[1289] 亜急性期病床における在院日数制限による影響
キーワード:在宅復帰, 在院日数, FIM
【はじめに,目的】
平成24年度の診療報酬改定により,亜急性病床の在院日数制限が90日から60日に短縮された。30日の大幅な短縮により,今まで以上に早期改善を図り在宅復帰に繋げるかが課題となる。社会保障と税の一体改革案では2025年までに,回復期リハビリテーション病床の在院日数を60日までに短縮を目指すとしている。しかし,本当に退院しても問題ない能力を獲得し在宅に復帰しているのか,まだ改善の余地があるにもかかわらず在院日数制限の影響により退院せざるを得なくなってしまうではないかと考える。そこで今回は,平成23年度の入院患者と平成24年度の入院患者の日常生活動作能力が同等の改善が図れているのかを調査し,在院日数制限による影響を明らかにする事とした。
【方法】
平成23年度~平成24年度の間に当院の亜急性期病床にてリハビリテーションを受けた患者218名を対象とした。
平成23年度群と平成24年度群の2群に分類し,調査項目を患者数,性別,年齢,疾患区分,要介護度,初期時のFunctional Independence Measure(以下,FIM),最終時のFIM,在院日数,在宅復帰率,生活環境(同居者の有無)とし,単変量解析(Mann-WhitneyのU検定,ピアソンのχ2検定)にて2群間の比較を行った。なお,年度別のFIM改善度にはWilcoxonの符号付順位和検定を用いて検討した。単変量解析にて有意差が認められた項目については,多変量解析(ロジスティック重回帰分析)を用いて検討を行った。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づき,当院の倫理委員会の承認を得たものであり,個人が特定できないように個人情報の保護に配慮し実施した。
【結果】
平成23年度の患者数は106名で,男性35名,女性71名,平均年齢78.7±11.1歳であった。疾患区分は脳血管疾患15名,廃用症候群36名,運動器疾患I32名,運動器疾患II23名,呼吸疾患0名であった。初期時のFIM81.0±25.4点,最終時のFIM88.5±26.4点で,平均在院日数は66.7±25.9日,在宅復帰率は87.7%であった。生活環境では同居者有り74名,独居26名,施設6名であった。
平成24年度の患者数は112名で,男性35名,女性77名,平均年齢81.2±9.0歳であった。疾患区分は脳血管疾患9名,廃用症候群48名,運動器疾患I34名,運動器疾患II20名,呼吸疾患1名であった。初期時のFIM87.5±24.0点,最終時のFIM96.8±22.5点で,平均在院日数は50.2±13.2日,在宅復帰率は83.9%であった。生活環境では同居者有り61名,独居33名,施設18名であった。
平成23年度と平成24年度の両群比較では,生活環境,初期時FIM,退院時FIM,在院日数で有意差が認められた。FIM改善度に関しての有意差は認められなかった。在宅復帰を目的変数として,その他を説明変数にて重回帰分析を行った結果,在院日数(P<0.01),退院時FIM(P<0.0254)において有意に関連する要因として抽出された。
【考察】
在宅復帰に関しては,年齢,性別,疾患区分,初期FIM,FIM改善度の関係性は低く,在院日数と最終時FIMが要因として大きい事がわかった。FIM点数が高い事と在宅復帰の関連性は本邦の研究でも数多く報告がある。在院日数についても,関連が深いことがわかった。これは,在院日数が短いことによる疾患要因と環境要因などが考えられる。実際にあった疾患要因としては,骨の癒合状態,疼痛の残存,既往にある内部疾患などのコントロール不足等があった。環境因子としては,介護保険の問題(申請,サービス提供,本人・家族の理解等),家族の事情(要介護者の同居者,理解や受け入れ等),独居等があった。今回分析できていない細かい部分は今後の研究課題である。先行研究においては,退院時FIMが高いことで自宅退院を促し,社会的要因として,独居,要介護家族ありは自宅退院を阻害したという報告もある(伊藤ら2011)。
社会保障と税の一体改革案にもあるように,今後在院日数の短縮はますます進む傾向にある。在院日数の短縮された影響を把握し,安易に早期在宅復帰を図るのではなく,本当に在宅復帰に応じた状態か否かの見極めが必要になる。この事を踏まえつつ,本人・家族,他職種と相談・連携し,環境も十分に整えながらリハビリテーションを進めていくことが重要であると考える。今後はFIMの具体的な点数の指標や環境要因のさらなる分析をしていくことが課題となる。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の結果より,在宅復帰には在院日数と退院時FIMとの関連が強い事がわかった。在院日数削減による影響は今後の急性期・亜急性期・回復期などの在院日数削減に重要であり,入院時のリハビリテーションの質的向上の端緒となりうる。
