[1245] Transtheoretical Modelにおける行動変容ステージからみた日本人変形性膝関節症患者の運動定着者と運動非定着者に影響を及ぼす疼痛および心理社会的要因に関する研究:多施設共同研究
キーワード:トランスセオレティカルモデル, 心理社会的要因, 変形性膝関節症
【はじめに,目的】現在,変形性膝関節症(膝OA)は,2530万人であり,要支援者および要介護者の基礎疾患の第1位と4位である。したがって,要支援者や要介護者の減少,つまり健康寿命延伸は重要課題である。健康寿命延伸に対し,中等度以上の身体活動が有効であるが,Framingham studyにより膝OAでは強度の身体活動は進行のリスクとされているが,中等度では進行に関連ないことが報告されている。したがって,膝OAの健康寿命の延伸には進行のリスクとの関連がない中等度の身体活動が必要である。しかしながら,身体活動の実施における課題として,推奨する身体活動に達していないことや身体活動の継続が困難な者が多く,運動習慣が定着しないことが指摘されており膝OAの運動習慣を定着させる要因を探ることの必要性は高いと考える。本研究では,健康関連QOLにて患者特徴を示した膝OA患者をTranstheoretical Model(TTM)を用いて運動定着群と運動非定着群に分類し,疼痛および心理社会的要因との関連を明らかにすることである。
【方法】調査期間は,平成25年3月15日~10月30日で多施設共同研究として行った。対象は50歳以上で膝OAと診断された者300名とした。取り込み基準として,両脚立位時の膝の前後X線撮影で,膝OAと診断があり,歩行が自立している者とした。除外基準は,中枢疾患,認知症を有している者,膝関節に手術を行っている者,生活で支援を受けている者とした。調査はアンケートを用い無記名自記入質問紙法方法にて行った。7施設にアンケート用紙を配布し,回収は施設に出向き回収するか郵送法にて行った。アンケート内容は,対象の特徴を把握する目的でWOMAC(日本語版)とSF-36(日本語版)のサマリースコアを用いた。従属変数は,TTMにて調査した。説明変数は身体機能としてWOMAC機能スケール,疼痛の評価としてVASおよびWOMAC疼痛スケール,心理的な要因として運動self efficacy(運動SE),痛み対処方略(Coping Strategy Questionnaire;CSQ.日本語短縮版),破局的思考尺度(Pain Catastrophizing Scale;PCS.日本語版),SF-36の8つの下位尺度(身体機能:PF,日常役割機能-身体:RP,身体の痛み:BP,全体的健康感:GH,活力:VT,社会生活機能:SF,日常役割機能-精神:RE,心の健康:MH)を調査した。人口統計因子として年齢,BMI,婚姻,仕事,喫煙の有無を調査し交絡因子とした。従属変数の規定は,TTMの前熟考期,熟考期,準備期を運動非定着群,実行期および維持期を運動定着群とした。統計学的処理は,単相関係数およびχ2検定にて関連(p<0.2)を認めた変数を抽出し,ステップワイズ法により関連(p<0.2)を認めた説明変数および交絡因子を二項ロジステック回帰分析にて用い,説明変数,交絡因子を階層的に投入し交絡因子を補正し関連因子を検討した。有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は吉備国際大学大学院の倫理委員会の承認(受理番号12-35)を得た。対象には趣旨を書面と口頭にて説明し,理解したうえで書面にて同意を得た。
【結果】分析可能な数は120通(40.0%)であった。対象は,女性85.6%,平均年齢72.8±8.5,BMI24.0±3.4で運動非定着群64名,運動定着群56名であった。対象の関節状態はWOMACで21.0±15.9点であった。SF-36サマリースコアの身体的健康度32.7±14.9点,精神的健康度54.5±11.0点,社会的役割35.8±14.4点であった。二項ロジスティク回帰分析の結果,抽出された項目は,WOMAC機能(p=0.003,β=0.909),運動SE(p=0.004,β=1.174),SF-36の下位項目のPF(p=0.047,β=1.023)であった。
【考察】運動定着に関連する項目としてWOMAC機能,運動SE,PFであり,疼痛および心因性疼痛は関連はなかった。WOMACおよびSF-36サマリースコアにより本研究の対象は,生活に支援を受けてない者で,疾患特異性の健康度が高い者が多い母集団であることが推察された。しかしながら,全体的健康観は国民標準基準と比較し身体的健康度や社会的役割が低かった。また,抽出された項目にも,PFが関与しており,動くことが健康に行えないと考える思考が運動定着を阻害する可能性があるかもしれない。したがって,運動の定着には,理学療法士として身体機能の向上に加え,患者自身の健康状態を疾患および全体的健康度の側面から評価し,評価に応じた運動処方をすることや処方した運動に対する自信や興味を持たせることが必要かもしれない。
