[1302] ACL再建術前・後におけるスポーツレベルを考慮した膝筋力の目標値の検討
Keywords:膝前十字靭帯, 膝筋力, 目標値
【はじめに】我々は,膝前十字靱帯(ACL)再建術前後の膝筋力の評価は,健患比に加え,健側・患側各々のピークトルク体重比(体重比)での評価も重要であることを述べてきた。そして臨床上,体重比はスポーツレベル毎に異なる傾向があると感じている。そこで今回,ACL再建術前・術後の体重比をスポーツレベル間で比較検討し,スポーツレベルを考慮した筋力の目標値を設定することを目的として調査を行った。
【対象と方法】対象は2010年から2012年の3年間に,当院スポーツ整形外科で半腱様筋・薄筋腱による解剖学的二重束再建法によるACL再建術を施行した症例である。症例数は,術前580例(男性:291例,29.0±2.8歳,体重70.7±1.9kg,女性:289例,24.9±6.1歳,体重56.3±1.2kg),術後5か月(5M)793例(男性:389例,28.6±3.2歳,体重71.5±2.9kg,女性:404例,24.7±5.8歳,体重56.4±1.2kg),術後8か月(8M)668例(男性:306例,29.7±3.3歳,体重69.9±1.4kg,女性:362例,24.7±5.8歳,体重56.6±1.1kg)であった。
スポーツレベルは,カテゴリー1(C1:運動しない,趣味レベル下級),カテゴリー2(C2:趣味レベル上級,地方大会レベル),カテゴリー3(C3:全国大会レベル,プロ)の3群に分類した。筋力測定はBiodex System3を用い,術前・5M・8Mにおける膝伸展筋力(Q),屈曲筋力(H)の健側および患側における60deg/secの体重比(Nm/kg)を計測した。以上の項目において男女別に各カテゴリー間で,術前・5M・8Mにおいて1)健側,患側Qの体重比の平均値,2)健側,患側Hの体重比の平均値を比較した。統計にはANOVAと多重比較法(Tukey)を用い,平均値の差の検定を行った。データ解析は,統計ソフトDr.SPSS IIを使用し,有意水準はP<0.05とした。
【倫理的配慮】本研究は,事前に対象者に十分な説明を行い,書面による同意を得て行った。
【結果:男性】1)健側Q 術前は,C1:2.57,C2:2.67,C3:2.72。5MはC1:2.76,C2:2.90,C3:2.98。8MはC1:2.81,C2:2.95,C3:3.15。
有意差は,5MのC1とC2,C3間,8MのC1とC3間に認められた。
患側Q 術前は,C1:2.02,C2:2.11,C3:2.27。5MはC1:2.01,C2:2.15,C3:2.42。8MはC1:2.28,C2:2.55,C3:2.78。
有意差は,5MでC1とC3間,C2とC3間に,8MでC1とC2,C1とC3間に認められた。
2)健側H 術前はC1:1.23,C2:1.20,C3:1.24。5MはC1:1.26,C2:1.38,C3:1.45。8Mは,C1:1.36,C2:1.50,C3:1.59。
有意差は,5MのC1とC2,C3間と8MのC1とC2,C3間に認められた。
患側H 術前は,C1:0.96,C2:1.05,C3:1.00。5MはC1:1.07,C2:1.15,C3:1.22。8MはC1:1.12,C2:1.28,C3:1.46。
有意差は,5MのC1とC2,C3間に,8MのC1とC2,C3間に認められた。
【結果:女性】1)健側Q 術前は,C1:1.99,C2:2.21,C3:2.48。5MではC1:2.20,C2:2.50,C3:2.47。8MはC1:2.29,C2:2.46,C3:2.52。
有意差は,術前のC1とC2,C3間,C2とC3間に,5MのC1とC2,C3間に,8MのC1とC2,C3間に認められた。
患側Q 術前は,C1:1.52,C2:1.69,C3:1.76。5MはC1:1.54,C2:1.88,C3:2.03。8MはC1:1.73,C2:2.07,C3:2.20。
有意差は術前のC1とC2間に,5MのC1とC2,C3間に,8MのC1とC2,C3間に認められた。
2)健側H 術前はC1:0.86,C2:0.98,C3:1.08。5MはC1:0.96,C2:1.10,C3:1.19。8Mは,C1:1.09,C2:1.17,C3:1.27。
有意差は,8MのC1とC2,C3間に認められた。
患側H 術前は,C1:0.72,C2:0.79,C3:0.88。5MはC1:0.80,C2:0.94,C3:1.05。8MはC1:0.90,C2:1.03,C3:1.13。
有意差は,術前,5M,8MのC1とC2,C3間に認められた。
【考察】ACL再建術後のスポーツ復帰時期の指標になる筋力評価は,健患比80%以上という報告が多く,8カ月復帰を目標にしている当院でも健患比を復帰の指標にしている。しかし健患比だけでは純粋な健側,患側の筋力の回復を評価することは難しく,復帰時期の体重比の明確な目標値が提示されている報告は少ない。原らは,術後3か月以降の体重比をQが2.5,Hが1.5,健患差の消失を6か月復帰の目標としている。今回我々の研究では男女ともC1とC2,C3間に差があった。このことからスポーツレベルにより患側では筋力の回復に差があり,健側では筋力差があることがわかった。また,スポーツレベル毎に具体的な数値を出すことにより,症例ごとに目標設定を行うことが可能となる。今後さらに運動種目による筋力の値を調査し,より詳細な目標設定を提示できるようにしたい。
