[1353] 脛腓間固定が行われた足関節果部骨折の機能成績
キーワード:脛腓間固定, 足関節果部骨折, 機能成績
【はじめに,目的】
足関節果部骨折はありふれた外傷であるが,脛腓間固定が必要な程の不安定な骨折型は少ない。本邦では医師により成績が報告されているが,その多くは手術方法やレントゲン所見であり患者にとって重要な機能成績に焦点を当てた報告が少ない。本研究の目的は理学療法士の視点から脛腓間固定が行われた足関節果部骨折の機能成績を明らかにすることである。
【方法】
対象は2011年1月から2013年4月に当院で治療した足関節果部骨折197例のうち骨接合後も遠位脛腓関節の不安定性を有し,スクリューによる脛腓間固定が行われた20例。下肢外傷を併発した者,診療記録に不備があった者は除外し,術後6ヶ月以上フォローできた10名を対象とした。平均年齢は43.7歳(範囲19~64歳)。男性7名,女性3名。骨折型はLauge-Hansen分類PER stage4:5名,SER stage4:5名だった。
理学療法は手術翌日より足関節ROM運動,筋力トレーニングを開始,患肢は脛腓間固定抜去まで免荷とし,全例でPTB免荷装具を作成した。脛腓間固定抜去後から荷重開始とした。脛腓間固定抜去は平均76.6日(範囲42~106日)だった。
平均フォローアップ期間は177.2日(範囲120~225日)。調査項目は脛腓間固定抜去前・後,最終の足関節ROM(背屈,底屈),最終フォロー時の日本足の外科学会足部・足関節治療成績判定基準(JSSF scale),Olerud and Molander Ankle Score(OMAS),歩行時痛(VAS),患者満足度(VAS)とした。患者満足度は0を「全く満足していない」,100を「十分満足している」とした。脛腓間固定抜去前,後,最終での足関節ROMは健側の値で除し健側比とした。
足関節ROMの経時的変化はフリードマン検定を行ない,その後の検定としてウィルコクソン検定(Holm法)による解析を行った。統計学的解析にはR2.8.1を使用した(有意水準5%)。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に沿って実施した。当院倫理委員会の承諾を得て,並びに対象に口頭と文書で説明し同意を得た。
【結果】
全例インプラントの折損や感染などの合併症は無かった。背屈ROMは脛腓間固定抜去前40.8±20.5%,抜去後55.7±21.8%,最終88.5±12.3%だった。抜釘後は抜釘前より有意差に改善した(p=0.034)。最終背屈ROMは抜釘前・後と比較しそれぞれ有意に改善した(p=0.017,0.026)。底屈ROMは脛腓間固定抜去前81.7±14.0%,抜去後86.1±13.0%,最終92.4±6.0%だった。底屈ROMはそれぞれで有意な差があるとはいえなかった。最終成績はJSSF scale:95.6±5.8点,OMAS:90.3±5.5点,歩行時痛(VAS):1.7±3.7mm,患者満足度(VAS):84.8±8.4mmだった。
【考察】
靱帯や骨間膜の静的安定機構の損傷により骨接合後も遠位脛腓関節に不安定性が残存する場合に脛腓間固定が行われ,適切なアライメントを保持し,一定期間靱帯の修復を待つ。この固定は足関節運動時の生理的な腓骨の運動を妨げ,結果的に足関節ROM制限の原因となる。海外ではMiller(2010)により脛腓間固定抜去後に足関節ROMが改善することが報告されている。本研究の結果では足関節ROMは底屈よりも背屈が制限された。背屈では足関節mortiseに距骨がはまり込み,関節として余裕がない状態であり,その際に生じるわずかな腓骨の外旋,挙上運動が制限されるため底屈に比べ制限が大きかったと考える。脛腓間固定抜去により,腓骨の運動に対する制限が取れて背屈ROMは改善するが,その程度は十分ではなく,残存する拘縮に対する理学療法が必要である。最終で背屈ROMは健側比88.5%まで改善しているが,脛腓間固定抜去前,後では健側の2/3以下であり,一定期間,階段昇降やしゃがみ動作などの十分な背屈ROMを必要とする動作に制約があったと推察される。
最終成績では疼痛が軽度残存しているが,概ね成績は良好であり患者満足度も高い結果となった。脛腓間固定が必要な骨折型は一定期間の免荷,脛腓間固定を強いられるが,最終的には満足のいく足関節機能を再獲得できることが示された。
【理学療法研究としての意義】
脛腓間固定が行われた足関節果部骨折の機能成績が示され,脛腓間固定が足関節ROMへ与える影響が明らかとなった。足関節果部骨折の治療は世界的に議論が起きている最中であり,治療法は日々変化している。本邦ではどのような整形外科的治療や理学療法が有効かについての検討は十分ではなく,その検討のためには確立された治療・評価システムが必要不可欠である。今後はどのような理学療法が成績改善に有用であるかの検討が必要である。
