第49回日本理学療法学術大会

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人体構造・機能情報学6

2014年6月1日(日) 09:30 〜 10:20 ポスター会場 (基礎)

座長:縣信秀(常葉大学保健医療学部理学療法学科)

基礎 ポスター

[1357] 6-hydroxydopamin誘発パーキンソン病モデルラットにおける行動学および組織学的変化

岡田圭祐1,2, 武本秀徳3, 山上拓2,4, 河田真之介2, 今北英高2 (1.大東中央病院理学療法室, 2.畿央大学大学院健康科学研究科, 3.県立広島大学保健福祉学部理学療法学科, 4.朋愛病院リハビリテーション科)

キーワード:パーキンソン病, ラット, 骨格筋

【はじめに,目的】
パーキンソン病(以下,PD)は安静時振戦,筋固縮,無動・寡動,姿勢反射障害を四大徴候とする進行性の神経変性疾患である。PDでは黒質線条体系のドーパミンニューロンの変性により,神経因性の運動機能障害が引き起こされることがよく知られる。しかしながら,PDの筋系における組織学的変化については十分に検討されていない。6-hydroxydopamin(6-OHDA)の実験的な脳への投与はドーパミンニューロンを選択的に障害する。そこで,6-OHDAに誘発されたPDモデルラットを用い,行動変化および,骨格筋の組織学的変化について検討することを目的に研究を行った。
【方法】
対象は8週齢の雄性SDラット13匹(シャム群:8匹,PD群:5匹)とした。麻酔下にてラット頭部を皮切し,結合組織を剥離・除去した。その後,定位脳固定装置に固定し,ブレグマを基準に右側1.8mm,尾側4.8mm,深さ7.8mm,または右側2.2mm,尾側5.2mm,深さ8.0mmの箇所にガラスピペットを刺入し,アスコルビン酸添加生理食塩水を溶媒とした0.2%6-OHDA溶液を1分間に1μlの速度で4µl注入した。シャム群に対しても同様の手術を行い,アスコルビン酸添加生理食塩水のみを注入した。注入完了後5分間はガラスピペットを刺入した状態で保持し溶液を拡散させた。手術後,1週ごとに体重,握力,金網ぶら下がり時間の測定と,0.1%アポモルフィン溶液の腹腔内投与後30分間の回転運動を観察し,アポモルフィン投与による回転運動は1分間に7回転以上をPD陽性とした。また,4週後にフットプリントにて歩幅を測定した。その後,ヒラメ筋,長趾伸筋を摘出し,横断切片に対しコハク酸脱水素酵素染色,ATP-ase染色を実施し,筋線維タイプ別占有率を計測した。統計処理はF検定にて等分散の検定を行い,等分散性が仮定できればStudentの,仮定できない場合はWelchのt検定を行った。なお,危険率5%をもって統計学的有意とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本実験は畿央大学動物実験倫理委員会の承認を得て,畿央大学動物実験管理規定に従って実施した。
【結果】
体重は有意な差は認められなかったが,シャム群に対しPD群で低下傾向であった。握力,金網ぶら下がり時間に有意な差は認められなかったが,PD群で増加傾向であった。フットプリントにおける歩幅に有意な差は認められなかった。
両側ヒラメ筋の筋組織タイプ別占有率に有意な差は認められなかった。右長趾伸筋のSO線維,FOG線維の占有率が有意に低値,FG線維の占有率が有意に高値を示した。左長趾伸筋の筋線維占有率に有意な差は認められなかった。
【考察】
6-OHDA誘発PDモデルにおける行動学的変化は捉えることが困難であるとされており,本実験の結果においても運動能力に有意な差は認められなかった。しかし,組織学的には右長趾伸筋においてSO線維,FOG線維の占有率が減少し,FG線維が増加した。長趾伸筋は抗重力筋であるヒラメ筋と比較し神経調節依存性が大きいとされている。また,本モデルは右中脳黒質の障害であり,右後肢筋の筋固縮を引き起こすことが考えられる。これらより,長趾伸筋にのみ組織学的変化が生じた可能性がある。さらに,運動能力の変化が認められず,組織学的な変化が認められることは,中脳黒質の障害が一次性に筋に対して影響を与えた可能性があると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
PDおよびパーキンソン症候群は臨床においても非常に多くみられる疾患であり,中脳黒質の障害による一次性障害,無動などのPD特有の症状による二次性障害と骨格筋機能の関係性を明らかにすることは重要であると考えられる。