[1231] 体幹回旋運動と歩行との関連
キーワード:体幹運動, 反復運動, 最大歩行速度
【はじめに】
自然歩行時の体幹運動において,回旋は,屈曲,側屈に比べて大きな可動域を有する。歩行速度は,ケイデンスとステップ長により変化し,ケイデンスを大きくするためには,骨盤の素早い反復回旋運動による下肢の振りだしが必要とされる。また,骨盤の回旋角度の増加がステップ長を大きくする因子となる。
歩行と体幹機能については,歩行速度と体幹伸展の可動域や座位での側方タッピング動作との関連が明らかになっているが,体幹回旋運動との関連は明確ではない。
そこで本研究では,体幹機能として座位での反復体幹回旋運動,体幹回旋可動域,体幹回旋筋力と,歩行パラメーターとの関連を運動学的分析により明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,健常若年女性20人とした。体幹機能として,座位での反復体幹回旋運動10回の実施時間,座位での体幹回旋最大可動域,体幹回旋筋力を測定した。反復体幹運動は,幅1m,奥行き50cm,高さ1.5mのフレーム内に高さ40cmの台上に1.5mの棒を肩甲骨下角部に接するように水平に背負った状態で椅座位となり,可動範囲を30cmに固定(体幹回旋の運動範囲は左右計33.4°)し体幹回旋運動をできるだけ速く行うように指示した。開始肢位は体幹回旋左右中間位からとした。運動は,右回旋から開始し,最大右回旋(16.7°)を経て最大左回旋までを1回とし,できるだけ速く反復体幹回旋運動を10回実施するのに要する時間を計測した(以下T)。体幹回旋可動域は,椅坐位で最大体幹回旋位可動域の左右計を計測した(以下ROM)。体幹回旋筋力は,臥位にて張力計を用いて随意的な筋力を測定した(以下TRP)。歩行パラメーターは5m最速歩行の速度,ケイデンス,ステップ長を測定した。座位での反復体幹回旋運動,体幹回旋可動域,歩行パラメーターは,三次元動作解析装置(VICON)により計測した。
これらの項目についてPearsonの積率相関係数を算出し,体幹機能と歩行との関連を検討した。なお,解析はSPSS 11.0J for Windowsを使用し,有意確率は5%未満とした。
【説明と同意】
本研究は,本学研究倫理委員会の承認を得た後,全ての対象者に本研究の内容と目的を口頭ならびに文書を用いて十分に説明し,紙面による任意の同意を得て実施した。
【結果】
対象の属性の平均値(±SD)は,年齢22.5±3.1歳,身長159.8±4.8cm,体重54.5±5.7kg,BMI21.3±1.7であった。測定結果の平均値(±SD)はT4.65±0.81秒,ROM84.5±12.5°,TRP11.03±2.42kg,歩行速度2.26±0.34m/s,ケイデンス167.6±24.2step/min,ステップ長0.809±0.045mであった。ROM,TRP,歩行速度,ステップ長との間には,有意な関連は認められなかったが,Tと歩行速度に中等度の相関(r=-0.674,p<0.01),Tとケイデンスに中等度の相関(r=-0.57,p<0.05)が認められた。また,歩行速度とケイデンスにておいて高い相関(r=0.933,p<0.01)が認められた。
【考察】
歩行では,両脚支持期が必要となるため,歩行速度を上昇させる際には,両脚支持期が可能な範囲のステップ長までが限界となり,ステップ長が最大となった後は,ケイデンスに依存し速度を上昇させると考えた。ケイデンスを高くするためには,骨盤の素早い反復した回旋運動による下肢の振り出しが必要とされる。座位での反復体幹回旋運動を速く行う能力は,歩行時の骨盤の素早い反復回旋運動を行う能力を反映しているものと考えられ,ケイデンス,最大歩行速度に関連していると考えられた。
TとROM,TRPとの間に有意な関連は,見られておらず,反復体幹回旋運動を素早く行うには,他の要素が必要と考えられた。今後,反復体幹回旋運動を素早く行うための要素について研究していく必要かある。
今回,反復体幹回旋運動の速度が歩行速度と関係があることが示され,最大歩行速度においては,速く反復運動を行う能力の重要性が示された。この運動は座位で行えるため,バランスが低下した高齢者や患者にも安全な評価指標,新たな運動療法としての有用性が期待できる。
【理学療法学研究としての意義】
反復体幹回旋運動と歩行との関連が明らかになり,基底面が広く安全な座位による運動が歩行能力の新たな評価手法や運動療法の開発・考案の一助となる。
