[1358] 虚血モデルマウスにおける血管新生や酸化ストレスから見た運動やビタミンC摂取の影響
キーワード:血管新生因子, 運動, 酸化ストレス
【目的】閉塞性動脈硬化症(PAD)は,動脈閉塞により血管新生や酸化ストレスなどへの影響を引き起こす。また,ビタミンC(VC)などの摂取は血管新生を抑制する。本研究は,PADの生理的な病態に近いとされる虚血下肢モデルマウスを用い,運動やVC摂取が酸化ストレスや血管新生因子におよぼす影響について検討する。
【方法】対象は,VCノックアウトマウス(SMP30/GNL,雄)11匹とし,週齢40週(中年期)の時点で外科的処置(右大腿動脈結紮:処置)を実施し,無作為にVC 100%摂取群(n=6:A群)とVC 0%群(n=5:B群)の2群に区分した。処置14日後(週齢42週)には1回の運動を実施し,運動24時間後にと殺を行い,組織を摘出した。すべてのマウスは週齢39週まで,VC 100%摂取にて馴化飼育を行った。表面皮膚温の変化は,左右大腿部に表面温度計を使用し,開始時(処置前)と処置直後,処置24時間後,動物用トレッドミル(TM)の運動前,TM運動24時間後(と殺前)の計5回測定し,相対値(右/左)を算出した。運動はTM(速度10m/min,傾斜0%,30分間)を使用した。血漿VC濃度は,TM走行24時間後(と殺後)に肝臓を摘出し,還元型(アスコルビン酸:AA)と酸化型(デヒドロアスコルビン酸:DHA)を電気化学検出器(HPLC)により測定し,総VC(AA+DHA)濃度を算出した。酸化ストレス防御系は,活性酸素・フリーラジカル分析装置(H&D社製FRAS4,FREE)を使用し,酸化ストレス度(d-ROM)と抗酸化力(BAP),血漿クレアチニン値(CK)を測定し,BAP/d-ROM比(潜在的抗酸化能)を算出した。d-ROMなどの測定には尾静脈を一部切開の上,採血を行い遠心分離後の血漿を用いた。なお,d-ROMなどの測定は,開始時(処置前)と処置24時間後,TM走行前の安静時に計3回実施した。血管新生は,TM走行24時間後(と殺後)に左右ヒラメ筋を採取し,リアルタイムPCR法にて血管内皮成長因子(VEGF)と線維芽細胞増殖因子(bFGF)を分析した。全てのマウスは室温20±1℃,12時間(7-19時)の明暗周期の環境下で飼育し,VCを含まない固形飼料を自由摂取させ,行動に制限を設けなかった。本研究において得られた数値は平均値±標準偏差で表し,統計ソフトはSPSS(Ver21.0 for win)を用い,有意差の検定は分散分析とFriedman検定,Mann-Whitney U検定,Scheffe法などの多重比較を用いて行った。
【倫理的配慮】研究に当たっては,所属する大学動物実験委員会の承認を得て実施した(承認番号24-7)。
【結果】表面皮膚温の変化は,開始時と比較し処置24時間後に両群共有意な低下を認めた(いずれもp<0.05)。総VC濃度においてA群は,B群と比較して有意な高値を認めた(p<0.001)。酸化ストレス防御系においてBAP値は,両群共に開始時と比較しTM走行前において有意な減少を認めた(それぞれp<0.001,p<0.05)。しかし,d-ROM値や潜在的抗酸化能,CK値は両群共に変化を認めなかった。また,VEGFとbFGFは両群共に有意な差を認めなかった。
【考察】一般的に動脈閉塞は,骨格筋組織の酸素不足や虚血が惹起され,酸化ストレスが増大することが報告されている。今回の結果から,VC摂取量の違いは血漿VC濃度に有意な変化を認めたことから,先行研究と同様な結果となった。しかし,酸化ストレス度や潜在的抗酸化能は変化を認めなかったことから,先行研究と異なる結果となった。先行研究においては,VC摂取の期間が9週間であり,かつ週齢14週のVCノックアウトマウスであったことから,異なるVC摂取期間や週齢による影響が結果におよぼした可能性が考えられた。特に,生体内のVCのwash-outには4週間程度の期間が必要と報告されていることから,2週間程度のVC 0%摂取ではwash-outが不十分であったため,酸化ストレス度に変化を認めなかった可能性が推察された。また,運動後には,血管新生抑制因子の発現が5時間程度で発現したことや,促進因子においては7日で増大し,28日で減少することが報告されている。今回,血管新生因子の測定はTM走行24時間後であったため,両群共に有意な差を認めなかった可能性が考えられた。そのため,今後は血管新生の経時的な分析と共に,酸化ストレスと併せて骨格筋の毛細血管網におよぼす影響を検討する必要が考えられた。
