[1305] 高校女子バスケットボール選手における股関節外転・内転筋力と敏捷性動作との関連性
キーワード:股関節, 敏捷性, バスケットボール
【はじめに,目的】
下肢における一側優位性の観点から,高校女子バスケットボール選手の股関節外転・内転筋力における利き脚・軸脚の比較と敏捷性動作への関連性を調査し,その結果を基にトレーニングおよび傷害予防策構築へ示唆を与えることを目的とする。
【方法】
対象は県大会出場レベルの高校女子バスケットボール選手12名(身長159.5±3.9cm,体重54.4±5.9kg,体脂肪率21.9±3.0%)。測定項目は股関節最大等尺性筋力(外転・内転),パフォーマンステスト(20mスプリント5×10m切り返し往復走・5×10m前後往復走・反復横跳び・マルチステージフィットネステスト)。最大等尺性筋力は,徒手筋力測定器(MicroFET2.Hoggan Health社製)を用いて,Danielsの測定法(Hislop et al. 2008)に準じて実施した。尚,ボールを左右で蹴り,蹴りやすい脚を利き脚,非利き脚を軸脚とした。解析は(1)股関節最大等尺性筋力における利き脚・軸脚での比較(対応のあるT検定),(2)利き脚・軸脚における股関節最大等尺性筋力とパフォーマンステストとの関連性(ピアソンの積率相関係数)を検証した。有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は対象者全員および家族に十分な説明を行い,同意を得た上で測定を実施し,倫理的配慮に基づきデータを取り扱った。
【結果】
(1)股関節最大等尺性筋力において,いずれも利き脚・軸脚で有意差は認められなかったが,外転筋力(利き足:1.96Nm/kg,軸足:1.89Nm/kg。p=0.06),内転筋力(利き足:1.82Nm/kg,軸足:2.00Nm/kg。p=0.11),内転/外転筋力(利き足:0.94,軸足:1.07。p=0.06)で異なる傾向を認めた。(2)利き脚または軸脚において,股関節最大等尺性筋力とパフォーマンステストとの相関係数で有意差が認められた項目を以下に示す。20mスプリントでは内転/外転筋力(利き脚)(r=-0.75。p=0.00)。切り返し往復走では内転筋力(軸脚)(r=-0.62。p=0.03),内転/外転(利き脚)(r=-0.58。p=0.05)。前後往復走では内転/外転(利き脚)(r=-0.85。p=0.00)。反復横跳びでは内転筋力(利き脚)(r=0.81。p=0.00),内転筋力(軸脚)(r=0.63。p=0.04),内転/外転(利き脚)(r=-0.62。p=0.04)。
【考察】
股関節外転・内転筋力と各種敏捷性動作に高い関連性が認められ,特に利き脚側の内転筋力あるいは内転/外転筋力は顕著であった。運動学的には,内転筋群は他の股関節周囲筋群と協働して前方あるいは後方へのキック動作,側方方向転換時の踏み変え動作に対し貢献する特性を持つ。そのため本研究で実施された課題に対し,股関節内転筋力は高校女子バスケットボール選手において重要な因子と考えられる。また,利き脚は下肢の一側優位性の観点から巧緻性(石津。2011)や移動機能(大谷。1984)が高く,本研究で実施された課題に対しても利き脚は軸脚よりも強い影響を与えたと考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
今回の対象である高校女子バスケットボール選手は他競技と比較して膝ACL損傷発生率が高く,非接触性受傷に限れば軸足の割合が高い(井原。2005)。このことは下肢の一側優位性が競技動作に反映されていると容易に想像される。しかしながら,本邦ではその知見を生かした介入に関する報告は渉猟した限り見当たらない。本研究はバスケットボール競技に反映される下肢の一側優位性に関して,高校生女子の特徴を明らかにした。このことは受傷後あるいは術後リハビリテーション,傷害予防トレーニング,加えて競技復帰後のパフォーマンス向上における股関節筋力強化の目標設定に貢献する重要な資料になりうると考えられる。
