[1333] Neuromyelitis Optica(NMO)に対する理学療法戦略
Keywords:Neuromyelitis Optica(NMO), 治療ガイドライン, 理学療法
【はじめに,目的】
NMOは視神経炎と脊髄炎を中核とする中枢神経の炎症性疾患であり,無治療の場合には重篤な視力障害および横断性脊髄症を反復する。脊髄MRIで脊髄中心部から広がる3椎体長以上にわたる連続性病変が特徴であり,重篤な運動機能障害を併発することも多い。NMOは多発性硬化症(MS)とは異なり,血清中の抗アクアポリン4抗体(NMO-IgG)が特異的診断マーカーとして存在するため,治療としては,急性期より免疫吸着療法(IAPP)を選択されることが多い。本疾患に対する理学療法は早期より実施される機会が増えてきているが,確立した理学療法指針は示されていない。またMSやNMO治療ガイドラインには,理学療法を含むリハビリテーション(以下リハビリ)は含まれていないことから,本疾患領域での理学療法の有用性そのものから示していくことが責務であると考える。
今回,急性期治療と平行した理学療法実践経験を通じて,理学療法の必要性および介入指針について考察した。
【方法】
当院でNMOと診断された女性3例を対象とした。全例とも入院後早期よりIAPPを施行され,急性期治療と平行して理学療法を実施した。評価項目としては入院時,治療(IAAP)終了時,転帰時の1)EDSS,2)BI,3)下肢筋力:股関節屈筋・膝関節伸筋(以下股屈筋・膝伸筋),4)理学療法アプローチであり,診療録より後方視的に調査した。
症例A(44歳・女性):罹患期間3か月,入院期間48日間,転帰自宅退院
症例B(55歳・女性):罹患期間1年,入院期間51日間,転帰自宅退院
症例C(59歳・女性):罹患期間4年,入院期間53日間,転帰リハビリ転院
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究調査に関しては,当院の臨床研究ガイドラインに則って,対象者からの評価全般に関する説明と同意を得たうえで,個人情報については匿名化した。
【結果】
1)EDSS:症例Aでは入院時7.0,治療終了時6.5,転帰時4.5であった。症例Bでは入院時8.5,治療終了時7.0,転帰時5.5であった。また症例Cでは入院時8.5,治療終了時7.5,転帰時7.0であった。
2)BI:症例Aでは入院時60,治療終了時70,転帰時95であった。症例Bでは入院時25,治療終了時55,転帰時95であった。症例Cでは入院時25,治療終了時45,転帰時70であった。
3)下肢筋力:症例Aでは入院時股屈筋4/5,膝伸筋4/5,治療終了時股屈筋4+/5,膝伸筋4+/5,転帰時股屈筋5/5,膝伸筋5/5であった。症例Bでは入院時股屈筋2-/4,膝伸筋0/4,治療終了時股屈筋3+/4,膝伸筋4-/4,転帰時股屈筋4/5,膝伸筋4/5であった。症例Cでは入院時股屈筋1/4-,膝伸筋1/4-,治療終了時股屈筋1+/4,膝伸筋2+/4,転帰時股屈筋3+/4+,膝伸筋4/5であった。
4)理学療法アプローチ:3症例とも,IAPP治療中は,カテーテルや尿バルーンの影響を考慮し,ベッド上での関節可動域練習や下肢筋力トレーニングを中心に実施した。IAPP治療後は,運動機能の回復にあわせて,立位動作練習や歩行練習を含めて,積極的に実施した。
【考察】
急性期治療と平行して,理学療法を進めることにより,運動機能,ADLが改善する可能性が示唆された。また初期治療終了後の期間を中心に,積極的に理学療法を行うことで,入院時に重度運動機能障害を呈した場合でも,機能改善を一層向上させることにつながっていくことも示された。急性期からの理学療法の重要性に加え,初期治療による効果を予測しながら,段階的な治療戦略で理学療法を進めることが必要となってくると考えた。
【理学療法学研究としての意義】
