[1272] ウォーミングアップにおける神経伝導速度の変化
Keywords:ウォーミングアップ, 神経伝導速度, 尺骨神経
【はじめに,目的】
ウォーミングアップの具体的な効果として血流量や皮膚温の増加,神経伝導速度や心理的な興奮水準の上昇,怪我の防止とさまざまな効果があると報告されている。しかし,実際にウォーミングアップを行うことで神経伝導速度の変化について明らかになっていない。よって今回,ウォーミングアップを行うことで,ウォーミングアップにおける神経伝導速度の変化を研究し,実際にどの程度ウォーミングアップを行えばよいか,運動時間を把握することを目的とした。
【方法】
対象者は健常大学生男性:10名(年齢:20.5±1.0歳,身長:173±4.4cm,体重:62.2±7.2kg,BMI:20.76±2.5kg/m²)とした。事前に研究の趣旨と内容を説明し,同意を得て測定した。神経伝導速度の変化は誘発電位・筋電図検査装置(MEB-2208日本光電)を用い,記録電極を小指球(小指外転筋)の中間部と小指基節骨基部に表面電極を装着し,アースは手背面に装着した。尺骨神経の遠位側刺激部位(T1)として手関節近位部,また,近位刺激部位(T2)として上腕内側上顆付近と設定した。刺激強度はM波の振幅が増大しなくなる最大刺激より更に15~20%程度強い刺激である,最大上刺激を用いた。ウォーミングアップではトレッドミル(WOODWAY社製)を使用し,ウォーミングアップを行った。走行では,トレッドミルの歩行速度及び負荷量はポラールスポーツ心拍計(polar社製S810i)を用い,心拍数が110~120回/分となるよう設定し30分間行った。運動前~運動終了後5分後までを測定した。走行5分ごとに尺骨神経の神経伝導速度の測定を行い,迅速な測定が必要となるため,アースや電極は装着しながら行った。なお,室温は26℃と設定した。統計処理は統計ソフトJSTATを用い,神経伝導速度において一元配置分散分析反復測定法を使用した後,多重比較検定(Bonferroni法)を使用した。なお,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
計測に先立ち,全対象者に文章及び口頭にて研究の趣旨を説得し,同意書へ署名をもって同意を得た。なお,本研究計画は国際医療福祉大学の倫理審査会の承認(番号13-30)を得ている。
【結果】
神経伝導速度では,運動前55.7±4.3(m/s),運動5分後57.0±4.4(m/s),運動10分後57.0±4.8(m/s),運動15分後57.6±5.4(m/s),運動20分後56.6±5.4(m/s),運動25分後56.0±5.2(m/s),運動30分後55.0±4.9(m/s),5分休息後56.2±4.6(m/s)であった。神経伝導速度は,運動15分後までは上昇し,その後,運動30分後まで減少し,走行後に5分間休息を挟むと再び上昇した。運動15分後で神経伝導速度は最高となり,運動30分後で最低となった。一元配置分散分析の結果,走行期間に主効果がみられた(p<0.05)。また,多重比較の結果,運動15分後は運動前に比べ有意に上昇し,運動30分後は運動5,10,15分後に比べ有意に低下した。
【考察】
今回,神経伝導速度は運動15分後まで上昇し,運動20~30分後まで減少し,休息を挟むと再び上昇した。運動15分後が運動前に比べ有意に上昇した原因として,走行による体温上昇が神経伝導速度の上昇に関与していると考える。小村¹)らはトレッドミルでの走行より皮膚温の上昇を報告している。また,湯浅²)らは,皮膚温度は神経伝導速度へ最も影響を与える因子であると報告している。運動30分後が運動5・10・15分後に比べ有意に低下した原因として,走行による疲労が関与している可能性があると考える。運動30分後に5分休息を挟むことで再び伝導速度が上昇したことからも疲労の影響が考えられる。青木³)によると運動が長時間にわたるとシナプスや運動終板における刺激の伝達物質であるアセチルコリンの分泌は低下し,神経衝撃は筋に伝達されにくくなると報告している。走行というウォーミングアップでは,神経伝導速度を上昇させるには心拍数110~120回/分程度の運動強度で15分程度の走行が適切であることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
心拍数110~120回/分程度の運動強度で15分程度の走行がウォーミングアップに適していると考えられ,ウォーミングアップを行う際の指標になると考える。