下肢における一側優位性の観点から,高校女子バスケットボール選手の股関節外転・内転筋力における利き脚・軸脚の比較と敏捷性動作への関連性を調査し,その結果を基にトレーニングおよび傷害予防策構築へ示唆を与えることを目的とする。
【方法】
対象は県大会出場レベルの高校女子バスケットボール選手12名(身長159.5±3.9cm,体重54.4±5.9kg,体脂肪率21.9±3.0%)。測定項目は股関節最大等尺性筋力(外転・内転),パフォーマンステスト(20mスプリント5×10m切り返し往復走・5×10m前後往復走・反復横跳び・マルチステージフィットネステスト)。最大等尺性筋力は,徒手筋力測定器(MicroFET2.Hoggan Health社製)を用いて,Danielsの測定法(Hislop et al. 2008)に準じて実施した。尚,ボールを左右で蹴り,蹴りやすい脚を利き脚,非利き脚を軸脚とした。解析は(1)股関節最大等尺性筋力における利き脚・軸脚での比較(対応のあるT検定),(2)利き脚・軸脚における股関節最大等尺性筋力とパフォーマンステストとの関連性(ピアソンの積率相関係数)を検証した。有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は対象者全員および家族に十分な説明を行い,同意を得た上で測定を実施し,倫理的配慮に基づきデータを取り扱った。
【結果】
(1)股関節最大等尺性筋力において,いずれも利き脚・軸脚で有意差は認められなかったが,外転筋力(利き足:1.96Nm/kg,軸足:1.89Nm/kg。p=0.06),内転筋力(利き足:1.82Nm/kg,軸足:2.00Nm/kg。p=0.11),内転/外転筋力(利き足:0.94,軸足:1.07。p=0.06)で異なる傾向を認めた。(2)利き脚または軸脚において,股関節最大等尺性筋力とパフォーマンステストとの相関係数で有意差が認められた項目を以下に示す。20mスプリントでは内転/外転筋力(利き脚)(r=-0.75。p=0.00)。切り返し往復走では内転筋力(軸脚)(r=-0.62。p=0.03),内転/外転(利き脚)(r=-0.58。p=0.05)。前後往復走では内転/外転(利き脚)(r=-0.85。p=0.00)。反復横跳びでは内転筋力(利き脚)(r=0.81。p=0.00),内転筋力(軸脚)(r=0.63。p=0.04),内転/外転(利き脚)(r=-0.62。p=0.04)。
【考察】
股関節外転・内転筋力と各種敏捷性動作に高い関連性が認められ,特に利き脚側の内転筋力あるいは内転/外転筋力は顕著であった。運動学的には,内転筋群は他の股関節周囲筋群と協働して前方あるいは後方へのキック動作,側方方向転換時の踏み変え動作に対し貢献する特性を持つ。そのため本研究で実施された課題に対し,股関節内転筋力は高校女子バスケットボール選手において重要な因子と考えられる。また,利き脚は下肢の一側優位性の観点から巧緻性(石津。2011)や移動機能(大谷。1984)が高く,本研究で実施された課題に対しても利き脚は軸脚よりも強い影響を与えたと考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
今回の対象である高校女子バスケットボール選手は他競技と比較して膝ACL損傷発生率が高く,非接触性受傷に限れば軸足の割合が高い(井原。2005)。このことは下肢の一側優位性が競技動作に反映されていると容易に想像される。しかしながら,本邦ではその知見を生かした介入に関する報告は渉猟した限り見当たらない。本研究はバスケットボール競技に反映される下肢の一側優位性に関して,高校生女子の特徴を明らかにした。このことは受傷後あるいは術後リハビリテーション,傷害予防トレーニング,加えて競技復帰後のパフォーマンス向上における股関節筋力強化の目標設定に貢献する重要な資料になりうると考えられる。