[1285] 高齢者において病棟内で転倒転落が生じた患者要因の検討
Keywords:高齢者, 転倒, 認知症
【はじめに】
超高齢社会を迎え,回復期リハビリテーション病棟では理学療法士,作業療法士,看護師等によるチーム医療が推進されている。理学療法士は病棟において患者の移動レベルや各種動作レベルの自立度を評価し看護師に申し送っている。また病室の環境調整等にもリハビリスタッフの意見が多く反映されている。しかし実際に病棟や病室において転倒転落が生じた場合,発見した看介護スタッフが報告し改善策を考えているのが現状である。当院では独自の転倒転落アセスメントシート(以下転倒スコアシート)を基準にあらゆる対策を実施しているが転倒は生じている。病棟における転倒転落を減らすためには,理学療法士が自立度を評価する際,単に動作能力の評価だけではなく,認知症高齢者の行動パターンを把握し実際に行う動作に危険性がないか判断する必要がある。そこで高齢者の転倒転落における患者要因に関して認知症行動障害尺度を参考に検討し,また転倒スコアシートと関連性を調べたので報告する。
【方法】
対象は平成24年6月から1年間で当病棟に入院した70歳以上の運動器疾患30名,脳血管疾患14名,廃用症候群(術後・肺炎等)36名の計80名(男性26名,女性54名),平均年齢84.79±5.69歳,入院時HDS-Rが平均14.78±9.03であった。方法は認知症行動障害評価表を用いて毎月評価を実施し,転倒群(評価数59)と非転倒群(評価数177)を比較した。認知症行動障害評価表は,認知症行動障害尺度(DBD)を参考に転倒につながる不穏行動として①落ち着きがなく,もしくは興奮してやたら手足を動かす,またはベッドから起き上がろうとする,歩き回る ②異食・弄便行為 ③物取られ妄想など,事実に反し妄想・幻覚や思い違いなどと思われる発言や主張をする ④暴言や暴力行為,介助に対し抵抗する ⑤理由もなく大声や金切り声をあげる ⑥同じことを何度も聞く,同じことを尋ねる ⑦無意味な作業⑧食事を拒否する。または食べ過ぎる ⑨自分の世界に閉じこもり,日常的な物事にも関心を持たず,何事にも意欲を示さない ⑩昼夜逆転の10項目を引用し,その頻度を5段階尺度で点数化したものである。また入院月(対象者中72名)の転倒スコアシートと認知症行動障害評価表の関連性を求めた。解析ソフトはSTAT VIEWを使用し,2群間比較はMann-WhitneyのU検定,評価の関連性はSpearmanの順位相関の検定にて解析した。有意水準は全て5%とした。
【説明と同意】
本研究は所属の倫理委員会の承認を得て,患者・患者家族に研究の目的・方法を十分に説明した上で協力の可否を問い,同意書にて同意を得た。
【結果】
認知症行動障害評価表で転倒群が有意に高い点数を示した(p<0.0001)。また10項目中4項目(①,③,⑨,⑩)で転倒群が有意に高い点数を示した(p<0.0001~0.05)。転倒スコアシートと認知症行動障害評価表は相関係数0.517(p<0.0001)と有意な相関関係が認められた。
【考察】
回復期病棟において理学療法士が病棟の移動・動作レベルの自立度を評価する際,特に注意が必要な行動パターンとして,結果より①落ち着きがなく,もしくは興奮してやたら手足を動かす,またはベッドから起き上がろうとする,歩き回る,③物取られ妄想など,事実に反し妄想・幻覚や思い違いなどと思われる発言や主張をする,⑨自分の世界に閉じこもり,日常的な物事にも関心を持たず,何事にも意欲を示さない,⑩昼夜逆転の4項目があげられる。また10項目総点数においても有意差があり,転倒スコアシートとの関連性も認められたことから,認知症行動障害評価表は転倒予測として有用であることも示唆される。高齢者の転倒は転倒恐怖心を生むなどリハビリテーションの妨げとなるが,認知機能が低下している高齢者の行動は予測が難しく,転倒の危険性は高い。各病院が看護協会の推進により独自の転倒スコアシートを使用しているが,理学療法士としてもそれ以外で転倒予測に有用な方法を考える必要がある。特に理学療法士が移動・動作レベルを評価する際には動作能力だけでなく認知機能や特殊な行動パターンを把握しておくことが転倒転落を減らすことにつながると考える。
【理学療法研究としての意義】
超高齢社会が進み,理学療法士として患者の病棟における動作レベルの評価が適切に出来ていなければ,その後の在宅生活を想定しての評価・考察は難しいと考える。まず病棟における転倒転落を減らすために転倒転落に対しての要因を報告し,各職種間で協力していくことが必要だと考える。
