[1376] 簡易装着型短下肢装具の開発
キーワード:短下肢装具, 装着時間, 脳血管障害
【はじめに,目的】片麻痺者は,装具を着脱するのに時間を要する事が多い。その為,歩行に対する意欲が低下する事がある。近年,油圧を利用したGait Solutionやカーボン製の支柱を使ったAdjustable Posterior Strut Ankle Foot Orthosis(APS-AFO)などの歩行能力向上を目的とした装具が多く開発されているが,装着性を重視した装具は少ない。自宅退院患者を対象とした調査では,屋内・外で装具を使用している者の18.2%が「装着が手間」,「履く必要性を感じない」と言った意見を述べ,屋外のみ使用している者の50%が同様の意見であったと報告している。また,締着装置である角環にベルトを通す動作に時間を費やす事から,装具を装着せずに歩行し転倒を引き起こすなどの問題点が報告されている。そこで,装具の着脱を簡便化する事を目的に足関節のベルトに自動車のシートベルト様の機構を取り付ける事で,ベルトを角環に通す作業をなくした簡易装着型短下肢装具の第一次試作品(以下試作品)を作製した。本研究は,試作品と従来のベルトを使用したプラスチック短下肢装具(以下P-AFO)の2種類の装具を用いて,装着時間について比較検討した。
【方法】対象は,本研究の趣旨に同意を得られた健常成人15名(男性6名,女性9名)とした。年齢23.7±2.6歳,身長164.2±8.5cm,体重54.1±10.3kgで,利き手は全員が右利きであった。また,測定に影響を及ぼすと考えられる疾患を有する者はいなかった。対象者は右片麻痺者を想定し右上下肢を使用せずに右下肢に装具を装着した。測定項目は足関節のベルト1本止める時間と下腿・足関節・足背の3本のベルトを止める時間の2項目とし,最大速度と自由速度の2つの速度での時間を測定した。測定順はランダムとし,測定前に2種類の装具の装着練習を十分に設けた。測定の開始肢位は椅子座位にて股関節90°屈曲位,膝関節90°屈曲位,足関節底背屈0°とし装具に足を置きベルトを止める前の状態に設定した。測定時間はストップウォッチを用いて,ベルトに手が触れた瞬間から,ベルトを止め終わり手がベルトから離れた瞬間までの時間を3回測定して平均値を算出し,小数点第3位を四捨五入した。また,測定後は2種類の装具の履きやすさをVisual Analogue Scale(以下VAS)を用いて測定した。10cmの横線に,左端が0で「履きにくい」,右端の10が「履きやすい」と記載し,対象者に線を引いてもらい,線の位置を定規で測定した。結果から,平均値を算出して小数点第2位を四捨五入した。統計学的手法は,2つの装具と装具を履く速度について二元配置分散分析,履きやすさのVASに関しては,Wilcoxonの符号付順位和検定を実施した。なお,SPSS 15.0J for Windowsを用いて,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,所属大学院倫理委員会の承認を得ており(承認番号12-242),ヘルシンキ宣言のもと対象者には十分に説明を行ない,同意を得た者に対して実施した。
【結果】足関節のベルト1本を止めた時間は,試作品最大速度が2.88±0.32秒,試作品自由速度が3.81±0.48秒,P-AFO最大速度が6.20±1.29秒,P-AFO自由速度が7.65±0.88秒であった。また,下腿・足関節・足背のベルト3本を止めた時間は,試作品最大速度が10.15±1.28秒,試作品自由速度が12.73±1.20秒,P-AFO最大速度が14.11±1.81秒,P-AFO自由速度が17.89±1.51秒であった。両項目ともに装具間と速度間の双方に有意差を認め,交互作用は認めなかった。履きやすさは,試作品が7.5±1.3cm,P-AFOが5.2±1.8cmであり,有意差を認めた。
【考察】装着時間は,足関節のベルト1本を止めた時間と3本全てのベルトを止めた時間の双方に装具間と速度間において有意差を認めた。試作品の装着時間はP-AFOの装着時間よりも速くVASの結果からも試作品の方が履きやすいと考えられた。また,主観的な感想からも「ベルトを角環に通さないと楽」などの意見が多かった。今回の研究結果より,ベルトを角環に通さない事が装具を履くスピードと関係し履きやすさにつながる要因であると考えた。平均値が3~5秒の差であるが,健常者を対象としているため片麻痺者にも同様の結果が得られるかについては今後の課題である。また,既に発表されているイージーリングを用いたP-AFOとの比較や固定力についても検討が必要である。
