[1229] 加速度計および三次元動作解析装置から測定した歩行中の重心移動幅の妥当性
Keywords:重心移動幅, 加速度計, 三次元動作解析
【はじめに,目的】
歩行中の重心移動幅は,エネルギー消費との関連がつよく,歩行障害の程度を評価する指標として,多くの研究で使用されている。従来,歩行中の重心移動幅を測定するためには,大規模な実験環境を必要とする赤外線カメラや床反力計,実験環境に制約されない比較的安価な加速度計が存在する。赤外線カメラや床反力計などの実験機器は高価であること,測定環境が制約されること,準備や測定に比較的長時間を要するという欠点がある。一方で,加速度計は実験環境に制約されない自然な歩行を繰り返し測定することができるという利点がある。近年,加速度計を使用した歩行分析が大規模な機器に代わる手段として用いられてようになってきている。
先行研究では,加速度計を使用して歩行速度やステップ時間,ステップ長,ケイデンスを求め,至適基準と考えられる評価方法と比較し,高い妥当性や再現性が認められている。加速度計と床反力計から求めた重心移動幅の関連性について調べたMeichtry Aらの研究では,機器間の相関係数は上下の重心移動幅(r=0.91)において高い関連性を示した。しかし,これらの研究では機器間における重心移動幅の一致度や系統誤差に焦点を当ててはない。
そこで,本研究では重心移動幅を測定するにあたって,床反力計と同様,至適基準と考えられている三次元動作解析を用いて,歩行中の重心移動幅における機器間の一致度や系統誤差の有無を明らかにし,加速度計の妥当性を検討することである。
【方法】
対象は男性13名,女性3名の計16名の健常者とした(年齢21.9±2.0歳,身長168.6±7.5 cm,体重61.8±11.2 kg)。歩行に影響を及ぼす整形外科疾患および神経疾患は除外した。
使用機器は12台のカメラで構成された三次元動作解析装置(MotionAnalysis社製EVaRT5.0)およびディジタルビデオカメラ(Sony社製HDR-CX390/T),三軸加速度計(ジースポート社製Pocket IMU2)を使用した。赤外線反射マーカは対象者の身体15箇所に貼付し,加速度計は第3腰椎棘突起部にベルトと粘着テープで固定した。対象者は約10mの歩行路を裸足で,かつ快適歩行速度条件で計3試行歩いた。サンプリング周波数は三次元座標データならびに加速度データともに100 Hzに設定し,データ収集した。一歩行周期を特定するために,三次元動作解析では外果に貼付したマーカ座標と,それと同期した動画データより判断した。また,加速度計では加速度の前後成分よりピーク検出法を用いて同定した。重心の算出方法は,三次元座標データでは15箇所に貼付したマーカから各セグメントの質量中心を求め,重心位置を推定した。また,加速度データは二重積分法を用いて重心の変位を求めた。重心移動幅は一歩行周期中における垂直および側方の重心移動の最大値と最小値の差から求めた。
統計処理は各パラメーターの3回の平均値を用いた。すべてのデータはShapiro-wilk検定にて正規性を確認した後,機器間の比較に対応のあるt検定,またはWilcoxon符号付順位検定,関連性を調べるためにPeasonの相関係数,またはSpearmanの順位相関係数を用いた。また,系統誤差の有無を確認するためにBland-Altman分析を用いた。統計学的有意水準は5%とした。【倫理的配慮,説明と同意】
事前に研究の趣旨や研究に伴うリスクなどを対象者に説明し,書面にて同意を得た。なお,本研究は本学倫理審査委員会の承認を得て行った。
【結果】
すべてのデータは正規性が認められた。一歩行周期中における快適歩行速度は1.32±0.19 m/sであった。三次元動作解析および加速度計より得られたそれぞれの重心移動幅は,上下では4.05±0.75 cm,4.00±0.76 cm,側方では3.20±1.00 cm,3.22±1.22 cmであった。上下および側方ともに機器間において有意差は認められなかった。また,Peasonの相関係数は,上下では0.51(p=.046),側方では0.16(p=.55)であり,上下のみに有意な相関が認められた。Bland-Altman分析の結果,上下および側方において機器間で加算誤差および比例誤差は認められなかった。
【考察】
快適歩行速度条件において三次元動作解析と加速度計を用いた重心移動幅は,上下および側方ともに系統誤差は認められなかった。上下方向に関しては機器間に中等度の相関が認められたことから,加速度計より求めた重心移動幅は三次元動作解析の代用として使用できる可能性が考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
