[1380] 短下肢装具使用経験の有無による理学療法士間の短下肢装具に対する認識の違いの検討
キーワード:下肢装具, アンケート, 装具療法
【はじめに,目的】
理学療法士(以下,PT)は短下肢装具(以下,AFO)について卒前教育を受ける。またPTは臨床現場においてもAFOの選択から調節を含めた装具療法の中心を担っていることが多い。現在では装具療法に関するエビデンスも高くなり,今後さらにAFOの使用が増加することが予想され,他職種においてもAFOの知識が必要になる可能性がある。そこでわれわれは第29回日本義肢装具学会学術大会にてPTと作業療法士(以下,OT)間のAFOに対する認識の違いを明らかにする事でPTからOTへの装具療法に関する卒後教育の必要性について報告した。しかし卒前にAFOの教育を受けているPTにおいても臨床現場でのAFO使用経験の有無によってAFOに対する認識が異なり,装具療法に大きく影響する可能性がある。そこで今回AFO使用経験の有無によるPT間のAFOの認識の違いを明らかにするためにAFOに関するアンケート調査を実施した。
【方法】
対象は平成24年度から平成25年度に当法人のリハビリテーション科に属したPT23名(平均経験年数3.04年±3,AFO使用経験者(以下,経験者)14名,AFO使用未経験者(以下,未経験者)9名)とした。対象者にはAFOに関するアンケート調査を実施し,AFO使用経験の有無による2群の差を検討した。今回AFO使用経験者とはAFO処方に携わり,臨床現場においてAFOを使用した事がある者と定義した。アンケート内容は①AFOの利点,②AFOの欠点,③AFO使用による日常生活活動(以下,ADL)での利点,④AFO使用によるADLでの欠点の4設問とした。AFOの利点・欠点は一般的に定義されている内容をあらかじめ用意し,さらにPT4名(平均経験年数5.8±3.9年)の意見を参考に選択肢(利点15個,欠点13個)を決定した。またAFO使用によるADLでの利点・欠点の選択肢は機能的自立度評価法(Functional Independence Measure;以下,FIM)の運動項目13項目とした。これら4設問の各選択肢を無制限複数回答形式で実施し,その後各選択肢をFisher’s exact testを用いて2群の差を検討した。さらにPT一人あたりの項目選択数を算出し,2群間の4設問の差をMann WhitneyのU検定を用いて検討した。統計処理は統計ソフトPASW Statistics 18.0を使用し,有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき本研究は当院の倫理委員会の承認を得て行われており,対象者には口頭にて十分な説明を実施し,文書にて同意を得た。
【結果】
AFOの利点,欠点を問う設問では2群で差を認めた項目はなかった。AFO使用によるADLでの利点を問う設問では「ベッド移乗(p<0.05)」と「トイレ移乗(p<0.05)」において経験者で有意に選択数が多かった。AFO使用によるADLでの欠点を問う設問では2群で差を認めた項目はなかった。AFO使用経験の有無によるPT一人あたりの項目選択数においても4設問で2群に差を認めなかった。
【考察】
AFOの利点や欠点に対する認識,AFO使用によるADLでの欠点への認識はAFO使用経験の有無によって差がない事が示唆された。またPT一人あたりの項目選択数においても2群で4設問に差を認めなかった事からもAFOに対する認識に偏りがない事が推察される。しかし経験者は未経験者と比較しAFOを使用する事が「ベッド移乗」,「トイレ移乗」においてADLで利点になると考えていた。理学療法診療ガイドライン第1版(2011)をはじめ多くの先行研究において,AFOの使用が歩行能力の改善に有効であると報告している。しかし歩行動作のみならず移乗動作においてもAFOの使用がADLにおいて有効となる可能性は高く,経験者では未経験者と比較し移乗動作も含めてAFOの選択・調整を行っている。移乗動作の獲得はADL自立のためにも重要な項目であるため,早期から生活場面を想定した装具療法が実施できるように助言・指導を行うことで未経験者においてもより効果的にAFOを使用できる可能性がある。本研究の限界としては,臨床実習での経験や卒前の指導内容などの教育歴に左右される可能性が考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
AFO使用経験の有無によるPT間の認識の違いを明らかにする事でAFO使用未経験者においても早期から生活場面を想定した効果的な装具療法を実施できる可能性が示唆された。