【理学療法学研究としての意義】運動療法の効果として軽度~中等度の膝OAに対して運動の効果が高く,近年のガイドラインでは推奨される身体活動にて運動することや患者教育における自己管理が強く推奨されており軽度~中等度の膝OA患者を対象に運動定着に関する要因を明らかにした本研究の意義は高いと思われる。
【方法】調査期間は,平成25年3月15日~10月30日で多施設共同研究として行った。対象は50歳以上で膝OAと診断された者300名とした。取り込み基準として,両脚立位時の膝の前後X線撮影で,膝OAと診断があり,歩行が自立している者とした。除外基準は,中枢疾患,認知症を有している者,膝関節に手術を行っている者,生活で支援を受けている者とした。調査はアンケートを用い無記名自記入質問紙法方法にて行った。7施設にアンケート用紙を配布し,回収は施設に出向き回収するか郵送法にて行った。アンケート内容は,対象の特徴を把握する目的でWOMAC(日本語版)とSF-36(日本語版)のサマリースコアを用いた。従属変数は,TTMにて調査した。説明変数は身体機能としてWOMAC機能スケール,疼痛の評価としてVASおよびWOMAC疼痛スケール,心理的な要因として運動self efficacy(運動SE),痛み対処方略(Coping Strategy Questionnaire;CSQ.日本語短縮版),破局的思考尺度(Pain Catastrophizing Scale;PCS.日本語版),SF-36の8つの下位尺度(身体機能:PF,日常役割機能-身体:RP,身体の痛み:BP,全体的健康感:GH,活力:VT,社会生活機能:SF,日常役割機能-精神:RE,心の健康:MH)を調査した。人口統計因子として年齢,BMI,婚姻,仕事,喫煙の有無を調査し交絡因子とした。従属変数の規定は,TTMの前熟考期,熟考期,準備期を運動非定着群,実行期および維持期を運動定着群とした。統計学的処理は,単相関係数およびχ2検定にて関連(p<0.2)を認めた変数を抽出し,ステップワイズ法により関連(p<0.2)を認めた説明変数および交絡因子を二項ロジステック回帰分析にて用い,説明変数,交絡因子を階層的に投入し交絡因子を補正し関連因子を検討した。有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は吉備国際大学大学院の倫理委員会の承認(受理番号12-35)を得た。対象には趣旨を書面と口頭にて説明し,理解したうえで書面にて同意を得た。
【結果】分析可能な数は120通(40.0%)であった。対象は,女性85.6%,平均年齢72.8±8.5,BMI24.0±3.4で運動非定着群64名,運動定着群56名であった。対象の関節状態はWOMACで21.0±15.9点であった。SF-36サマリースコアの身体的健康度32.7±14.9点,精神的健康度54.5±11.0点,社会的役割35.8±14.4点であった。二項ロジスティク回帰分析の結果,抽出された項目は,WOMAC機能(p=0.003,β=0.909),運動SE(p=0.004,β=1.174),SF-36の下位項目のPF(p=0.047,β=1.023)であった。
【考察】運動定着に関連する項目としてWOMAC機能,運動SE,PFであり,疼痛および心因性疼痛は関連はなかった。WOMACおよびSF-36サマリースコアにより本研究の対象は,生活に支援を受けてない者で,疾患特異性の健康度が高い者が多い母集団であることが推察された。しかしながら,全体的健康観は国民標準基準と比較し身体的健康度や社会的役割が低かった。また,抽出された項目にも,PFが関与しており,動くことが健康に行えないと考える思考が運動定着を阻害する可能性があるかもしれない。したがって,運動の定着には,理学療法士として身体機能の向上に加え,患者自身の健康状態を疾患および全体的健康度の側面から評価し,評価に応じた運動処方をすることや処方した運動に対する自信や興味を持たせることが必要かもしれない。
【理学療法学研究としての意義】運動療法の効果として軽度~中等度の膝OAに対して運動の効果が高く,近年のガイドラインでは推奨される身体活動にて運動することや患者教育における自己管理が強く推奨されており軽度~中等度の膝OA患者を対象に運動定着に関する要因を明らかにした本研究の意義は高いと思われる。