[1257] 上肢ペダリング運動がコアスタビリティトレーニングとして有効であり,歩行能力に影響を与えるか
Keywords:上肢, コアスタビリティトレーニング, ペダリング運動
【はじめに】
近年,在宅での自主トレーニング,また高齢者の転倒予防教室などが注目されており,当院でも退院後の転倒防止を目的に患者様にコアスタビリティトレーニング(以下コアトレと略す)の自主トレーニングを指導することがある。先行研究ではコアトレを行うことで,歩行能力向上や腰痛が軽減したなど報告されている。コアトレのほとんどは下肢を使用してのトレーニングであり,回復期病棟に入院してくる整形外科疾患患者の大半は体幹や下肢の疾患が多く占めており,疼痛などの制限により入院中に積極的に実施することは難しい事が多い。一方で上肢のみの運動でのコアトレの研究報告は少ない。当院回復期病棟では上肢に疾患を有している整形外科疾患患者は少ないため,上肢のみでの運動で簡易的にトレーニングを行うことができると立証されれば,入院時及び退院後の自主トレーニングや在宅での転倒予防のトレーニングとしても導入しやすいと考えた。そこで本研究では一般的にコアトレとして行われている下肢ペダリング運動を上肢で行い,機械を一切使用せず上肢ペダリング運動でコアトレを行うことが可能であるかを検証していく。
【方法】
対象は既往に整形外科疾患を有さない健常者80名(当院グループの職員及び当院で臨床実習を行った学生であり,平均年齢25.0±3.5歳)とした。コアトレによってインナーマッスルが強化されているかを検証する一つの材料として,インナーマッスルが働きやすいとされている骨盤中間位と働きにくいとされている骨盤後傾位で実施した。そのため,群分けは上肢ペダリング運動を骨盤中間位で行った群(以下A群と略す)とペダリング運動を骨盤後傾位で行った群(以下B群と略す)とコントロール群(以下C群と略す)の3群に分類した。本研究の開始肢位はプラットホーム端座位で,右肩関節90°屈曲,左肩関節軽度屈曲位で左肘関節最大屈曲位とし,両手の高さが水平面上で肩関節と同等の高さになるように設定した。また,両手の間の距離を一定に保つために1枚のタオルを把持した。運動時はタオルを緊張させた状態を保ちながら,タオルの中心を軸に上肢を真っ直ぐ且つ大きく回転するように,120回/分の速度で1分間実施した。本実験の手順は,最初に10m最大歩行速度の計測を3回,最大一歩幅の計測を3回,腰部安定化機能評価(小形らの方法)を1回実施した。その後,端座位で上肢ペダリング運動を実施した(C群はこの時上肢ペダリング運動を実施せずに3分間休憩)。上肢ペダリング運動実施後に再度上記の評価を実施した。また,上肢ペダリング運動実施前後に1分間の休憩を設けた。その他の収集データとしては性別,年齢,運動歴とした。統計処理はSteel-Dwass法を用いて行い,有意水準を5%未満とした。
【説明と同意】
対象者全員に本研究の意義,目的を説明し,参加の了承を得た。また,個人情報の保護には十分に配慮することを説明した。なお,本研究は当院の臨床研究倫理審査委員会の承認を得た上で実施した。
【結果】
A群とB群間またA群とC群間において10m最大歩行速度,最大一歩幅,腰部安定化機能評価共に有意差を認めた。一方,B群とC群間においては10m最大歩行速度,最大一歩幅,腰部安定化機能評価共に有意差を認めなかった。また,性別,年齢,運動歴においては,A群とB群間,A群とC群間,B群とC群間共にそれぞれ有意差を認めなかった。
【考察】
A群とC群間において10m最大歩行速度と最大一歩幅に有意差を認めただけでなく,腰部安定化機能評価においても有意差を認めたことから,上肢ペダリング運動がコアトレとして有効であると考える。また,10m最大歩行速度,最大一歩幅,腰部安定化機能評価でA群とB群間に有意差を認め,B群とC群間でそれぞれ有意差を認めなかったことを合わせて考えると上肢ペダリング運動は骨盤中間位で行わなければコアトレとして有効ではないと考える。その他の収集データから上肢ペダリング運動は性別や年齢や運動歴に関係なくコアトレとして有効であると考える。
【理学療法学研究としての意義】
本実験では健常者による研究を行った。健常者でもトレーニングが可能であれば,端座位で骨盤中間位がとれる入院患者及び退院患者,また地域に在住する高齢者でも,姿勢指導を行えば自宅でも安全に且つ簡便にコアトレを行うことが可能であると予測できる。本研究によって上肢ペダリング運動が入院時や退院時の自主トレーニング,及び在宅で転倒予防のトレーニングとして導入できる可能性が示唆された。
