上肢下肢ともに100Hz 30mA 30分間を施行した。
握力はA1期では,1番低い値になりB期で1番高い値となった。それは,TENSによる相反抑制作用によって屈筋群の随意性が抑制され,握りにくくなったためかと考える。MASの肘伸展はA2期で低下した。これは,脊髄レベルにおける上位運動ニューロンの過興奮の抑制効果が上肢全体及んでるのではと考える。肘屈曲でも同じように考える。FMTは,A2期で著しく向上した。これはTENSによって上肢全体の随意性が向上したと考える。下肢においては歩行能力関係の評価は変化がなかった。しかし,FRTはA2期において著しく向上した。それは,下腿三頭筋の痙性抑制による荷重時の重心移動が円滑になったためと考える。
痙性筋への電気療法による痙縮抑制のメカニズムは,電気刺激に伴い感覚神経全体の興奮が起こるとし,これらの求心性発射は,α運動ニューロンに対し抑制を引き起こすと考えられている。拮抗筋への電気療法による痙縮抑制のメカニズムは,麻痺筋への拮抗筋に電気療法施行後に相反抑制の回復と考えられている。従って本研究においては,それらの効果によって,訪問リハビリテーションにおけるTENSのホームエクササイズの効果は,上肢の随意性をやや向上させ,下肢においては,バランス能力を向上させたと考える。
【理学療法学研究としての意義】
訪問リハビリテーションにおける物理療法効果の検証の一助になると考える。
脳卒中ガイドラインのリハビリテーションでは,痙縮軽減に対して経皮的電気刺激(以下TENS)が勧められている。しかし,訪問リハビリテーション場面で,その効果を検証している研究は少ない。そこで,本研究では,訪問リハビリテーションにおいて,TENSのホームエクササイズを指導し,それを行うことで,上肢の実用性の向上,歩行の安定性の向上が得られるかABA型シングルケースデザインで実施した。
【対象と方法】
対象は33歳男性,3年前に前頭葉出血にて左片麻痺を呈した症例である。上肢はブルーンストロームステージ3,下肢はブルーンストロームステージ3,基本動作,日常生活動作ともに自立し,就労している。
A期間(介入期)は,訪問リハビリテーション時の運動療法とTENSを実施した。低周波治療器は,伊藤超短波トリオ300を使用した。麻痺側上肢は,手関節背屈筋群(橈側手根伸筋)に電極を設置した。麻痺側下肢は,足関節背屈筋群(前脛骨筋)に接置した。上肢,下肢ともに30mmA,100Hzに合わせ毎日30分間実施するように指導し,それを5週間実施した。B期間(未介入期)は,運動療法のみを5週間実施した。A1期,B期,A2期に渡って,15週間を研究期間とした。
評価について上肢は,握力(血圧計を使用),Modified Ashworth scale(以下MAS,6段階を1~6と表記した),Fugl- Meyer-TEST(以下FMT),下肢は,歩行速度(5m)30秒間立ち上がりテスト,Times up and Go Test(以下TUG),Functional Reach Test(以下FRT)を実施した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,対象者,家族にヘルシンキ宣言に基づいた研究の主旨の説明を行い,同意を得て進行した。また,当所属法人の倫理委員会で承認された研究である
【結果】
上肢において握力は,A1期5.6±1.5mmHg,B期7.9±2.3mmHg,A2期6.4±2.2mmHg,MASで肘関節伸展は,A1期4.0,B期4.0,A2期3.4±0.9,肘関節屈曲は,A1期2.8±0.8,B期3.4±0.5,A2期3.0±1.0,手関節回外は,A1期5.2±0.4,B期5.0,A2期5.4±0.5,手関節回内は,A1期1.0,B期1.0,A2期1.0,FMTは,A1期28.4±1.5,B期29.8±2.7,A2期32.6±1.8であった。
下肢において歩行速度は,A1期7.1±0.6秒,B期7.0±0.9秒,A2期7.9±0.4秒,30秒間立ち上がりテストは,A1期14.5±0.5回,B期13.4±0.5回,A2期13.5±0.8回,TUGは,A1期13.5±0.9秒,B期12.7±0.9秒,A2期13.1±0.8秒,FRTは,A1期15.4±2.9cm,B期15.5±2.8cm,A2期19.8±3.2cmであった。
【考察】
脳卒中治療ガイドライン2009より,痙縮に対し,高頻度のTENSを施行することが勧められている。脳卒中片麻痺患者に対し,訪問リハビリテーションでのホームエクササイズ指導によるTENSによって,上肢では,どれだけの筋緊張低下,随意性の向上がみられるかどうか,下肢では,歩行能力,バランス能力の向上がみられるかどうかを検討した。脳卒中治療ガイドラインより,TENSは刺激頻度や評価期間により,効果判定に差がみられている。長期効果としてTENS(1.7Hz,60分,週5)を施行し,3年間の評価では痙縮の改善が有意にみられていない(Ib)。100Hzの高頻度のTENSを施行することにより,8週間での評価では,痙縮の改善が有意にみられている(Ib),とのことから,今回は100Hzの高頻度のTENSを利用し自宅でのホームエクササイズとして容易にできるよう麻痺側上肢下肢ともに100Hz 30mA 30分間を施行した。
握力はA1期では,1番低い値になりB期で1番高い値となった。それは,TENSによる相反抑制作用によって屈筋群の随意性が抑制され,握りにくくなったためかと考える。MASの肘伸展はA2期で低下した。これは,脊髄レベルにおける上位運動ニューロンの過興奮の抑制効果が上肢全体及んでるのではと考える。肘屈曲でも同じように考える。FMTは,A2期で著しく向上した。これはTENSによって上肢全体の随意性が向上したと考える。下肢においては歩行能力関係の評価は変化がなかった。しかし,FRTはA2期において著しく向上した。それは,下腿三頭筋の痙性抑制による荷重時の重心移動が円滑になったためと考える。
痙性筋への電気療法による痙縮抑制のメカニズムは,電気刺激に伴い感覚神経全体の興奮が起こるとし,これらの求心性発射は,α運動ニューロンに対し抑制を引き起こすと考えられている。拮抗筋への電気療法による痙縮抑制のメカニズムは,麻痺筋への拮抗筋に電気療法施行後に相反抑制の回復と考えられている。従って本研究においては,それらの効果によって,訪問リハビリテーションにおけるTENSのホームエクササイズの効果は,上肢の随意性をやや向上させ,下肢においては,バランス能力を向上させたと考える。
【理学療法学研究としての意義】
訪問リハビリテーションにおける物理療法効果の検証の一助になると考える。