加速度計で求めた歩行中の重心移動幅の妥当性を確かめることで,今後の臨床における歩行分析の評価方法として利用できる可能性がある。
歩行中の重心移動幅は,エネルギー消費との関連がつよく,歩行障害の程度を評価する指標として,多くの研究で使用されている。従来,歩行中の重心移動幅を測定するためには,大規模な実験環境を必要とする赤外線カメラや床反力計,実験環境に制約されない比較的安価な加速度計が存在する。赤外線カメラや床反力計などの実験機器は高価であること,測定環境が制約されること,準備や測定に比較的長時間を要するという欠点がある。一方で,加速度計は実験環境に制約されない自然な歩行を繰り返し測定することができるという利点がある。近年,加速度計を使用した歩行分析が大規模な機器に代わる手段として用いられてようになってきている。
先行研究では,加速度計を使用して歩行速度やステップ時間,ステップ長,ケイデンスを求め,至適基準と考えられる評価方法と比較し,高い妥当性や再現性が認められている。加速度計と床反力計から求めた重心移動幅の関連性について調べたMeichtry Aらの研究では,機器間の相関係数は上下の重心移動幅(r=0.91)において高い関連性を示した。しかし,これらの研究では機器間における重心移動幅の一致度や系統誤差に焦点を当ててはない。
そこで,本研究では重心移動幅を測定するにあたって,床反力計と同様,至適基準と考えられている三次元動作解析を用いて,歩行中の重心移動幅における機器間の一致度や系統誤差の有無を明らかにし,加速度計の妥当性を検討することである。
【方法】
対象は男性13名,女性3名の計16名の健常者とした(年齢21.9±2.0歳,身長168.6±7.5 cm,体重61.8±11.2 kg)。歩行に影響を及ぼす整形外科疾患および神経疾患は除外した。
使用機器は12台のカメラで構成された三次元動作解析装置(MotionAnalysis社製EVaRT5.0)およびディジタルビデオカメラ(Sony社製HDR-CX390/T),三軸加速度計(ジースポート社製Pocket IMU2)を使用した。赤外線反射マーカは対象者の身体15箇所に貼付し,加速度計は第3腰椎棘突起部にベルトと粘着テープで固定した。対象者は約10mの歩行路を裸足で,かつ快適歩行速度条件で計3試行歩いた。サンプリング周波数は三次元座標データならびに加速度データともに100 Hzに設定し,データ収集した。一歩行周期を特定するために,三次元動作解析では外果に貼付したマーカ座標と,それと同期した動画データより判断した。また,加速度計では加速度の前後成分よりピーク検出法を用いて同定した。重心の算出方法は,三次元座標データでは15箇所に貼付したマーカから各セグメントの質量中心を求め,重心位置を推定した。また,加速度データは二重積分法を用いて重心の変位を求めた。重心移動幅は一歩行周期中における垂直および側方の重心移動の最大値と最小値の差から求めた。
統計処理は各パラメーターの3回の平均値を用いた。すべてのデータはShapiro-wilk検定にて正規性を確認した後,機器間の比較に対応のあるt検定,またはWilcoxon符号付順位検定,関連性を調べるためにPeasonの相関係数,またはSpearmanの順位相関係数を用いた。また,系統誤差の有無を確認するためにBland-Altman分析を用いた。統計学的有意水準は5%とした。【倫理的配慮,説明と同意】
事前に研究の趣旨や研究に伴うリスクなどを対象者に説明し,書面にて同意を得た。なお,本研究は本学倫理審査委員会の承認を得て行った。
【結果】
すべてのデータは正規性が認められた。一歩行周期中における快適歩行速度は1.32±0.19 m/sであった。三次元動作解析および加速度計より得られたそれぞれの重心移動幅は,上下では4.05±0.75 cm,4.00±0.76 cm,側方では3.20±1.00 cm,3.22±1.22 cmであった。上下および側方ともに機器間において有意差は認められなかった。また,Peasonの相関係数は,上下では0.51(p=.046),側方では0.16(p=.55)であり,上下のみに有意な相関が認められた。Bland-Altman分析の結果,上下および側方において機器間で加算誤差および比例誤差は認められなかった。
【考察】
快適歩行速度条件において三次元動作解析と加速度計を用いた重心移動幅は,上下および側方ともに系統誤差は認められなかった。上下方向に関しては機器間に中等度の相関が認められたことから,加速度計より求めた重心移動幅は三次元動作解析の代用として使用できる可能性が考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
加速度計で求めた歩行中の重心移動幅の妥当性を確かめることで,今後の臨床における歩行分析の評価方法として利用できる可能性がある。