理学療法士(以下,PT)は短下肢装具(以下,AFO)について卒前教育を受ける。またPTは臨床現場においてもAFOの選択から調節を含めた装具療法の中心を担っていることが多い。現在では装具療法に関するエビデンスも高くなり,今後さらにAFOの使用が増加することが予想され,他職種においてもAFOの知識が必要になる可能性がある。そこでわれわれは第29回日本義肢装具学会学術大会にてPTと作業療法士(以下,OT)間のAFOに対する認識の違いを明らかにする事でPTからOTへの装具療法に関する卒後教育の必要性について報告した。しかし卒前にAFOの教育を受けているPTにおいても臨床現場でのAFO使用経験の有無によってAFOに対する認識が異なり,装具療法に大きく影響する可能性がある。そこで今回AFO使用経験の有無によるPT間のAFOの認識の違いを明らかにするためにAFOに関するアンケート調査を実施した。
【方法】
対象は平成24年度から平成25年度に当法人のリハビリテーション科に属したPT23名(平均経験年数3.04年±3,AFO使用経験者(以下,経験者)14名,AFO使用未経験者(以下,未経験者)9名)とした。対象者にはAFOに関するアンケート調査を実施し,AFO使用経験の有無による2群の差を検討した。今回AFO使用経験者とはAFO処方に携わり,臨床現場においてAFOを使用した事がある者と定義した。アンケート内容は①AFOの利点,②AFOの欠点,③AFO使用による日常生活活動(以下,ADL)での利点,④AFO使用によるADLでの欠点の4設問とした。AFOの利点・欠点は一般的に定義されている内容をあらかじめ用意し,さらにPT4名(平均経験年数5.8±3.9年)の意見を参考に選択肢(利点15個,欠点13個)を決定した。またAFO使用によるADLでの利点・欠点の選択肢は機能的自立度評価法(Functional Independence Measure;以下,FIM)の運動項目13項目とした。これら4設問の各選択肢を無制限複数回答形式で実施し,その後各選択肢をFisher’s exact testを用いて2群の差を検討した。さらにPT一人あたりの項目選択数を算出し,2群間の4設問の差をMann WhitneyのU検定を用いて検討した。統計処理は統計ソフトPASW Statistics 18.0を使用し,有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき本研究は当院の倫理委員会の承認を得て行われており,対象者には口頭にて十分な説明を実施し,文書にて同意を得た。
【結果】
AFOの利点,欠点を問う設問では2群で差を認めた項目はなかった。AFO使用によるADLでの利点を問う設問では「ベッド移乗(p<0.05)」と「トイレ移乗(p<0.05)」において経験者で有意に選択数が多かった。AFO使用によるADLでの欠点を問う設問では2群で差を認めた項目はなかった。AFO使用経験の有無によるPT一人あたりの項目選択数においても4設問で2群に差を認めなかった。
【考察】
AFOの利点や欠点に対する認識,AFO使用によるADLでの欠点への認識はAFO使用経験の有無によって差がない事が示唆された。またPT一人あたりの項目選択数においても2群で4設問に差を認めなかった事からもAFOに対する認識に偏りがない事が推察される。しかし経験者は未経験者と比較しAFOを使用する事が「ベッド移乗」,「トイレ移乗」においてADLで利点になると考えていた。理学療法診療ガイドライン第1版(2011)をはじめ多くの先行研究において,AFOの使用が歩行能力の改善に有効であると報告している。しかし歩行動作のみならず移乗動作においてもAFOの使用がADLにおいて有効となる可能性は高く,経験者では未経験者と比較し移乗動作も含めてAFOの選択・調整を行っている。移乗動作の獲得はADL自立のためにも重要な項目であるため,早期から生活場面を想定した装具療法が実施できるように助言・指導を行うことで未経験者においてもより効果的にAFOを使用できる可能性がある。本研究の限界としては,臨床実習での経験や卒前の指導内容などの教育歴に左右される可能性が考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
AFO使用経験の有無によるPT間の認識の違いを明らかにする事でAFO使用未経験者においても早期から生活場面を想定した効果的な装具療法を実施できる可能性が示唆された。