【理学療法学研究としての意義】本研究は,動脈閉塞に対する運動の効果を検討するための基礎的なデータとなる。
【方法】対象は,VCノックアウトマウス(SMP30/GNL,雄)11匹とし,週齢40週(中年期)の時点で外科的処置(右大腿動脈結紮:処置)を実施し,無作為にVC 100%摂取群(n=6:A群)とVC 0%群(n=5:B群)の2群に区分した。処置14日後(週齢42週)には1回の運動を実施し,運動24時間後にと殺を行い,組織を摘出した。すべてのマウスは週齢39週まで,VC 100%摂取にて馴化飼育を行った。表面皮膚温の変化は,左右大腿部に表面温度計を使用し,開始時(処置前)と処置直後,処置24時間後,動物用トレッドミル(TM)の運動前,TM運動24時間後(と殺前)の計5回測定し,相対値(右/左)を算出した。運動はTM(速度10m/min,傾斜0%,30分間)を使用した。血漿VC濃度は,TM走行24時間後(と殺後)に肝臓を摘出し,還元型(アスコルビン酸:AA)と酸化型(デヒドロアスコルビン酸:DHA)を電気化学検出器(HPLC)により測定し,総VC(AA+DHA)濃度を算出した。酸化ストレス防御系は,活性酸素・フリーラジカル分析装置(H&D社製FRAS4,FREE)を使用し,酸化ストレス度(d-ROM)と抗酸化力(BAP),血漿クレアチニン値(CK)を測定し,BAP/d-ROM比(潜在的抗酸化能)を算出した。d-ROMなどの測定には尾静脈を一部切開の上,採血を行い遠心分離後の血漿を用いた。なお,d-ROMなどの測定は,開始時(処置前)と処置24時間後,TM走行前の安静時に計3回実施した。血管新生は,TM走行24時間後(と殺後)に左右ヒラメ筋を採取し,リアルタイムPCR法にて血管内皮成長因子(VEGF)と線維芽細胞増殖因子(bFGF)を分析した。全てのマウスは室温20±1℃,12時間(7-19時)の明暗周期の環境下で飼育し,VCを含まない固形飼料を自由摂取させ,行動に制限を設けなかった。本研究において得られた数値は平均値±標準偏差で表し,統計ソフトはSPSS(Ver21.0 for win)を用い,有意差の検定は分散分析とFriedman検定,Mann-Whitney U検定,Scheffe法などの多重比較を用いて行った。
【倫理的配慮】研究に当たっては,所属する大学動物実験委員会の承認を得て実施した(承認番号24-7)。
【結果】表面皮膚温の変化は,開始時と比較し処置24時間後に両群共有意な低下を認めた(いずれもp<0.05)。総VC濃度においてA群は,B群と比較して有意な高値を認めた(p<0.001)。酸化ストレス防御系においてBAP値は,両群共に開始時と比較しTM走行前において有意な減少を認めた(それぞれp<0.001,p<0.05)。しかし,d-ROM値や潜在的抗酸化能,CK値は両群共に変化を認めなかった。また,VEGFとbFGFは両群共に有意な差を認めなかった。
【考察】一般的に動脈閉塞は,骨格筋組織の酸素不足や虚血が惹起され,酸化ストレスが増大することが報告されている。今回の結果から,VC摂取量の違いは血漿VC濃度に有意な変化を認めたことから,先行研究と同様な結果となった。しかし,酸化ストレス度や潜在的抗酸化能は変化を認めなかったことから,先行研究と異なる結果となった。先行研究においては,VC摂取の期間が9週間であり,かつ週齢14週のVCノックアウトマウスであったことから,異なるVC摂取期間や週齢による影響が結果におよぼした可能性が考えられた。特に,生体内のVCのwash-outには4週間程度の期間が必要と報告されていることから,2週間程度のVC 0%摂取ではwash-outが不十分であったため,酸化ストレス度に変化を認めなかった可能性が推察された。また,運動後には,血管新生抑制因子の発現が5時間程度で発現したことや,促進因子においては7日で増大し,28日で減少することが報告されている。今回,血管新生因子の測定はTM走行24時間後であったため,両群共に有意な差を認めなかった可能性が考えられた。そのため,今後は血管新生の経時的な分析と共に,酸化ストレスと併せて骨格筋の毛細血管網におよぼす影響を検討する必要が考えられた。
【理学療法学研究としての意義】本研究は,動脈閉塞に対する運動の効果を検討するための基礎的なデータとなる。