第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 内部障害理学療法 ポスター

代謝3

Sat. May 31, 2014 4:40 PM - 5:30 PM ポスター会場 (内部障害)

座長:河江敏広(広島大学病院診療支援部リハビリテーション部門)

内部障害 ポスター

[1274] 2型糖尿病患者の2週間教育入院における運動効果の検討

中立大樹1, 山本将令1, 磯和裕真1, 藤原僚子2, 金児竜太郎2, 西濱康太2, 門口紅2, 村田和也2 (1.伊勢赤十字病院医療技術部リハビリテーション課, 2.伊勢赤十字病院糖尿病代謝内科)

Keywords:運動, 活動量, 教育入院

【はじめに,目的】
運動療法の効果は多方面から示されているにもかかわらず,運動療法の指導自体がなされていない施設も多いと佐藤らは報告している。その原因にはエビデンスの不足が専門職の介入の障害となっていることが考えられる。実際,入院期間中の比較的短期間の運動療法の効果を検討した報告は乏しい。そこで今回,教育入院中の患者活動量の違いから運動療法の効果を検討したので報告する。
【方法】
対象は平成24年2月3日から平成25年9月19日の間に当院教育入院を終了された糖尿病患者89例とした。方法は2週間の教育入院中の平均歩数を用い,中央値である9753歩未満を低活動群(以下LA,N=44),それ以上を高活動群(以下HA,N=45)に分類した。次いで入院2日目から11日目の朝昼夕それぞれのSMBG値を比較検討した。そして入院2日目と11日目のSMBG値の変化量と変化率(以下変化量,変化率)も比較検討した。さらに,全例をインスリン治療群(以下INS群,N=LA27,HA27)と経口薬治療もしくは薬物療法なし群(以下OHAorND群,N=LA17,HA18)に分類し,同様にLAとHAでSMBG値,変化量そして変化率を比較検討した。INS群については使用インスリン量の比較検討も行った。平均歩数は入院翌日からの9日間とし生活習慣記録機life corderより得た。SMBG値は朝昼夕の食直前に測定した。すべての検討に統計学的検定を行った。
【倫理的配慮,説明と同意】
個人データ利用に関しては対象に同意を得た。
【結果】
LAとHAでのSMBG値の比較では,全例を対象とした場合,朝は2日目から11日目まで有意な差はなかった。昼では7日目でLA172.6±68.7mg/dl,HA145.5±48.9mg/dl(以下LA,HAの順に表記),9日目171.7±57.1mg/dl,140.0±57.0mg/dlそして11日目166.8±52.7mg/dl,143.9±40.7mg/dlとHAが有意に低かった。以外の日についてもHAに低い傾向であった。夕は10日目148.8±51.8mg/dl,127.9±36.8mg/dlとHAが有意に低かった。また,昼と同様にHAに低い傾向であった。INS群を対象とした場合では朝昼夕いずれも入院期間中を通して差はなかった。OHAorND群を対象とした場合では,朝は差がなかったが昼では6日目150.6±62.5mg/dl,107.8±26.8mg/dl,7日目153.1±46.6mg/dl,114.0±27.3mg/dl,そして9日目154.6±40.2mg/dl,113.9±25.1mg/dlとHAが有意に低かった。そして,2日目から11日目を通して昼と夕でHAに低い傾向であった。変化量についてはINS群の昼で39.1±70.6 mg/dl,90.1±108.0 mg/dlとHAに有意に大きかった。変化率はINS群の朝で-17.9±20.3%,-30.3±20.9%,夕で-10.4±29.3%,-25.4±20.5%とHAで有意な低下率を認め,昼も同様の傾向であった。INS群のインスリン使用量は追加インスリン量に差はなかった。基礎インスリンは7日目0.127±0.097単位/kg,0.082±0.061単位/kg,8日目0.137±0.090単位/kg,0.092±0.070単位/kgそして9日目0.137±0.086単位/kg,0.076±0.063単位/kg,とHAで有意に少なかった。以外の日についてもHAに少ない傾向を示し,入院期間の合計量もHAに少ない傾向であった。
【考察】
SMBG値の比較で,全例を対象とした場合では昼で入院中期より,夕では後期よりHAに低下を認め,OHAorND群を対象とした場合では入院初期よりHAに低下を認めた。INS群では差は認められなかったが,HAは基礎インスリン量が少ないにもかかわらず,LAと同程度のSMBG値であったこと,変化量,変化率がHAに大きかったことから,活動量の差が血糖値,基礎インスリン量に影響を与えているものと考え,これらは運動の効果と考えた。今回の研究で短期間の入院中においても空腹時血糖値の低下,インスリン量の減量による運動の効果を認め,intensiveな運動療法介入が必要であると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
今後,さらなる運動療法のエビデンスを構築することで,その効果を証明し,専門職としての十分な介入環境を構築していくことは,入院期間の短縮や薬物の減量等をもたらし,糖尿病医療に貢献できることが期待できる。