ウォーミングアップの具体的な効果として血流量や皮膚温の増加,神経伝導速度や心理的な興奮水準の上昇,怪我の防止とさまざまな効果があると報告されている。しかし,実際にウォーミングアップを行うことで神経伝導速度の変化について明らかになっていない。よって今回,ウォーミングアップを行うことで,ウォーミングアップにおける神経伝導速度の変化を研究し,実際にどの程度ウォーミングアップを行えばよいか,運動時間を把握することを目的とした。
【方法】
対象者は健常大学生男性:10名(年齢:20.5±1.0歳,身長:173±4.4cm,体重:62.2±7.2kg,BMI:20.76±2.5kg/m²)とした。事前に研究の趣旨と内容を説明し,同意を得て測定した。神経伝導速度の変化は誘発電位・筋電図検査装置(MEB-2208日本光電)を用い,記録電極を小指球(小指外転筋)の中間部と小指基節骨基部に表面電極を装着し,アースは手背面に装着した。尺骨神経の遠位側刺激部位(T1)として手関節近位部,また,近位刺激部位(T2)として上腕内側上顆付近と設定した。刺激強度はM波の振幅が増大しなくなる最大刺激より更に15~20%程度強い刺激である,最大上刺激を用いた。ウォーミングアップではトレッドミル(WOODWAY社製)を使用し,ウォーミングアップを行った。走行では,トレッドミルの歩行速度及び負荷量はポラールスポーツ心拍計(polar社製S810i)を用い,心拍数が110~120回/分となるよう設定し30分間行った。運動前~運動終了後5分後までを測定した。走行5分ごとに尺骨神経の神経伝導速度の測定を行い,迅速な測定が必要となるため,アースや電極は装着しながら行った。なお,室温は26℃と設定した。統計処理は統計ソフトJSTATを用い,神経伝導速度において一元配置分散分析反復測定法を使用した後,多重比較検定(Bonferroni法)を使用した。なお,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
計測に先立ち,全対象者に文章及び口頭にて研究の趣旨を説得し,同意書へ署名をもって同意を得た。なお,本研究計画は国際医療福祉大学の倫理審査会の承認(番号13-30)を得ている。
【結果】
神経伝導速度では,運動前55.7±4.3(m/s),運動5分後57.0±4.4(m/s),運動10分後57.0±4.8(m/s),運動15分後57.6±5.4(m/s),運動20分後56.6±5.4(m/s),運動25分後56.0±5.2(m/s),運動30分後55.0±4.9(m/s),5分休息後56.2±4.6(m/s)であった。神経伝導速度は,運動15分後までは上昇し,その後,運動30分後まで減少し,走行後に5分間休息を挟むと再び上昇した。運動15分後で神経伝導速度は最高となり,運動30分後で最低となった。一元配置分散分析の結果,走行期間に主効果がみられた(p<0.05)。また,多重比較の結果,運動15分後は運動前に比べ有意に上昇し,運動30分後は運動5,10,15分後に比べ有意に低下した。
【考察】
今回,神経伝導速度は運動15分後まで上昇し,運動20~30分後まで減少し,休息を挟むと再び上昇した。運動15分後が運動前に比べ有意に上昇した原因として,走行による体温上昇が神経伝導速度の上昇に関与していると考える。小村¹)らはトレッドミルでの走行より皮膚温の上昇を報告している。また,湯浅²)らは,皮膚温度は神経伝導速度へ最も影響を与える因子であると報告している。運動30分後が運動5・10・15分後に比べ有意に低下した原因として,走行による疲労が関与している可能性があると考える。運動30分後に5分休息を挟むことで再び伝導速度が上昇したことからも疲労の影響が考えられる。青木³)によると運動が長時間にわたるとシナプスや運動終板における刺激の伝達物質であるアセチルコリンの分泌は低下し,神経衝撃は筋に伝達されにくくなると報告している。走行というウォーミングアップでは,神経伝導速度を上昇させるには心拍数110~120回/分程度の運動強度で15分程度の走行が適切であることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
心拍数110~120回/分程度の運動強度で15分程度の走行がウォーミングアップに適していると考えられ,ウォーミングアップを行う際の指標になると考える。