近年,在宅での自主トレーニング,また高齢者の転倒予防教室などが注目されており,当院でも退院後の転倒防止を目的に患者様にコアスタビリティトレーニング(以下コアトレと略す)の自主トレーニングを指導することがある。先行研究ではコアトレを行うことで,歩行能力向上や腰痛が軽減したなど報告されている。コアトレのほとんどは下肢を使用してのトレーニングであり,回復期病棟に入院してくる整形外科疾患患者の大半は体幹や下肢の疾患が多く占めており,疼痛などの制限により入院中に積極的に実施することは難しい事が多い。一方で上肢のみの運動でのコアトレの研究報告は少ない。当院回復期病棟では上肢に疾患を有している整形外科疾患患者は少ないため,上肢のみでの運動で簡易的にトレーニングを行うことができると立証されれば,入院時及び退院後の自主トレーニングや在宅での転倒予防のトレーニングとしても導入しやすいと考えた。そこで本研究では一般的にコアトレとして行われている下肢ペダリング運動を上肢で行い,機械を一切使用せず上肢ペダリング運動でコアトレを行うことが可能であるかを検証していく。
【方法】
対象は既往に整形外科疾患を有さない健常者80名(当院グループの職員及び当院で臨床実習を行った学生であり,平均年齢25.0±3.5歳)とした。コアトレによってインナーマッスルが強化されているかを検証する一つの材料として,インナーマッスルが働きやすいとされている骨盤中間位と働きにくいとされている骨盤後傾位で実施した。そのため,群分けは上肢ペダリング運動を骨盤中間位で行った群(以下A群と略す)とペダリング運動を骨盤後傾位で行った群(以下B群と略す)とコントロール群(以下C群と略す)の3群に分類した。本研究の開始肢位はプラットホーム端座位で,右肩関節90°屈曲,左肩関節軽度屈曲位で左肘関節最大屈曲位とし,両手の高さが水平面上で肩関節と同等の高さになるように設定した。また,両手の間の距離を一定に保つために1枚のタオルを把持した。運動時はタオルを緊張させた状態を保ちながら,タオルの中心を軸に上肢を真っ直ぐ且つ大きく回転するように,120回/分の速度で1分間実施した。本実験の手順は,最初に10m最大歩行速度の計測を3回,最大一歩幅の計測を3回,腰部安定化機能評価(小形らの方法)を1回実施した。その後,端座位で上肢ペダリング運動を実施した(C群はこの時上肢ペダリング運動を実施せずに3分間休憩)。上肢ペダリング運動実施後に再度上記の評価を実施した。また,上肢ペダリング運動実施前後に1分間の休憩を設けた。その他の収集データとしては性別,年齢,運動歴とした。統計処理はSteel-Dwass法を用いて行い,有意水準を5%未満とした。
【説明と同意】
対象者全員に本研究の意義,目的を説明し,参加の了承を得た。また,個人情報の保護には十分に配慮することを説明した。なお,本研究は当院の臨床研究倫理審査委員会の承認を得た上で実施した。
【結果】
A群とB群間またA群とC群間において10m最大歩行速度,最大一歩幅,腰部安定化機能評価共に有意差を認めた。一方,B群とC群間においては10m最大歩行速度,最大一歩幅,腰部安定化機能評価共に有意差を認めなかった。また,性別,年齢,運動歴においては,A群とB群間,A群とC群間,B群とC群間共にそれぞれ有意差を認めなかった。
【考察】
A群とC群間において10m最大歩行速度と最大一歩幅に有意差を認めただけでなく,腰部安定化機能評価においても有意差を認めたことから,上肢ペダリング運動がコアトレとして有効であると考える。また,10m最大歩行速度,最大一歩幅,腰部安定化機能評価でA群とB群間に有意差を認め,B群とC群間でそれぞれ有意差を認めなかったことを合わせて考えると上肢ペダリング運動は骨盤中間位で行わなければコアトレとして有効ではないと考える。その他の収集データから上肢ペダリング運動は性別や年齢や運動歴に関係なくコアトレとして有効であると考える。
【理学療法学研究としての意義】
本実験では健常者による研究を行った。健常者でもトレーニングが可能であれば,端座位で骨盤中間位がとれる入院患者及び退院患者,また地域に在住する高齢者でも,姿勢指導を行えば自宅でも安全に且つ簡便にコアトレを行うことが可能であると予測できる。本研究によって上肢ペダリング運動が入院時や退院時の自主トレーニング,及び在宅で転倒予防のトレーニングとして導入できる可能性が示唆された。