[1359] 廃用性筋萎縮に伴う毛細血管退行の回復過程に及ぼすアスタキサンチンによる栄養サポートの効果
キーワード:再荷重, 骨格筋毛細血管退行, 栄養サポート
【はじめに,目的】
長期臥床等の不活動による廃用性筋萎縮に伴い骨格筋毛細血管退行が起こる。萎縮筋の回復には機械的刺激が必要とされ,理学療法では荷重運動が広く用いられる。一方,萎縮筋への再荷重が毛細血管へ与える影響に関する報告は皆無である。廃用性筋萎縮に伴う毛細血管退行の原因の一つに活性酸素種(ROS)の増加があげられる。後肢非荷重によりROSが過剰産生し,酸化ストレスの増加が毛細血管退行を惹起する原因と考えられている。また,萎縮筋への再荷重はROSを増加するとの報告もあり,ROSの増加を予防し再荷重を実施する必要がある。そこで,萎縮筋への再荷重時に強力な抗酸化栄養補助食品であるアスタキサンチン(Ax)による栄養サポートを行うことで,再荷重によるROSの増加を防止し,毛細血管退行を予防し維持できるのではないかと考えた。本研究では,萎縮筋への再荷重が骨格筋毛細血管へ与える影響を検証し,Axによる栄養サポートの効果を検証した。
【方法】
9週齢の雄性SDラット40匹を用いた。Morey法による2週間の後肢非荷重後,再荷重を行わなかった群をRL0群(n=7)と非荷重期間中にAxを摂取したRL+Ax0群(n=7)に分別した。また,2週間の後肢非荷重後,1週間の再荷重を行った群をRL7群(n=7),さらに再荷重中にAxを摂取した群をRL+Ax7群(n=7)と群分けした。また,2週間の対照群をCON0(n=6),3週間の対照群をCON7(n=6)とした。アスタキサンチン(富士化学工業)は100mg/kg/日をゾンデで経口摂取させた。実験終了後,足底筋を摘出し,HE染色から筋線維横断面積,AP染色により毛細血管・筋線維比(C/F比),酸化ストレスの指標としてジヒドロエチジウム(DHE)染色にてROSを定量化した。得られた測定値の統計処理には二元配置分散分析とFisherの最小有意差法による多重比較検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
全ての実験は所属施設における動物実験に関する指針に従い,動物実験委員会の承認を得たうえで実施した。
【結果】
筋線維横断面積は,2週間の後肢非荷重をしたRL0群とRL+Ax0群で,対照群と比較して低値を示した。再荷重を行ったRL7群及びRL+Ax7群では再荷重を行わなかったRL0及びRL+Ax0と比較して高値を示し,対照群と差を認めず,筋萎縮の回復が得られた。一方,C/F比に関しては,対照群と比較してAxを投与しなかったRL0群及びRL7群では低値を示したが,Axを摂取したRL+Ax0群及びRL+Ax7群ではAxの摂取を行わなかった2群と比較して,高値を示した。これらの結果からAx摂取により毛細血管退行を減衰させた。ROSに関しては,対照群と比較してRL0群が高値を示し,さらにRL0と比較してRL7群が高値を示した。一方,Axを摂取したRL+Ax0群では対照群と差を認めなかった。また,RL+Ax7群では再荷重を実施したことで対照群と比較して高値を示したが,RL7群と比較して低値を示した。
【考察】
2週間の後肢非荷重により廃用性筋萎縮,及び毛細血管退行が生じた。不活動により過剰産生されたROSは,毛細血管退行を引き起こすと報告されている(Kanazashi 2013)。本研究でも非荷重によるROSの増加が毛細血管退行の主要な原因となったと考えられる。また,再荷重により筋線維横断面積は回復したが,C/F比に変化は見られず再荷重は毛細血管の回復へは寄与しなかった。骨格筋の筋活動増加に伴い毛細血管新生が促進されるといわれており,不活動後の再荷重は萎縮筋の筋活動を増加させるため毛細血管を新生させる介入となりうる。一方で萎縮筋への再荷重でROSが増加し,毛細血管の退行性変化も生じる可能性がある。これらのことから萎縮後の再荷重は毛細血管新生と退行の両者が起こり,再荷重では毛細血管の形態的な変化は生じなかったと思われる。一方,後肢非荷重でAx摂取により毛細血管退行を減衰した。不活動期間中のAx摂取は,廃用性筋萎縮に伴うROSの増加を防ぎ,毛細血管を維持したという先行研究(Kanazashi 2013)と一致する。また,再荷重下でもAx摂取は毛細血管退行を減衰させた。この結果から,Axによる栄養サポートを併用することで,再荷重によるROSの過剰発現を軽減し,毛細血管を維持できることが示唆された。これらの結果から,萎縮筋の回復に必要な再荷重に加え,後肢非荷重期間から再荷重期間にかけてAxによる栄養サポートを併用することで,骨格筋毛細血管を維持した状態で,筋萎縮を回復できることが明らかとなった。
【理学療法学研究としての意義】
骨格筋の回復に必要な介入である理学療法にアスタキサンチン摂取による栄養サポートを併用することで,毛細血管退行を予防した状態で,筋萎縮を回復させることができる。本研究の成果は,理学療法におけるNST(栄養サポートチーム)の重要性を示したものである。
