[1291] 膝関節屈曲に伴う大腿骨顆部後方移動量と半月板後方移動量の関連性
キーワード:半月板, 大腿骨顆部, CKC
【はじめに,目的】
臨床上,膝関節疾患症例においてopen-kinetic-chain(OKC)にて可動域制限が消失しても,しゃがみ込み動作などのclosed-kinetic-chain(CKC)で制限や疼痛がある症例を経験する。このような症例の制限因子の一つとして半月板の運動性の欠如などが挙げられている。また大腿骨顆部と半月板の動態について,半月板の移動は大腿骨顆部の動きに従うとされているが,CKCの深屈曲域における大腿骨顆部移動量と半月板動態の関連性についての報告は少ない。そこで,本研究の目的はMRIで撮影可能なしゃがみ込み動作に類似した側臥位CKCを用い,大腿骨顆部後方移動量と半月板後節後方移動量の関連性について検討することである。
【方法】
対象は健常男性12名,利き足側12膝とした。平均年齢26.3(22-36)歳,平均身長167.4(±6.0)cm,平均体重61.0(±4.0)kgであった。MRI装置は日立メディコ社製AIRISII(open chamber型,0.3Tesla)を用い,T1強調,5mm幅のsagittal像を撮影した。被験者は利き足下側臥位で,膝関節0°,90°,側臥位最大屈曲位の3肢位を撮影した。また,自家製固定装置に足部を固定し,屈曲位ではしゃがみ込み足部に体幹が近づくように指示した。読影スライスは,内側半月板(MM),外側半月板(LM)共に辺縁から半月板が初めて二つに分かれたところと規定した。大腿骨顆部後方移動量は大腿骨顆部後面円中心から脛骨関節面上へおろした垂線と脛骨後縁との距離から各関節角度間の内側顆,外側顆後方移動量を算出した。半月板後節後方移動量は,脛骨関節面に対し脛骨後縁を通る垂線を引き,そこからMM,LM後節の遊離縁までの距離から各関節角度間のMM,LM後節の後方移動量を算出した。肢位設定,撮影および計測は当院理学療法士および放射線技師にて行い同一験者とした。計測は3回計測しその平均値を算出した。3回計測した値から得られた検者内信頼性ICC(1.3)は1.00であった。検討項目は大腿骨内側顆後方移動量とMM半月板後節後方移動量の関連性と大腿骨外側顆後方移動量とLM半月板後節後方移動量の関連性とした。統計学的処理はSPSS ver12.0 for Widowsを用いpearsonの相関係数およびspearmanの相関係数を算出し,有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は船橋整形外科病院倫理委員会第20110210号の認証を得て行った。被験者に対しては,研究の全過程において倫理的な配慮や人権擁護がなされていることを十分に説明し同意を得ている。
【結果】
大腿骨内側顆後方移動量とMM後節後方移動量において,膝関節0°から90°では有意な相関は認められなかったが,90°から最大屈曲位では相関係数0.62で有意な相関が認められた(P<0.05)。大腿骨外側顆後方移動量とLM後節後方移動量において,膝関節0°から90°では相関係数0.62,90°から最大屈曲位では相関係数0.87で有意な相関が認められた(P<0.05)。
【考察】
健常膝のMRIを用いた大腿脛骨関節の動態に関する報告として,Nakagawaらは膝関節90°屈曲位から正座位までで大腿骨内側顆6.5mm,外側顆28mm後方移動すると報告している。また,半月板の動態に関する報告は,Vediらが膝関節0°から90°まででは非荷重位に比べ荷重位でLM前角の後方移動量が有意に大きかったと報告している。本研究結果から側臥位CKCにて半月板後節の後方移動量は大腿骨顆部後方移動量と有意な相関関係が認められ,大腿骨顆部移動量が大きいほど半月板後節の後方移動量も大きいことが示された。特に90°から最大屈曲位まではMM後節,LM後節ともに有意な相関関係を認めていたことからしゃがみ込み動作に制限が認められる症例に対し,膝関節の屈伸および回旋可動域の評価だけでなく,半月板動態を考慮した大腿骨顆部後方移動量の評価およびアプローチの重要性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
本研究結果から体表からでは特殊な機器を用いずに評価することが困難な半月板の動態と大腿骨顆部後方移動量の動態に関連性が認められたことから,臨床において大腿骨顆部移動量の評価とアプローチが半月板動態の推察やしゃがみ込み動作改善への一助となる可能性が示唆された。