超高齢社会を迎え,回復期リハビリテーション病棟では理学療法士,作業療法士,看護師等によるチーム医療が推進されている。理学療法士は病棟において患者の移動レベルや各種動作レベルの自立度を評価し看護師に申し送っている。また病室の環境調整等にもリハビリスタッフの意見が多く反映されている。しかし実際に病棟や病室において転倒転落が生じた場合,発見した看介護スタッフが報告し改善策を考えているのが現状である。当院では独自の転倒転落アセスメントシート(以下転倒スコアシート)を基準にあらゆる対策を実施しているが転倒は生じている。病棟における転倒転落を減らすためには,理学療法士が自立度を評価する際,単に動作能力の評価だけではなく,認知症高齢者の行動パターンを把握し実際に行う動作に危険性がないか判断する必要がある。そこで高齢者の転倒転落における患者要因に関して認知症行動障害尺度を参考に検討し,また転倒スコアシートと関連性を調べたので報告する。
【方法】
対象は平成24年6月から1年間で当病棟に入院した70歳以上の運動器疾患30名,脳血管疾患14名,廃用症候群(術後・肺炎等)36名の計80名(男性26名,女性54名),平均年齢84.79±5.69歳,入院時HDS-Rが平均14.78±9.03であった。方法は認知症行動障害評価表を用いて毎月評価を実施し,転倒群(評価数59)と非転倒群(評価数177)を比較した。認知症行動障害評価表は,認知症行動障害尺度(DBD)を参考に転倒につながる不穏行動として①落ち着きがなく,もしくは興奮してやたら手足を動かす,またはベッドから起き上がろうとする,歩き回る ②異食・弄便行為 ③物取られ妄想など,事実に反し妄想・幻覚や思い違いなどと思われる発言や主張をする ④暴言や暴力行為,介助に対し抵抗する ⑤理由もなく大声や金切り声をあげる ⑥同じことを何度も聞く,同じことを尋ねる ⑦無意味な作業⑧食事を拒否する。または食べ過ぎる ⑨自分の世界に閉じこもり,日常的な物事にも関心を持たず,何事にも意欲を示さない ⑩昼夜逆転の10項目を引用し,その頻度を5段階尺度で点数化したものである。また入院月(対象者中72名)の転倒スコアシートと認知症行動障害評価表の関連性を求めた。解析ソフトはSTAT VIEWを使用し,2群間比較はMann-WhitneyのU検定,評価の関連性はSpearmanの順位相関の検定にて解析した。有意水準は全て5%とした。
【説明と同意】
本研究は所属の倫理委員会の承認を得て,患者・患者家族に研究の目的・方法を十分に説明した上で協力の可否を問い,同意書にて同意を得た。
【結果】
認知症行動障害評価表で転倒群が有意に高い点数を示した(p<0.0001)。また10項目中4項目(①,③,⑨,⑩)で転倒群が有意に高い点数を示した(p<0.0001~0.05)。転倒スコアシートと認知症行動障害評価表は相関係数0.517(p<0.0001)と有意な相関関係が認められた。
【考察】
回復期病棟において理学療法士が病棟の移動・動作レベルの自立度を評価する際,特に注意が必要な行動パターンとして,結果より①落ち着きがなく,もしくは興奮してやたら手足を動かす,またはベッドから起き上がろうとする,歩き回る,③物取られ妄想など,事実に反し妄想・幻覚や思い違いなどと思われる発言や主張をする,⑨自分の世界に閉じこもり,日常的な物事にも関心を持たず,何事にも意欲を示さない,⑩昼夜逆転の4項目があげられる。また10項目総点数においても有意差があり,転倒スコアシートとの関連性も認められたことから,認知症行動障害評価表は転倒予測として有用であることも示唆される。高齢者の転倒は転倒恐怖心を生むなどリハビリテーションの妨げとなるが,認知機能が低下している高齢者の行動は予測が難しく,転倒の危険性は高い。各病院が看護協会の推進により独自の転倒スコアシートを使用しているが,理学療法士としてもそれ以外で転倒予測に有用な方法を考える必要がある。特に理学療法士が移動・動作レベルを評価する際には動作能力だけでなく認知機能や特殊な行動パターンを把握しておくことが転倒転落を減らすことにつながると考える。
【理学療法研究としての意義】
超高齢社会が進み,理学療法士として患者の病棟における動作レベルの評価が適切に出来ていなければ,その後の在宅生活を想定しての評価・考察は難しいと考える。まず病棟における転倒転落を減らすために転倒転落に対しての要因を報告し,各職種間で協力していくことが必要だと考える。