[1370] 人工膝関節全置換術施行患者における主観的評価の構成概念妥当性の検討
キーワード:人工膝関節全置換術, 主観的評価, 構成概念妥当性
【目的】当院では2010年4月より,人工膝関節全置換術(以下TKA)施行患者を対象に本学附属4病院(以下4病院)の理学療法士(以下PT)で作成した共通の身体機能評価表および患者の主観的な評価で構成された問診票を用い,TKA前後の評価を統一する試みを実施している。現在,一般的に用いられている疾患特異的であり患者の主観的な評価尺度としては,WOMACやJKOMなどがあるが,いずれも医師が作成した尺度であり,PTが作成した尺度ではない。そこで4病院ではPTが評価する生活動作に重点を置き,痛みや満足度を含んだ主観的評価を実施する目的で問診票を作成した。問診票は,「生活動作」,「疼痛」,「満足度」の3下位尺度を5段階スケール(楽にできる,痛くない,満足:5点~できない・やっていない,激しく痛む,不満足:1点)で回答する質問紙法とし,「生活動作16項目」,「疼痛8項目」,「満足度7項目」の全31項目を設定している。我々は,問診票の信頼性について,第47回日本理学療法学術大会にて高い内的整合性が認められたことを報告している。また,下位尺度である「生活動作」について,第48回日本理学療法学術大会にて「身の回り動作」と「移動動作」の2因子による群構造であることを報告している。今回,問診票の構成概念妥当性を検証することを目的とし,「疼痛」,「満足度」の2下位尺度の妥当性を検討した。
【方法】2010年4月から2013年8月までに4病院で変形性膝関節症と診断され,初回片側TKAを施行し,術前,術後3週,術後8週,術後12週のいずれかの評価時期に問診票の全項目に回答可能であった症例615名(平均年齢73.7±7.6歳,男性135名,女性480名)を対象とした。評価項目は,「疼痛」においては,1)安静にしている時,2)寝起きする時,3)立ち上がる時,4)歩く時,5)階段を昇り降りする時,6)座り仕事または家事をする時,7)立ち仕事または家事をする時,8)手術側の膝以外の部位,の8項目とし,「満足度」においては,1)膝の状態,2)趣味活動,3)外出,4)歩き姿,5)睡眠,6)膝以外の体の状態,7)身体以外の生活の状態,の7項目とし,各項目の点数を調査した。各項目の群構造を検討するため因子分析を行った。推定法には最尤法を用い,因子の回転には直接オブリミン法を用いた。また因子数の決定はカイザーガットマン基準に従って固有値が1以上となる因子まで求めた。適合度の評価にはKMO測度,バートレットの球面性検定を参考とした。統計解析にはSPSS ver.21.0 for Windowsを用いた。
【倫理的配慮】本研究は本学倫理委員会の承認を得て,ヘルシンキ宣言に則り実施した。
【結果】「疼痛」においては1因子,「満足度」においては2因子が抽出された。KMO測度は「疼痛」0.879,「満足度」0.849,バートレット球面性検定は両者ともp<0.01となり,因子分析を行う妥当性が確認できた。「疼痛」は全8項目の因子負荷量が0.4以上,寄与率が55.9%となり,「満足度」は第1因子として項目1)から4)の因子負荷量が0.7以上,寄与率49.5%となり,第2因子として項目5)から7)の因子負荷量0.4以上,寄与率8.7%となった。
【考察】「疼痛」では1因子のみが抽出されたことから,各項目は1つの群構造として捉えられることが示唆された。「満足度」では2因子抽出されたことから,第1因子は膝の状態,趣味活動や外出,歩き姿という膝と直接的な関係の活動状態を表している「直接的な満足度」,第2因子は膝と直接関係しない身体状態や精神状態を表している「間接的な満足度」と考える。いずれの項目も0.4以上の因子負荷量を示していることから2因子の群構造として捉えることが可能であることが示唆された。今回の結果に,第47回,第48回日本理学療法学術大会での報告も加えて考察すると,我々の問診票は,「生活動作」,「疼痛」,「満足度」の3下位尺度に高い内的整合性が得られたことにより信頼性が確認され,さらに3下位尺度の因子分析の結果より構成概念妥当性の1側面である因子妥当性が認められたと考える。これにより,我々の問診票の結果を得点化することの適切性が示されたと考える。今後は,基準関連妥当性や内容妥当性などの他の妥当性を検証することや問診票と同時に評価している身体機能評価との関連性について検討することが課題である。
