[1220] 高齢者に適した運動課題の検討と運動課題が基本動作,トイレ動作に関連し在宅復帰率に及ぼす影響
Keywords:高齢者, 運動課題, 在宅復帰率
【はじめに】
超高齢社会を迎え,回復期病棟の入院患者も高齢化している現状である。実際に高齢者に対しどのような運動課題が適切であるのかは判断し難い。そこで当院に入院している高齢者を対象に背臥位や立位での運動課題計6つを実施した。また今回の運動課題が対象者の基本動作や日常生活に影響していると推測し,当院独自で使用している基本動作評価表(以下BMW:Basic-motion Measure in Wajinkai-hospital)及びFIMのトイレ動作,トイレ移乗との関連性を求めた。運動課題と3つの評価項目に高い相関が認められ,回復期病棟に求められる在宅復帰率の要因として影響した結果が得られたので報告する。
【方法】
対象は平成24年6月から1年間で当院回復期病棟に入院した70歳以上の運動器疾患30名,脳血管疾患14名,廃用症候群(術後・肺炎等)36名の計80名(男性26名,女性54名),平均年齢84.79±5.69歳である。方法は対象者に毎月実施した総評価数238回(80名)で運動課題とBMW・FIMのトイレ動作・トイレ移乗(OT評価項目)の関連性を求めた。また退院月において自宅・居宅系施設に退院した自宅施設群55名(平均年齢84.33±5.49,男性14名,女性41名)と老人保健施設・転院等の老健転院群25名(平均年齢85.8±6.12,男性12名,女性13名)に分け比較した。運動課題は項目を膝立て背臥位での①臀部挙上,②両下肢挙上,③足踏み,立位での④膝の屈伸,⑤踵挙げ,⑥足踏みの計6項目に基準を定め,連続10回の可否とした。BMWとは寝返り(患側・非患側),起き上がり(on elbow・on hand・off hand),立ち上がり(屈曲相・臀部挙上相・伸展相),歩行の9項目を,FIMを参考に7段階尺度で点数化した評価表である。なお解析ソフトはSTAT VIEWを使用し,各項目の関連性はSpearmanの順位相関,退院月の比較はMann-WhitneyのU検定とt検定(対応なし)にて解析した。有意水準は全て5%とした。
【説明と同意】
本研究は所属の倫理委員会の承認を得て,患者・患者家族に研究の目的・方法を十分に説明した上で協力の可否を問い,同意書にて同意を得た。
【結果】
4項目の関連性について,運動課題とBMWでは相関係数0.727(p<0.0001)であり,運動課題とトイレ動作0.663(p<0.0001),運動課題とトイレ移乗,0.674(p<0.0001)であった。またBMWとトイレ動作0.761(p<0.0001),BMWとトイレ移乗0.763(p<0.0001)であった。退院月の各項目の比較では運動課題,BMW,トイレ動作,トイレ移乗ともに自宅施設群が有意に高い点数を示した(全てp<0.0001)。年齢・性差等に関して,4項目の関連性ではBMW,トイレ動作・トイレ移乗で運動器疾患が他疾患に比べ有意に高かった(p<0.05)。またトイレ移乗で女性が男性に比べ有意に高かった(p<0.05)。退院月の各項目ではトイレ動作・トイレ移乗で運動器疾患が他疾患に比べ有意に高かった(p<0.05)
【考察】
超高齢社会が進む今日,実際対象者の運動能力は入院月では背臥位の運動課題は31~34%,立位での運動課題は45~50%が課題を遂行できなかった。さらに入院月のBMWでは寝返りから起き上がりで31%~45%,立ち上がりから歩行で46%~63%が4点以下で介助を要した。高齢者は個々に既往歴が複数あり,疾患別に分類するのが難しい。加えて個々の姿勢アライメントが異なり,厳密な動作分析等も難しい状況にある。理学療法士として評価や治療を立案する上で,このような高齢者に対する基本動作能力の向上に必要な到達指標や,それに関連する運動課題は明確ではない。今回の結果は相関係数により,運動課題はBMWと高い関連性を示し,BMWはトイレ動作・トイレ移乗と高い関連性を示した。また退院月の比較では,運動課題と3つの評価項目が在宅復帰率の向上に影響している要因と言える。運動課題を基本動作やFIMなどの動作項目を踏まえて関連性を示すことや,それらの評価項目が退院先に影響する結果を得たことで,到達指標としての基本動作とそれに関連する運動課題が明確にできたと考える。
【理学療法研究としての意義】
超高齢社会において,実際の高齢者の運動能力や基本動作能力を把握することは重要であり,理学療法評価・治療において明確な到達指標とそれに関連する運動課題を示すことは効果判定にもつながる。さらに在宅復帰率などへの影響やその効果判定ができれば,運動課題や基本動作の動作分析の意義が向上すると考える。