臨床上,膝関節疾患症例においてopen-kinetic-chain(OKC)にて可動域制限が消失しても,しゃがみ込み動作などのclosed-kinetic-chain(CKC)で制限や疼痛がある症例を経験する。このような症例の制限因子の一つとして半月板の運動性の欠如などが挙げられている。また大腿骨顆部と半月板の動態について,半月板の移動は大腿骨顆部の動きに従うとされているが,CKCの深屈曲域における大腿骨顆部移動量と半月板動態の関連性についての報告は少ない。そこで,本研究の目的はMRIで撮影可能なしゃがみ込み動作に類似した側臥位CKCを用い,大腿骨顆部後方移動量と半月板後節後方移動量の関連性について検討することである。
【方法】
対象は健常男性12名,利き足側12膝とした。平均年齢26.3(22-36)歳,平均身長167.4(±6.0)cm,平均体重61.0(±4.0)kgであった。MRI装置は日立メディコ社製AIRISII(open chamber型,0.3Tesla)を用い,T1強調,5mm幅のsagittal像を撮影した。被験者は利き足下側臥位で,膝関節0°,90°,側臥位最大屈曲位の3肢位を撮影した。また,自家製固定装置に足部を固定し,屈曲位ではしゃがみ込み足部に体幹が近づくように指示した。読影スライスは,内側半月板(MM),外側半月板(LM)共に辺縁から半月板が初めて二つに分かれたところと規定した。大腿骨顆部後方移動量は大腿骨顆部後面円中心から脛骨関節面上へおろした垂線と脛骨後縁との距離から各関節角度間の内側顆,外側顆後方移動量を算出した。半月板後節後方移動量は,脛骨関節面に対し脛骨後縁を通る垂線を引き,そこからMM,LM後節の遊離縁までの距離から各関節角度間のMM,LM後節の後方移動量を算出した。肢位設定,撮影および計測は当院理学療法士および放射線技師にて行い同一験者とした。計測は3回計測しその平均値を算出した。3回計測した値から得られた検者内信頼性ICC(1.3)は1.00であった。検討項目は大腿骨内側顆後方移動量とMM半月板後節後方移動量の関連性と大腿骨外側顆後方移動量とLM半月板後節後方移動量の関連性とした。統計学的処理はSPSS ver12.0 for Widowsを用いpearsonの相関係数およびspearmanの相関係数を算出し,有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は船橋整形外科病院倫理委員会第20110210号の認証を得て行った。被験者に対しては,研究の全過程において倫理的な配慮や人権擁護がなされていることを十分に説明し同意を得ている。
【結果】
大腿骨内側顆後方移動量とMM後節後方移動量において,膝関節0°から90°では有意な相関は認められなかったが,90°から最大屈曲位では相関係数0.62で有意な相関が認められた(P<0.05)。大腿骨外側顆後方移動量とLM後節後方移動量において,膝関節0°から90°では相関係数0.62,90°から最大屈曲位では相関係数0.87で有意な相関が認められた(P<0.05)。
【考察】
健常膝のMRIを用いた大腿脛骨関節の動態に関する報告として,Nakagawaらは膝関節90°屈曲位から正座位までで大腿骨内側顆6.5mm,外側顆28mm後方移動すると報告している。また,半月板の動態に関する報告は,Vediらが膝関節0°から90°まででは非荷重位に比べ荷重位でLM前角の後方移動量が有意に大きかったと報告している。本研究結果から側臥位CKCにて半月板後節の後方移動量は大腿骨顆部後方移動量と有意な相関関係が認められ,大腿骨顆部移動量が大きいほど半月板後節の後方移動量も大きいことが示された。特に90°から最大屈曲位まではMM後節,LM後節ともに有意な相関関係を認めていたことからしゃがみ込み動作に制限が認められる症例に対し,膝関節の屈伸および回旋可動域の評価だけでなく,半月板動態を考慮した大腿骨顆部後方移動量の評価およびアプローチの重要性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
本研究結果から体表からでは特殊な機器を用いずに評価することが困難な半月板の動態と大腿骨顆部後方移動量の動態に関連性が認められたことから,臨床において大腿骨顆部移動量の評価とアプローチが半月板動態の推察やしゃがみ込み動作改善への一助となる可能性が示唆された。