【理学療法学研究としての意義】当問診票の3下位尺度における因子妥当性が認められ,問診票の結果を得点化することの適切性が示された。今後は,この問診票と身体機能との関連性について検討し,臨床に即した評価尺度として発展させ,介入効果を評価する有用な評価尺度とすることが課題であり,このことは,理学療法評価および治療の標準化において意義があることと考える。
【方法】2010年4月から2013年8月までに4病院で変形性膝関節症と診断され,初回片側TKAを施行し,術前,術後3週,術後8週,術後12週のいずれかの評価時期に問診票の全項目に回答可能であった症例615名(平均年齢73.7±7.6歳,男性135名,女性480名)を対象とした。評価項目は,「疼痛」においては,1)安静にしている時,2)寝起きする時,3)立ち上がる時,4)歩く時,5)階段を昇り降りする時,6)座り仕事または家事をする時,7)立ち仕事または家事をする時,8)手術側の膝以外の部位,の8項目とし,「満足度」においては,1)膝の状態,2)趣味活動,3)外出,4)歩き姿,5)睡眠,6)膝以外の体の状態,7)身体以外の生活の状態,の7項目とし,各項目の点数を調査した。各項目の群構造を検討するため因子分析を行った。推定法には最尤法を用い,因子の回転には直接オブリミン法を用いた。また因子数の決定はカイザーガットマン基準に従って固有値が1以上となる因子まで求めた。適合度の評価にはKMO測度,バートレットの球面性検定を参考とした。統計解析にはSPSS ver.21.0 for Windowsを用いた。
【倫理的配慮】本研究は本学倫理委員会の承認を得て,ヘルシンキ宣言に則り実施した。
【結果】「疼痛」においては1因子,「満足度」においては2因子が抽出された。KMO測度は「疼痛」0.879,「満足度」0.849,バートレット球面性検定は両者ともp<0.01となり,因子分析を行う妥当性が確認できた。「疼痛」は全8項目の因子負荷量が0.4以上,寄与率が55.9%となり,「満足度」は第1因子として項目1)から4)の因子負荷量が0.7以上,寄与率49.5%となり,第2因子として項目5)から7)の因子負荷量0.4以上,寄与率8.7%となった。
【考察】「疼痛」では1因子のみが抽出されたことから,各項目は1つの群構造として捉えられることが示唆された。「満足度」では2因子抽出されたことから,第1因子は膝の状態,趣味活動や外出,歩き姿という膝と直接的な関係の活動状態を表している「直接的な満足度」,第2因子は膝と直接関係しない身体状態や精神状態を表している「間接的な満足度」と考える。いずれの項目も0.4以上の因子負荷量を示していることから2因子の群構造として捉えることが可能であることが示唆された。今回の結果に,第47回,第48回日本理学療法学術大会での報告も加えて考察すると,我々の問診票は,「生活動作」,「疼痛」,「満足度」の3下位尺度に高い内的整合性が得られたことにより信頼性が確認され,さらに3下位尺度の因子分析の結果より構成概念妥当性の1側面である因子妥当性が認められたと考える。これにより,我々の問診票の結果を得点化することの適切性が示されたと考える。今後は,基準関連妥当性や内容妥当性などの他の妥当性を検証することや問診票と同時に評価している身体機能評価との関連性について検討することが課題である。
【理学療法学研究としての意義】当問診票の3下位尺度における因子妥当性が認められ,問診票の結果を得点化することの適切性が示された。今後は,この問診票と身体機能との関連性について検討し,臨床に即した評価尺度として発展させ,介入効果を評価する有用な評価尺度とすることが課題であり,このことは,理学療法評価および治療の標準化において意義があることと考える。