自然歩行時の体幹運動において,回旋は,屈曲,側屈に比べて大きな可動域を有する。歩行速度は,ケイデンスとステップ長により変化し,ケイデンスを大きくするためには,骨盤の素早い反復回旋運動による下肢の振りだしが必要とされる。また,骨盤の回旋角度の増加がステップ長を大きくする因子となる。
歩行と体幹機能については,歩行速度と体幹伸展の可動域や座位での側方タッピング動作との関連が明らかになっているが,体幹回旋運動との関連は明確ではない。
そこで本研究では,体幹機能として座位での反復体幹回旋運動,体幹回旋可動域,体幹回旋筋力と,歩行パラメーターとの関連を運動学的分析により明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,健常若年女性20人とした。体幹機能として,座位での反復体幹回旋運動10回の実施時間,座位での体幹回旋最大可動域,体幹回旋筋力を測定した。反復体幹運動は,幅1m,奥行き50cm,高さ1.5mのフレーム内に高さ40cmの台上に1.5mの棒を肩甲骨下角部に接するように水平に背負った状態で椅座位となり,可動範囲を30cmに固定(体幹回旋の運動範囲は左右計33.4°)し体幹回旋運動をできるだけ速く行うように指示した。開始肢位は体幹回旋左右中間位からとした。運動は,右回旋から開始し,最大右回旋(16.7°)を経て最大左回旋までを1回とし,できるだけ速く反復体幹回旋運動を10回実施するのに要する時間を計測した(以下T)。体幹回旋可動域は,椅坐位で最大体幹回旋位可動域の左右計を計測した(以下ROM)。体幹回旋筋力は,臥位にて張力計を用いて随意的な筋力を測定した(以下TRP)。歩行パラメーターは5m最速歩行の速度,ケイデンス,ステップ長を測定した。座位での反復体幹回旋運動,体幹回旋可動域,歩行パラメーターは,三次元動作解析装置(VICON)により計測した。
これらの項目についてPearsonの積率相関係数を算出し,体幹機能と歩行との関連を検討した。なお,解析はSPSS 11.0J for Windowsを使用し,有意確率は5%未満とした。
【説明と同意】
本研究は,本学研究倫理委員会の承認を得た後,全ての対象者に本研究の内容と目的を口頭ならびに文書を用いて十分に説明し,紙面による任意の同意を得て実施した。
【結果】
対象の属性の平均値(±SD)は,年齢22.5±3.1歳,身長159.8±4.8cm,体重54.5±5.7kg,BMI21.3±1.7であった。測定結果の平均値(±SD)はT4.65±0.81秒,ROM84.5±12.5°,TRP11.03±2.42kg,歩行速度2.26±0.34m/s,ケイデンス167.6±24.2step/min,ステップ長0.809±0.045mであった。ROM,TRP,歩行速度,ステップ長との間には,有意な関連は認められなかったが,Tと歩行速度に中等度の相関(r=-0.674,p<0.01),Tとケイデンスに中等度の相関(r=-0.57,p<0.05)が認められた。また,歩行速度とケイデンスにておいて高い相関(r=0.933,p<0.01)が認められた。
【考察】
歩行では,両脚支持期が必要となるため,歩行速度を上昇させる際には,両脚支持期が可能な範囲のステップ長までが限界となり,ステップ長が最大となった後は,ケイデンスに依存し速度を上昇させると考えた。ケイデンスを高くするためには,骨盤の素早い反復した回旋運動による下肢の振り出しが必要とされる。座位での反復体幹回旋運動を速く行う能力は,歩行時の骨盤の素早い反復回旋運動を行う能力を反映しているものと考えられ,ケイデンス,最大歩行速度に関連していると考えられた。
TとROM,TRPとの間に有意な関連は,見られておらず,反復体幹回旋運動を素早く行うには,他の要素が必要と考えられた。今後,反復体幹回旋運動を素早く行うための要素について研究していく必要かある。
今回,反復体幹回旋運動の速度が歩行速度と関係があることが示され,最大歩行速度においては,速く反復運動を行う能力の重要性が示された。この運動は座位で行えるため,バランスが低下した高齢者や患者にも安全な評価指標,新たな運動療法としての有用性が期待できる。
【理学療法学研究としての意義】
反復体幹回旋運動と歩行との関連が明らかになり,基底面が広く安全な座位による運動が歩行能力の新たな評価手法や運動療法の開発・考案の一助となる。