理学療法を本疾患における治療ガイドラインにおける治療枠組みの一つとして組み込むためには,NMOに対する理学療法実践を通じて,治療経過,回復経過を踏まえた取り組みの必要性を示していくことが欠かせない。
NMOは視神経炎と脊髄炎を中核とする中枢神経の炎症性疾患であり,無治療の場合には重篤な視力障害および横断性脊髄症を反復する。脊髄MRIで脊髄中心部から広がる3椎体長以上にわたる連続性病変が特徴であり,重篤な運動機能障害を併発することも多い。NMOは多発性硬化症(MS)とは異なり,血清中の抗アクアポリン4抗体(NMO-IgG)が特異的診断マーカーとして存在するため,治療としては,急性期より免疫吸着療法(IAPP)を選択されることが多い。本疾患に対する理学療法は早期より実施される機会が増えてきているが,確立した理学療法指針は示されていない。またMSやNMO治療ガイドラインには,理学療法を含むリハビリテーション(以下リハビリ)は含まれていないことから,本疾患領域での理学療法の有用性そのものから示していくことが責務であると考える。
今回,急性期治療と平行した理学療法実践経験を通じて,理学療法の必要性および介入指針について考察した。
【方法】
当院でNMOと診断された女性3例を対象とした。全例とも入院後早期よりIAPPを施行され,急性期治療と平行して理学療法を実施した。評価項目としては入院時,治療(IAAP)終了時,転帰時の1)EDSS,2)BI,3)下肢筋力:股関節屈筋・膝関節伸筋(以下股屈筋・膝伸筋),4)理学療法アプローチであり,診療録より後方視的に調査した。
症例A(44歳・女性):罹患期間3か月,入院期間48日間,転帰自宅退院
症例B(55歳・女性):罹患期間1年,入院期間51日間,転帰自宅退院
症例C(59歳・女性):罹患期間4年,入院期間53日間,転帰リハビリ転院
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究調査に関しては,当院の臨床研究ガイドラインに則って,対象者からの評価全般に関する説明と同意を得たうえで,個人情報については匿名化した。
【結果】
1)EDSS:症例Aでは入院時7.0,治療終了時6.5,転帰時4.5であった。症例Bでは入院時8.5,治療終了時7.0,転帰時5.5であった。また症例Cでは入院時8.5,治療終了時7.5,転帰時7.0であった。
2)BI:症例Aでは入院時60,治療終了時70,転帰時95であった。症例Bでは入院時25,治療終了時55,転帰時95であった。症例Cでは入院時25,治療終了時45,転帰時70であった。
3)下肢筋力:症例Aでは入院時股屈筋4/5,膝伸筋4/5,治療終了時股屈筋4+/5,膝伸筋4+/5,転帰時股屈筋5/5,膝伸筋5/5であった。症例Bでは入院時股屈筋2-/4,膝伸筋0/4,治療終了時股屈筋3+/4,膝伸筋4-/4,転帰時股屈筋4/5,膝伸筋4/5であった。症例Cでは入院時股屈筋1/4-,膝伸筋1/4-,治療終了時股屈筋1+/4,膝伸筋2+/4,転帰時股屈筋3+/4+,膝伸筋4/5であった。
4)理学療法アプローチ:3症例とも,IAPP治療中は,カテーテルや尿バルーンの影響を考慮し,ベッド上での関節可動域練習や下肢筋力トレーニングを中心に実施した。IAPP治療後は,運動機能の回復にあわせて,立位動作練習や歩行練習を含めて,積極的に実施した。
【考察】
急性期治療と平行して,理学療法を進めることにより,運動機能,ADLが改善する可能性が示唆された。また初期治療終了後の期間を中心に,積極的に理学療法を行うことで,入院時に重度運動機能障害を呈した場合でも,機能改善を一層向上させることにつながっていくことも示された。急性期からの理学療法の重要性に加え,初期治療による効果を予測しながら,段階的な治療戦略で理学療法を進めることが必要となってくると考えた。
【理学療法学研究としての意義】
理学療法を本疾患における治療ガイドラインにおける治療枠組みの一つとして組み込むためには,NMOに対する理学療法実践を通じて,治療経過,回復経過を踏まえた取り組みの必要性を示していくことが欠かせない。