第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 教育・管理理学療法 ポスター

その他

Sat. May 31, 2014 4:40 PM - 5:30 PM ポスター会場 (教育・管理)

座長:神内擴行(特別養護老人ホームレストフルヴィレッジ)

教育・管理 ポスター

[1290] 高齢者が罹患している疾患において理学療法専門領域研究部会に該当する疾患の割合の報告

道口康二郎, 佐原由希子, 深堀ユリエアリーシア, 南太貴, 川越陽介, 酒井康成, 江島美希, 杉本紘介, 請田咲紀, 山下将毅, 井上美沙, 田村美由紀, 橋本誠, 力武宏樹, 松田朋子 (医療法人和仁会和仁会病院)

Keywords:高齢者, 疾患, 理学療法専門領域研究部会

【はじめに】
超高齢社会を迎え,リハビリテーション医療の流れは急性期から回復期,回復期から維持期の連携を中心に実施されている。その中でも回復期リハビリテーション病棟では,理学療法士,作業療法士,看護師等によるチーム医療が推進され,その役割は重要である。実際に回復期病棟へ入棟する対象者は高齢化及び重度化しており,高齢者の現状を臨床的に示していくことは重要な課題でもある。回復期病棟における高齢者の理学療法は,回復期対象疾患に対して処方されるが,その対象者の既往歴や基礎疾患,合併症などを考慮しながら医師の指示により実施しているのが現状である。医師の世界では各専門医の制度があり,その分野ごとの研究成果が臨床へ応用されている。しかし高齢者の理学療法においては,臨床的な現状を示していく上で既往歴や基礎疾患,合併症などが複数疾患存在し,対象者を疾患別に分類することは難しい。そこで今回当院入院患者の高齢者を対象に,理学療法の専門領域研究部会に該当する疾患がどの程度重複しているのかを調査したので結果を報告する。
【方法】
対象は平成24年6月から1年間で当病棟に入院した70歳以上の運動器疾患30名,脳血管疾患14名,廃用症候群(術後・肺炎等)36名の計80名(男性26名,女性54名),平均年齢84.79±5.69歳である。方法は後方視的にカルテより回復期対象疾患,既往歴,基礎疾患,合併症を収集し,理学療法専門領域研究部会に該当する疾患に分類,疾患が重複した割合を算出した。なお専門領域研究部会に該当する疾患の基準は,日本理学療法士協会が提示している「専門領域研究部会における認定理学療法士の名称」中の定義を参考にした。
【説明と同意】
本研究は所属の倫理委員会の承認を得て,患者・患者家族に研究の目的・方法を十分に説明した上で協力の可否を問い,同意書にて同意を得た。
【結果】
総疾患数は895疾患であった。専門領域研究部会の該当疾患は396疾患であり,神経理学療法研究部会の該当疾患(以下脳神経疾患)が49疾患,運動器理学療法研究部会の該当疾患(以下運動器疾患)が180疾患,内部障害理学療法研究部会の該当疾患(以下内部障害)が167疾患であった。専門領域研究部会の該当疾患において対象者の重複疾患数は中央値が4疾患(最大値16疾患・最小値1疾患)であり,平均は4.96疾患であった。重複していた割合は96%,割合が多い順に運動器疾患と内部障害の重複27名(34%),脳神経疾患と運動器疾患と内部障害の重複26名(32%),脳神経疾患と内部障害の重複10名(13%),運動器疾患のみの重複9名(11%),脳神経疾患と運動器疾患の重複3名(4%),内部障害のみの重複2名(2%)であった。重複がなかったのは3名(4%)であった。
【考察】
高齢者の理学療法における臨床的知見を示していくことは重要なことである。高齢者は多くの疾患を長期にわたり罹患している状態であり,臨床現場では一つの疾患だけに対応するのではなく,複数の疾患による影響を統合して理学療法を実施する能力が求められる。今回の結果から,総疾患数が895疾患であり,日本理学療法士協会が提示している専門領域研究部会に該当する疾患が369疾患であった。また96%が重複して疾患に罹患しており,特に内部障害に罹患し運動器疾患や脳神経疾患と重複しているケースが全体の79%であった。実際に内部障害では肺炎,糖尿病,心不全などが多く,運動器疾患では変形性膝関節症,大腿骨頸部骨折,圧迫骨折などが多く,脳神経疾患では脳梗塞,脳出血が多かった。高齢者においては一つ一つの疾患だけでも重篤になりえる疾患であり,慢性化することもある。このような疾患を複数重複して罹患している状態の対象者を疾患別に分類し,疾患別の理学療法として臨床的な知見を示していくことは難しいと考える。
【理学療法研究としての意義】
高齢者の理学療法はリハビリテーション全体において重要な位置付けとなる。研究では専門領域に分類し各疾患に対する探究は必要であるが,臨床では複数の疾患による影響を統合して理学療法を実施する能力が必要である。理学療法が専門領域研究部会に分かれる流れの中,臨床と研究のギャップを埋めることが重要であり,さらに疾患が重複している高齢者の理学療法をどのように探究していくのか考えていく必要がある。