【理学療法学研究としての意義】装具を装着する事で歩行能力の向上が期待出来ても,装具を装着する事に時間が掛かり,装具を使用しなくなる事により歩容の悪化や転倒に繋がるケースが考えられる。一人で簡単に装着出来る短下肢装具の開発は,入院中だけではなく退院後の歩容の悪化や転倒を防ぐ事が出来,ADL・QOLの向上に結び付ける事が可能であると考えている。
【方法】対象は,本研究の趣旨に同意を得られた健常成人15名(男性6名,女性9名)とした。年齢23.7±2.6歳,身長164.2±8.5cm,体重54.1±10.3kgで,利き手は全員が右利きであった。また,測定に影響を及ぼすと考えられる疾患を有する者はいなかった。対象者は右片麻痺者を想定し右上下肢を使用せずに右下肢に装具を装着した。測定項目は足関節のベルト1本止める時間と下腿・足関節・足背の3本のベルトを止める時間の2項目とし,最大速度と自由速度の2つの速度での時間を測定した。測定順はランダムとし,測定前に2種類の装具の装着練習を十分に設けた。測定の開始肢位は椅子座位にて股関節90°屈曲位,膝関節90°屈曲位,足関節底背屈0°とし装具に足を置きベルトを止める前の状態に設定した。測定時間はストップウォッチを用いて,ベルトに手が触れた瞬間から,ベルトを止め終わり手がベルトから離れた瞬間までの時間を3回測定して平均値を算出し,小数点第3位を四捨五入した。また,測定後は2種類の装具の履きやすさをVisual Analogue Scale(以下VAS)を用いて測定した。10cmの横線に,左端が0で「履きにくい」,右端の10が「履きやすい」と記載し,対象者に線を引いてもらい,線の位置を定規で測定した。結果から,平均値を算出して小数点第2位を四捨五入した。統計学的手法は,2つの装具と装具を履く速度について二元配置分散分析,履きやすさのVASに関しては,Wilcoxonの符号付順位和検定を実施した。なお,SPSS 15.0J for Windowsを用いて,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,所属大学院倫理委員会の承認を得ており(承認番号12-242),ヘルシンキ宣言のもと対象者には十分に説明を行ない,同意を得た者に対して実施した。
【結果】足関節のベルト1本を止めた時間は,試作品最大速度が2.88±0.32秒,試作品自由速度が3.81±0.48秒,P-AFO最大速度が6.20±1.29秒,P-AFO自由速度が7.65±0.88秒であった。また,下腿・足関節・足背のベルト3本を止めた時間は,試作品最大速度が10.15±1.28秒,試作品自由速度が12.73±1.20秒,P-AFO最大速度が14.11±1.81秒,P-AFO自由速度が17.89±1.51秒であった。両項目ともに装具間と速度間の双方に有意差を認め,交互作用は認めなかった。履きやすさは,試作品が7.5±1.3cm,P-AFOが5.2±1.8cmであり,有意差を認めた。
【考察】装着時間は,足関節のベルト1本を止めた時間と3本全てのベルトを止めた時間の双方に装具間と速度間において有意差を認めた。試作品の装着時間はP-AFOの装着時間よりも速くVASの結果からも試作品の方が履きやすいと考えられた。また,主観的な感想からも「ベルトを角環に通さないと楽」などの意見が多かった。今回の研究結果より,ベルトを角環に通さない事が装具を履くスピードと関係し履きやすさにつながる要因であると考えた。平均値が3~5秒の差であるが,健常者を対象としているため片麻痺者にも同様の結果が得られるかについては今後の課題である。また,既に発表されているイージーリングを用いたP-AFOとの比較や固定力についても検討が必要である。
【理学療法学研究としての意義】装具を装着する事で歩行能力の向上が期待出来ても,装具を装着する事に時間が掛かり,装具を使用しなくなる事により歩容の悪化や転倒に繋がるケースが考えられる。一人で簡単に装着出来る短下肢装具の開発は,入院中だけではなく退院後の歩容の悪化や転倒を防ぐ事が出来,ADL・QOLの向上に結び付ける事が可能であると考えている。