【理学療法学研究としての意義】
今回の結果から,健患比とともにレベルにあったスポーツ復帰への具体的な数値目標を患者様に提供していけると考える。
【対象と方法】対象は2010年から2012年の3年間に,当院スポーツ整形外科で半腱様筋・薄筋腱による解剖学的二重束再建法によるACL再建術を施行した症例である。症例数は,術前580例(男性:291例,29.0±2.8歳,体重70.7±1.9kg,女性:289例,24.9±6.1歳,体重56.3±1.2kg),術後5か月(5M)793例(男性:389例,28.6±3.2歳,体重71.5±2.9kg,女性:404例,24.7±5.8歳,体重56.4±1.2kg),術後8か月(8M)668例(男性:306例,29.7±3.3歳,体重69.9±1.4kg,女性:362例,24.7±5.8歳,体重56.6±1.1kg)であった。
スポーツレベルは,カテゴリー1(C1:運動しない,趣味レベル下級),カテゴリー2(C2:趣味レベル上級,地方大会レベル),カテゴリー3(C3:全国大会レベル,プロ)の3群に分類した。筋力測定はBiodex System3を用い,術前・5M・8Mにおける膝伸展筋力(Q),屈曲筋力(H)の健側および患側における60deg/secの体重比(Nm/kg)を計測した。以上の項目において男女別に各カテゴリー間で,術前・5M・8Mにおいて1)健側,患側Qの体重比の平均値,2)健側,患側Hの体重比の平均値を比較した。統計にはANOVAと多重比較法(Tukey)を用い,平均値の差の検定を行った。データ解析は,統計ソフトDr.SPSS IIを使用し,有意水準はP<0.05とした。
【倫理的配慮】本研究は,事前に対象者に十分な説明を行い,書面による同意を得て行った。
【結果:男性】1)健側Q 術前は,C1:2.57,C2:2.67,C3:2.72。5MはC1:2.76,C2:2.90,C3:2.98。8MはC1:2.81,C2:2.95,C3:3.15。
有意差は,5MのC1とC2,C3間,8MのC1とC3間に認められた。
患側Q 術前は,C1:2.02,C2:2.11,C3:2.27。5MはC1:2.01,C2:2.15,C3:2.42。8MはC1:2.28,C2:2.55,C3:2.78。
有意差は,5MでC1とC3間,C2とC3間に,8MでC1とC2,C1とC3間に認められた。
2)健側H 術前はC1:1.23,C2:1.20,C3:1.24。5MはC1:1.26,C2:1.38,C3:1.45。8Mは,C1:1.36,C2:1.50,C3:1.59。
有意差は,5MのC1とC2,C3間と8MのC1とC2,C3間に認められた。
患側H 術前は,C1:0.96,C2:1.05,C3:1.00。5MはC1:1.07,C2:1.15,C3:1.22。8MはC1:1.12,C2:1.28,C3:1.46。
有意差は,5MのC1とC2,C3間に,8MのC1とC2,C3間に認められた。
【結果:女性】1)健側Q 術前は,C1:1.99,C2:2.21,C3:2.48。5MではC1:2.20,C2:2.50,C3:2.47。8MはC1:2.29,C2:2.46,C3:2.52。
有意差は,術前のC1とC2,C3間,C2とC3間に,5MのC1とC2,C3間に,8MのC1とC2,C3間に認められた。
患側Q 術前は,C1:1.52,C2:1.69,C3:1.76。5MはC1:1.54,C2:1.88,C3:2.03。8MはC1:1.73,C2:2.07,C3:2.20。
有意差は術前のC1とC2間に,5MのC1とC2,C3間に,8MのC1とC2,C3間に認められた。
2)健側H 術前はC1:0.86,C2:0.98,C3:1.08。5MはC1:0.96,C2:1.10,C3:1.19。8Mは,C1:1.09,C2:1.17,C3:1.27。
有意差は,8MのC1とC2,C3間に認められた。
患側H 術前は,C1:0.72,C2:0.79,C3:0.88。5MはC1:0.80,C2:0.94,C3:1.05。8MはC1:0.90,C2:1.03,C3:1.13。
有意差は,術前,5M,8MのC1とC2,C3間に認められた。
【考察】ACL再建術後のスポーツ復帰時期の指標になる筋力評価は,健患比80%以上という報告が多く,8カ月復帰を目標にしている当院でも健患比を復帰の指標にしている。しかし健患比だけでは純粋な健側,患側の筋力の回復を評価することは難しく,復帰時期の体重比の明確な目標値が提示されている報告は少ない。原らは,術後3か月以降の体重比をQが2.5,Hが1.5,健患差の消失を6か月復帰の目標としている。今回我々の研究では男女ともC1とC2,C3間に差があった。このことからスポーツレベルにより患側では筋力の回復に差があり,健側では筋力差があることがわかった。また,スポーツレベル毎に具体的な数値を出すことにより,症例ごとに目標設定を行うことが可能となる。今後さらに運動種目による筋力の値を調査し,より詳細な目標設定を提示できるようにしたい。
【理学療法学研究としての意義】
今回の結果から,健患比とともにレベルにあったスポーツ復帰への具体的な数値目標を患者様に提供していけると考える。