長期臥床等の不活動による廃用性筋萎縮に伴い骨格筋毛細血管退行が起こる。萎縮筋の回復には機械的刺激が必要とされ,理学療法では荷重運動が広く用いられる。一方,萎縮筋への再荷重が毛細血管へ与える影響に関する報告は皆無である。廃用性筋萎縮に伴う毛細血管退行の原因の一つに活性酸素種(ROS)の増加があげられる。後肢非荷重によりROSが過剰産生し,酸化ストレスの増加が毛細血管退行を惹起する原因と考えられている。また,萎縮筋への再荷重はROSを増加するとの報告もあり,ROSの増加を予防し再荷重を実施する必要がある。そこで,萎縮筋への再荷重時に強力な抗酸化栄養補助食品であるアスタキサンチン(Ax)による栄養サポートを行うことで,再荷重によるROSの増加を防止し,毛細血管退行を予防し維持できるのではないかと考えた。本研究では,萎縮筋への再荷重が骨格筋毛細血管へ与える影響を検証し,Axによる栄養サポートの効果を検証した。
【方法】
9週齢の雄性SDラット40匹を用いた。Morey法による2週間の後肢非荷重後,再荷重を行わなかった群をRL0群(n=7)と非荷重期間中にAxを摂取したRL+Ax0群(n=7)に分別した。また,2週間の後肢非荷重後,1週間の再荷重を行った群をRL7群(n=7),さらに再荷重中にAxを摂取した群をRL+Ax7群(n=7)と群分けした。また,2週間の対照群をCON0(n=6),3週間の対照群をCON7(n=6)とした。アスタキサンチン(富士化学工業)は100mg/kg/日をゾンデで経口摂取させた。実験終了後,足底筋を摘出し,HE染色から筋線維横断面積,AP染色により毛細血管・筋線維比(C/F比),酸化ストレスの指標としてジヒドロエチジウム(DHE)染色にてROSを定量化した。得られた測定値の統計処理には二元配置分散分析とFisherの最小有意差法による多重比較検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
全ての実験は所属施設における動物実験に関する指針に従い,動物実験委員会の承認を得たうえで実施した。
【結果】
筋線維横断面積は,2週間の後肢非荷重をしたRL0群とRL+Ax0群で,対照群と比較して低値を示した。再荷重を行ったRL7群及びRL+Ax7群では再荷重を行わなかったRL0及びRL+Ax0と比較して高値を示し,対照群と差を認めず,筋萎縮の回復が得られた。一方,C/F比に関しては,対照群と比較してAxを投与しなかったRL0群及びRL7群では低値を示したが,Axを摂取したRL+Ax0群及びRL+Ax7群ではAxの摂取を行わなかった2群と比較して,高値を示した。これらの結果からAx摂取により毛細血管退行を減衰させた。ROSに関しては,対照群と比較してRL0群が高値を示し,さらにRL0と比較してRL7群が高値を示した。一方,Axを摂取したRL+Ax0群では対照群と差を認めなかった。また,RL+Ax7群では再荷重を実施したことで対照群と比較して高値を示したが,RL7群と比較して低値を示した。
【考察】
2週間の後肢非荷重により廃用性筋萎縮,及び毛細血管退行が生じた。不活動により過剰産生されたROSは,毛細血管退行を引き起こすと報告されている(Kanazashi 2013)。本研究でも非荷重によるROSの増加が毛細血管退行の主要な原因となったと考えられる。また,再荷重により筋線維横断面積は回復したが,C/F比に変化は見られず再荷重は毛細血管の回復へは寄与しなかった。骨格筋の筋活動増加に伴い毛細血管新生が促進されるといわれており,不活動後の再荷重は萎縮筋の筋活動を増加させるため毛細血管を新生させる介入となりうる。一方で萎縮筋への再荷重でROSが増加し,毛細血管の退行性変化も生じる可能性がある。これらのことから萎縮後の再荷重は毛細血管新生と退行の両者が起こり,再荷重では毛細血管の形態的な変化は生じなかったと思われる。一方,後肢非荷重でAx摂取により毛細血管退行を減衰した。不活動期間中のAx摂取は,廃用性筋萎縮に伴うROSの増加を防ぎ,毛細血管を維持したという先行研究(Kanazashi 2013)と一致する。また,再荷重下でもAx摂取は毛細血管退行を減衰させた。この結果から,Axによる栄養サポートを併用することで,再荷重によるROSの過剰発現を軽減し,毛細血管を維持できることが示唆された。これらの結果から,萎縮筋の回復に必要な再荷重に加え,後肢非荷重期間から再荷重期間にかけてAxによる栄養サポートを併用することで,骨格筋毛細血管を維持した状態で,筋萎縮を回復できることが明らかとなった。
【理学療法学研究としての意義】
骨格筋の回復に必要な介入である理学療法にアスタキサンチン摂取による栄養サポートを併用することで,毛細血管退行を予防した状態で,筋萎縮を回復させることができる。本研究の成果は,理学療法におけるNST(栄養サポートチーム)の重要性を示したものである。