超高齢社会を迎え,回復期病棟の入院患者も高齢化している現状である。実際に高齢者に対しどのような運動課題が適切であるのかは判断し難い。そこで当院に入院している高齢者を対象に背臥位や立位での運動課題計6つを実施した。また今回の運動課題が対象者の基本動作や日常生活に影響していると推測し,当院独自で使用している基本動作評価表(以下BMW:Basic-motion Measure in Wajinkai-hospital)及びFIMのトイレ動作,トイレ移乗との関連性を求めた。運動課題と3つの評価項目に高い相関が認められ,回復期病棟に求められる在宅復帰率の要因として影響した結果が得られたので報告する。
【方法】
対象は平成24年6月から1年間で当院回復期病棟に入院した70歳以上の運動器疾患30名,脳血管疾患14名,廃用症候群(術後・肺炎等)36名の計80名(男性26名,女性54名),平均年齢84.79±5.69歳である。方法は対象者に毎月実施した総評価数238回(80名)で運動課題とBMW・FIMのトイレ動作・トイレ移乗(OT評価項目)の関連性を求めた。また退院月において自宅・居宅系施設に退院した自宅施設群55名(平均年齢84.33±5.49,男性14名,女性41名)と老人保健施設・転院等の老健転院群25名(平均年齢85.8±6.12,男性12名,女性13名)に分け比較した。運動課題は項目を膝立て背臥位での①臀部挙上,②両下肢挙上,③足踏み,立位での④膝の屈伸,⑤踵挙げ,⑥足踏みの計6項目に基準を定め,連続10回の可否とした。BMWとは寝返り(患側・非患側),起き上がり(on elbow・on hand・off hand),立ち上がり(屈曲相・臀部挙上相・伸展相),歩行の9項目を,FIMを参考に7段階尺度で点数化した評価表である。なお解析ソフトはSTAT VIEWを使用し,各項目の関連性はSpearmanの順位相関,退院月の比較はMann-WhitneyのU検定とt検定(対応なし)にて解析した。有意水準は全て5%とした。
【説明と同意】
本研究は所属の倫理委員会の承認を得て,患者・患者家族に研究の目的・方法を十分に説明した上で協力の可否を問い,同意書にて同意を得た。
【結果】
4項目の関連性について,運動課題とBMWでは相関係数0.727(p<0.0001)であり,運動課題とトイレ動作0.663(p<0.0001),運動課題とトイレ移乗,0.674(p<0.0001)であった。またBMWとトイレ動作0.761(p<0.0001),BMWとトイレ移乗0.763(p<0.0001)であった。退院月の各項目の比較では運動課題,BMW,トイレ動作,トイレ移乗ともに自宅施設群が有意に高い点数を示した(全てp<0.0001)。年齢・性差等に関して,4項目の関連性ではBMW,トイレ動作・トイレ移乗で運動器疾患が他疾患に比べ有意に高かった(p<0.05)。またトイレ移乗で女性が男性に比べ有意に高かった(p<0.05)。退院月の各項目ではトイレ動作・トイレ移乗で運動器疾患が他疾患に比べ有意に高かった(p<0.05)
【考察】
超高齢社会が進む今日,実際対象者の運動能力は入院月では背臥位の運動課題は31~34%,立位での運動課題は45~50%が課題を遂行できなかった。さらに入院月のBMWでは寝返りから起き上がりで31%~45%,立ち上がりから歩行で46%~63%が4点以下で介助を要した。高齢者は個々に既往歴が複数あり,疾患別に分類するのが難しい。加えて個々の姿勢アライメントが異なり,厳密な動作分析等も難しい状況にある。理学療法士として評価や治療を立案する上で,このような高齢者に対する基本動作能力の向上に必要な到達指標や,それに関連する運動課題は明確ではない。今回の結果は相関係数により,運動課題はBMWと高い関連性を示し,BMWはトイレ動作・トイレ移乗と高い関連性を示した。また退院月の比較では,運動課題と3つの評価項目が在宅復帰率の向上に影響している要因と言える。運動課題を基本動作やFIMなどの動作項目を踏まえて関連性を示すことや,それらの評価項目が退院先に影響する結果を得たことで,到達指標としての基本動作とそれに関連する運動課題が明確にできたと考える。
【理学療法研究としての意義】
超高齢社会において,実際の高齢者の運動能力や基本動作能力を把握することは重要であり,理学療法評価・治療において明確な到達指標とそれに関連する運動課題を示すことは効果判定にもつながる。さらに在宅復帰率などへの影響やその効果判定ができれば,運動課題や基本動作の動作分析の意義が向上すると考える。