[1206] 当院リハビリテーション部の「働きやすさ」に関するアンケート調査
Keywords:働きやすさ, アンケート, 職場環境
【はじめに,目的】
当院は全病床が回復期病床を持つリハビリテーション病院で,ここ数年で急激にスタッフ数が増加している状況である。構成人員も3年目以下が42.5%で,比較的若いスタッフが多数を占めている。一般社会においても,大卒者の3人に1人は3年以内に退職すると言われる状況の中,当院でも,ある程度経験を積み,退職していくスタッフも少なくない。また,日本でもワークライフバランスが推進され,当院でも短時間勤務制度が導入された。様々な勤務形態が導入される中,各個人の価値観の下,職場環境を整備し,定着率の高い職場を目指す上でも,現状把握は必須と思われる。そこで,アンケート調査から働きやすさと当院での課題を考察したので,ここに報告する。
【方法】
当院リハビリテーション部の73名を対象に,アンケート用紙を用い記述調査を実施した。対象者は男性23名,女性50名,理学療法士34名,作業療法士31名,言語聴覚士8名,年齢は21~44才で平均27.9±5.2才,経験年数は1~23年目で平均5.3年である。質問項目は,スタッフの属性(性別・職種・経験年数・配偶者の有無,子供の有無),働きやすさ(visual analog scale以下VAS),自由記載として,働きやすい条件・当部に充足している条件・不足している条件・今以上働きやすくするための取り組みの以上の10項目とした。自由記載欄はKJ法を用いて分類分析した。なお,個人が特定できないよう無記名で,経験年数に関しては,1~4年目・5年目以上と2択にした。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者であるスタッフには研究の目的を説明し,アンケートの返信をもって,研究への同意を得たとみなす旨を記載した。
【結果】
アンケート回収率は94.5%,有効回答率は98.6%であった。各属性と働きやすさ(VAS)に関しては統計学的な有意差は得られなかった。自由記載の項目ついては,働きやすい条件として「人間関係の良好さ」「休みの取りやすさ」「残業の少なさ」などが挙がり,充足条件には「人間関係の良好さ」「相談しやすさ」「やりがい」「勉強ができる環境」「部署内連携」などが挙がった。不足条件では「定時帰宅」「業務の効率化」「休憩時間の確保」「組織としての方向性」「適度な緊張感」「部署外連携」などが挙がり,充足不足の両条件とも挙がったものには,「希望休」「意見のしやすさ」「教育体制」などがあった。
【考察】
当部としての特徴的傾向は,人間関係が良好で相談しやすいが,一歩踏み込んだ意見交換までには至らず,結果としてミーティング等の情報共有に時間が割かれ,他の業務や定時帰宅などに影響しているのではと考える。こういった意見交換の不足は,情報交換の面で部署内連携までは問題ないが,部署外連携は不足条件として挙がる原因にもなっているのではないかと考える。また,富士ゼロックスが大規模研究を行った人材開発白書2009によると,若手,中堅社員が他者(上司,先輩,同僚,後輩)との関わりを通じて成長し,その関わりを業務支援(業務に必要な知識,スキルの提供),内省支援(自分自身を振り返るきっかけを与えてもらう),精神的支援(仕事の息抜きや心の安らぎを与えてもらう)に分けることができるとしている。しかも,内省支援を多く受けている社員が成長感を強く感じるという結果が出ている。当部の特徴としては,仕事の相談などの業務支援は多いが,意見討論などの内省できるような支援は充足しているとは言い難い。現に新人教育など伝える場は設けているが,それが実践の仕事場まで生かされているとは言い難く,教育が一方向性なのは否めない状況である。経験学習では,業務は経験するだけでなく,内省を通して初めて自分自身のものになると言われる。今後は,本人が仕事を振り返ることができるようなフィードバックを提供する機会を教育体制の中に組み込む必要がある。また,こういった機会づくりと同時に,コンフリクトのリスクを伴った検討できる組織風土を確立し,普段の何気ない場面でも,内省を促せるような意見討論ができる文化を作り上げる必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
療法士の働きやすさに関する研究は少なく,特に多くのスタッフを抱える職場では,指導できるレベルの療法士を定着させる取り組みが重要である。また,勤務形態の多様化の流れは,今後も進展していくと思われるため,療法士にとっての働きやすさを明確にすることは意義ある事と考える。