足関節果部骨折はありふれた外傷であるが,脛腓間固定が必要な程の不安定な骨折型は少ない。本邦では医師により成績が報告されているが,その多くは手術方法やレントゲン所見であり患者にとって重要な機能成績に焦点を当てた報告が少ない。本研究の目的は理学療法士の視点から脛腓間固定が行われた足関節果部骨折の機能成績を明らかにすることである。
【方法】
対象は2011年1月から2013年4月に当院で治療した足関節果部骨折197例のうち骨接合後も遠位脛腓関節の不安定性を有し,スクリューによる脛腓間固定が行われた20例。下肢外傷を併発した者,診療記録に不備があった者は除外し,術後6ヶ月以上フォローできた10名を対象とした。平均年齢は43.7歳(範囲19~64歳)。男性7名,女性3名。骨折型はLauge-Hansen分類PER stage4:5名,SER stage4:5名だった。
理学療法は手術翌日より足関節ROM運動,筋力トレーニングを開始,患肢は脛腓間固定抜去まで免荷とし,全例でPTB免荷装具を作成した。脛腓間固定抜去後から荷重開始とした。脛腓間固定抜去は平均76.6日(範囲42~106日)だった。
平均フォローアップ期間は177.2日(範囲120~225日)。調査項目は脛腓間固定抜去前・後,最終の足関節ROM(背屈,底屈),最終フォロー時の日本足の外科学会足部・足関節治療成績判定基準(JSSF scale),Olerud and Molander Ankle Score(OMAS),歩行時痛(VAS),患者満足度(VAS)とした。患者満足度は0を「全く満足していない」,100を「十分満足している」とした。脛腓間固定抜去前,後,最終での足関節ROMは健側の値で除し健側比とした。
足関節ROMの経時的変化はフリードマン検定を行ない,その後の検定としてウィルコクソン検定(Holm法)による解析を行った。統計学的解析にはR2.8.1を使用した(有意水準5%)。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に沿って実施した。当院倫理委員会の承諾を得て,並びに対象に口頭と文書で説明し同意を得た。
【結果】
全例インプラントの折損や感染などの合併症は無かった。背屈ROMは脛腓間固定抜去前40.8±20.5%,抜去後55.7±21.8%,最終88.5±12.3%だった。抜釘後は抜釘前より有意差に改善した(p=0.034)。最終背屈ROMは抜釘前・後と比較しそれぞれ有意に改善した(p=0.017,0.026)。底屈ROMは脛腓間固定抜去前81.7±14.0%,抜去後86.1±13.0%,最終92.4±6.0%だった。底屈ROMはそれぞれで有意な差があるとはいえなかった。最終成績はJSSF scale:95.6±5.8点,OMAS:90.3±5.5点,歩行時痛(VAS):1.7±3.7mm,患者満足度(VAS):84.8±8.4mmだった。
【考察】
靱帯や骨間膜の静的安定機構の損傷により骨接合後も遠位脛腓関節に不安定性が残存する場合に脛腓間固定が行われ,適切なアライメントを保持し,一定期間靱帯の修復を待つ。この固定は足関節運動時の生理的な腓骨の運動を妨げ,結果的に足関節ROM制限の原因となる。海外ではMiller(2010)により脛腓間固定抜去後に足関節ROMが改善することが報告されている。本研究の結果では足関節ROMは底屈よりも背屈が制限された。背屈では足関節mortiseに距骨がはまり込み,関節として余裕がない状態であり,その際に生じるわずかな腓骨の外旋,挙上運動が制限されるため底屈に比べ制限が大きかったと考える。脛腓間固定抜去により,腓骨の運動に対する制限が取れて背屈ROMは改善するが,その程度は十分ではなく,残存する拘縮に対する理学療法が必要である。最終で背屈ROMは健側比88.5%まで改善しているが,脛腓間固定抜去前,後では健側の2/3以下であり,一定期間,階段昇降やしゃがみ動作などの十分な背屈ROMを必要とする動作に制約があったと推察される。
最終成績では疼痛が軽度残存しているが,概ね成績は良好であり患者満足度も高い結果となった。脛腓間固定が必要な骨折型は一定期間の免荷,脛腓間固定を強いられるが,最終的には満足のいく足関節機能を再獲得できることが示された。
【理学療法研究としての意義】
脛腓間固定が行われた足関節果部骨折の機能成績が示され,脛腓間固定が足関節ROMへ与える影響が明らかとなった。足関節果部骨折の治療は世界的に議論が起きている最中であり,治療法は日々変化している。本邦ではどのような整形外科的治療や理学療法が有効かについての検討は十分ではなく,その検討のためには確立された治療・評価システムが必要不可欠である。今後はどのような理学療法が成績改善に有用であるかの検討が必要である。