第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 教育・管理理学療法 ポスター

その他

2014年5月31日(土) 16:40 〜 17:30 ポスター会場 (教育・管理)

座長:神内擴行(特別養護老人ホームレストフルヴィレッジ)

教育・管理 ポスター

[1288] 廃用症候群に対するリハビリテーション調査(第2報)

浦田修1, 大西正志2, 三宅信之3, 佐藤浩4, 高田誠5, 佐々木良範6 (1.医療法人親仁会みさき病院, 2.高松協同病院, 3.介護老人保健施設志村さつき苑, 4.鶴岡協立リハビリテーション病院, 5.健和会とばた健和病院, 6.生協さくら病院)

キーワード:廃用症候群, 歩行と認知症, リハ効果

【はじめに,目的】2010年の診療報酬改定において,脳血管疾患等リハビリテーション(以下リハ)料は,廃用症候群と廃用症候群以外の二つの体系にして診療報酬に格差を設け,廃用症候群の点数を低くする報酬とした。その背景には,廃用症候群の診断や算定方法,リハの効果の検証等が不十分などの問題点が指摘されているようである。本調査報告である第2報は,昨年第1報(第48回日本理学療法士学術集会)で発表した「廃用症候群に対するリハビリテーション調査(第1報)-大規模多施設共同研究による検討-」の続報であり,1)廃用症候群を発症する以前の状態が歩行群と非歩行群,2)廃用症候群を発症する以前の状態が認知症群と非認知症群のリハ効果の検討でる。なお,第1報では廃用症候群の背景やリハ効果について報告した。
【方法】対象は当会に加盟する病院において,医師よりリハの処方・指示を受けている全ての患者のうち,廃用症候群と診断され,2011年8月1日から31日の期間にリハの処方・指示を受けているか,もしくはリハを実施している患者2,550症例とした。また,20歳以上の成人を対象とし,19歳以下のデータを除外した。調査結果の検証に関しては,SPSSver17を用いてMann-WhitneyのU検定を行った。有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】本調査はヘルシンキ宣言に基づいて,倫理的配慮を行い実施した。全ての患者の調査票,調査の集計・結果等において,個人が特定できないように配慮した。
【結果】1)廃用症候群発症以前の状態が,歩行群と非歩行群のリハ効果の検討 日常生活機能評価指標では,歩行群(n=1,065人)は4点から2点に改善,非歩行群(n=1,153人)は12点から11点に改善し,歩行群が有意に改善した(p<0.001)。BIについては,歩行群(n=806人)は50点から75点に改善,非歩行群(n=850人)は5点から25点に改善し,歩行群が有意に改善した(p<0.001)FIMの運動ADLでは,歩行群(n=371人)は52点から64点に改善,非歩行群(n=508人)は18点から21点に改善し,歩行群が有意に改善した。(p<0.001)。しかし,認知ADLでは,歩行群は26から27点に改善,非歩行群は24から25点に改善したが,有意差はなかった(p<0.311)。FIMの合計では,歩行群は68点から91点に改善,非歩行群は32点から36点に改善し,歩行群が有意に改善した(p<0.001)。また,リハ開始時と調査終了時のADLは,歩行群が明らかにADLの自立度は高かった。2)廃用症候群発症以前の状態が,非認知症群と認知症群のリハ効果の検討 日常生活機能評価指標では,非認知症群(n=572人)は4点から1点に改善,認知症群(n=1,646人)は10点から8点に改善し,非認知症群が有意に改善した(p<0.001)。BIについては,非認知症群(n=430人)は55点から75点に改善,認知症群(n=1,226人)は15点から25点に改善し,非認知症群が有意に改善した(p<0.001)。FIMの運動ADLでは,非認知症群(n=230人)は48から63点に改善,認知症群(n=649人)は24点から32点に改善し,非認知症群が有意に改善した(p<0.007)。しかし,認知ADLでは,非認知症群は29点で改善なく,認知症群(n=649人)も17点で改善なく,有意差はなかった(p<0.686)。FIMの合計では,非認知症群は73点から88点に改善,認知症群(n=649人)は44点から51点に改善し,非認知症群が有意に改善した(p<0.015)。また,リハ開始時と調査終了時のADLは,非認知症群の方が明らかにADL自立度は高かった。
【考察】今回の調査結果より,歩行群のADL自立度はもともと高く,非歩行群より歩行群の方がADLは有意に改善することが確認された。また,非認知症無群のADL自立度はもともと高く,認知症群より非認知症群の方がADLは有意改善する事が確認された。但し,FIMの認知ADLについては,両方の調査で改善は検証できず,その原因等も含めて今後の課題となった。また,本調査結果より廃用症候群の予後予測にも活用できることが考えられた。
【理学療法学研究としての意義】今回の調査結果より,廃用症候群発症後のリハを行っていく上で,予後予測の一助になる事が理学療法研究の意義として考えられる。また,2012年の診療報酬改定の経過の中では,2012年2月10日の中医協の「診療報酬改定に係わる答申書の付帯意見」の中に,「廃用症候群に対する脳血管疾患等リハの実施状況について調査・検証するとともに,その結果を今後の診療報酬改定に反映させること」とあり,今回当会が実施した調査結果も理学療法研究として非常に有用と思われる。