当院は全病床が回復期病床を持つリハビリテーション病院で,ここ数年で急激にスタッフ数が増加している状況である。構成人員も3年目以下が42.5%で,比較的若いスタッフが多数を占めている。一般社会においても,大卒者の3人に1人は3年以内に退職すると言われる状況の中,当院でも,ある程度経験を積み,退職していくスタッフも少なくない。また,日本でもワークライフバランスが推進され,当院でも短時間勤務制度が導入された。様々な勤務形態が導入される中,各個人の価値観の下,職場環境を整備し,定着率の高い職場を目指す上でも,現状把握は必須と思われる。そこで,アンケート調査から働きやすさと当院での課題を考察したので,ここに報告する。
【方法】
当院リハビリテーション部の73名を対象に,アンケート用紙を用い記述調査を実施した。対象者は男性23名,女性50名,理学療法士34名,作業療法士31名,言語聴覚士8名,年齢は21~44才で平均27.9±5.2才,経験年数は1~23年目で平均5.3年である。質問項目は,スタッフの属性(性別・職種・経験年数・配偶者の有無,子供の有無),働きやすさ(visual analog scale以下VAS),自由記載として,働きやすい条件・当部に充足している条件・不足している条件・今以上働きやすくするための取り組みの以上の10項目とした。自由記載欄はKJ法を用いて分類分析した。なお,個人が特定できないよう無記名で,経験年数に関しては,1~4年目・5年目以上と2択にした。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者であるスタッフには研究の目的を説明し,アンケートの返信をもって,研究への同意を得たとみなす旨を記載した。
【結果】
アンケート回収率は94.5%,有効回答率は98.6%であった。各属性と働きやすさ(VAS)に関しては統計学的な有意差は得られなかった。自由記載の項目ついては,働きやすい条件として「人間関係の良好さ」「休みの取りやすさ」「残業の少なさ」などが挙がり,充足条件には「人間関係の良好さ」「相談しやすさ」「やりがい」「勉強ができる環境」「部署内連携」などが挙がった。不足条件では「定時帰宅」「業務の効率化」「休憩時間の確保」「組織としての方向性」「適度な緊張感」「部署外連携」などが挙がり,充足不足の両条件とも挙がったものには,「希望休」「意見のしやすさ」「教育体制」などがあった。
【考察】
当部としての特徴的傾向は,人間関係が良好で相談しやすいが,一歩踏み込んだ意見交換までには至らず,結果としてミーティング等の情報共有に時間が割かれ,他の業務や定時帰宅などに影響しているのではと考える。こういった意見交換の不足は,情報交換の面で部署内連携までは問題ないが,部署外連携は不足条件として挙がる原因にもなっているのではないかと考える。また,富士ゼロックスが大規模研究を行った人材開発白書2009によると,若手,中堅社員が他者(上司,先輩,同僚,後輩)との関わりを通じて成長し,その関わりを業務支援(業務に必要な知識,スキルの提供),内省支援(自分自身を振り返るきっかけを与えてもらう),精神的支援(仕事の息抜きや心の安らぎを与えてもらう)に分けることができるとしている。しかも,内省支援を多く受けている社員が成長感を強く感じるという結果が出ている。当部の特徴としては,仕事の相談などの業務支援は多いが,意見討論などの内省できるような支援は充足しているとは言い難い。現に新人教育など伝える場は設けているが,それが実践の仕事場まで生かされているとは言い難く,教育が一方向性なのは否めない状況である。経験学習では,業務は経験するだけでなく,内省を通して初めて自分自身のものになると言われる。今後は,本人が仕事を振り返ることができるようなフィードバックを提供する機会を教育体制の中に組み込む必要がある。また,こういった機会づくりと同時に,コンフリクトのリスクを伴った検討できる組織風土を確立し,普段の何気ない場面でも,内省を促せるような意見討論ができる文化を作り上げる必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
療法士の働きやすさに関する研究は少なく,特に多くのスタッフを抱える職場では,指導できるレベルの療法士を定着させる取り組みが重要である。また,勤務形態の多様化の流れは,今後も進展していくと思われるため,療法士にとっての働きやすさを明確にすることは意義ある事と考える。