平成24年度の診療報酬改定により,亜急性病床の在院日数制限が90日から60日に短縮された。30日の大幅な短縮により,今まで以上に早期改善を図り在宅復帰に繋げるかが課題となる。社会保障と税の一体改革案では2025年までに,回復期リハビリテーション病床の在院日数を60日までに短縮を目指すとしている。しかし,本当に退院しても問題ない能力を獲得し在宅に復帰しているのか,まだ改善の余地があるにもかかわらず在院日数制限の影響により退院せざるを得なくなってしまうではないかと考える。そこで今回は,平成23年度の入院患者と平成24年度の入院患者の日常生活動作能力が同等の改善が図れているのかを調査し,在院日数制限による影響を明らかにする事とした。
【方法】
平成23年度~平成24年度の間に当院の亜急性期病床にてリハビリテーションを受けた患者218名を対象とした。
平成23年度群と平成24年度群の2群に分類し,調査項目を患者数,性別,年齢,疾患区分,要介護度,初期時のFunctional Independence Measure(以下,FIM),最終時のFIM,在院日数,在宅復帰率,生活環境(同居者の有無)とし,単変量解析(Mann-WhitneyのU検定,ピアソンのχ2検定)にて2群間の比較を行った。なお,年度別のFIM改善度にはWilcoxonの符号付順位和検定を用いて検討した。単変量解析にて有意差が認められた項目については,多変量解析(ロジスティック重回帰分析)を用いて検討を行った。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づき,当院の倫理委員会の承認を得たものであり,個人が特定できないように個人情報の保護に配慮し実施した。
【結果】
平成23年度の患者数は106名で,男性35名,女性71名,平均年齢78.7±11.1歳であった。疾患区分は脳血管疾患15名,廃用症候群36名,運動器疾患I32名,運動器疾患II23名,呼吸疾患0名であった。初期時のFIM81.0±25.4点,最終時のFIM88.5±26.4点で,平均在院日数は66.7±25.9日,在宅復帰率は87.7%であった。生活環境では同居者有り74名,独居26名,施設6名であった。
平成24年度の患者数は112名で,男性35名,女性77名,平均年齢81.2±9.0歳であった。疾患区分は脳血管疾患9名,廃用症候群48名,運動器疾患I34名,運動器疾患II20名,呼吸疾患1名であった。初期時のFIM87.5±24.0点,最終時のFIM96.8±22.5点で,平均在院日数は50.2±13.2日,在宅復帰率は83.9%であった。生活環境では同居者有り61名,独居33名,施設18名であった。
平成23年度と平成24年度の両群比較では,生活環境,初期時FIM,退院時FIM,在院日数で有意差が認められた。FIM改善度に関しての有意差は認められなかった。在宅復帰を目的変数として,その他を説明変数にて重回帰分析を行った結果,在院日数(P<0.01),退院時FIM(P<0.0254)において有意に関連する要因として抽出された。
【考察】
在宅復帰に関しては,年齢,性別,疾患区分,初期FIM,FIM改善度の関係性は低く,在院日数と最終時FIMが要因として大きい事がわかった。FIM点数が高い事と在宅復帰の関連性は本邦の研究でも数多く報告がある。在院日数についても,関連が深いことがわかった。これは,在院日数が短いことによる疾患要因と環境要因などが考えられる。実際にあった疾患要因としては,骨の癒合状態,疼痛の残存,既往にある内部疾患などのコントロール不足等があった。環境因子としては,介護保険の問題(申請,サービス提供,本人・家族の理解等),家族の事情(要介護者の同居者,理解や受け入れ等),独居等があった。今回分析できていない細かい部分は今後の研究課題である。先行研究においては,退院時FIMが高いことで自宅退院を促し,社会的要因として,独居,要介護家族ありは自宅退院を阻害したという報告もある(伊藤ら2011)。
社会保障と税の一体改革案にもあるように,今後在院日数の短縮はますます進む傾向にある。在院日数の短縮された影響を把握し,安易に早期在宅復帰を図るのではなく,本当に在宅復帰に応じた状態か否かの見極めが必要になる。この事を踏まえつつ,本人・家族,他職種と相談・連携し,環境も十分に整えながらリハビリテーションを進めていくことが重要であると考える。今後はFIMの具体的な点数の指標や環境要因のさらなる分析をしていくことが課題となる。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の結果より,在宅復帰には在院日数と退院時FIMとの関連が強い事がわかった。在院日数削減による影響は今後の急性期・亜急性期・回復期などの在院日数削減に重要であり,入院時のリハビリテーションの質的向上の端緒となりうる。