第49回日本理学療法学術大会

講演情報

発表演題 ポスター » 運動器理学療法 ポスター

スポーツ2

2014年6月1日(日) 09:30 〜 10:20 ポスター会場 (運動器)

座長:渡邊裕之(北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科理学療法学専攻)

運動器 ポスター

[1387] サッカー選手における足関節のサポーターおよびテーピングの制動効果

岩瀬裕亮, 岡本龍児 (国際医療福祉大学福岡保健医療学部理学療法学科)

キーワード:サポーター, テーピング, 足関節捻挫

【はじめに,目的】
サッカー部に所属している中学生・高校生が足関節捻挫を発症し,病院を受診してきた際に,テーピングの方法を習ってきたものの,練習や試合の時にテーピングを巻く技術がないことが多く見られる。また,テーピングの使用は経済的負担が大きいため,代わりにサポーターをしている子も多く見られる。そこで本研究の目的は,サポーターとテーピングの効果について検証し,サポーターは本当に選手に勧められるのかを比較・検討した。
【方法】
対象は,サッカー経験者で足関節に捻挫の既往があるもの8名(患側右足8足,年齢21.8±0.4歳,身長176.8±4.8cm,体重67.1±5.8kg)とした。固定は,サポーターでは,高校サッカーで頻繁に使用されている内反制限を目的としたZAMST社製A1を使用した。テーピング(エコノミーホワイト(固定)テープ38mm)では,アスレチックテープの足関節捻挫に対する基本のテーピングに準じて巻いた。1日目は,サポーター4名,テーピング4名で行った。2日目は,同一被験者で1日目にサポーターであった4名はテーピング,1日目テーピングであった4名はサポーターで行った。サポーター着用時とテーピング施行時でそれぞれ運動開始前とフットサル開始後15分おきに,60分後まで計測した。計測角度は,足関節底背屈,底背屈0°・底屈25°での足関節内反・外反の6種類とした。底背屈は,日本整形外科学会のROMを参考とした。内反・外反の計測機器は,自作にて底屈角度の変更・固定ができ内反・外反を測定できるものを使用し,1°単位で計測した。計測結果よりゆるみ率を以下の式より算出した。ゆるみ率(%)=(固定後で各時間での角度)-(固定後で運動開始前の角度)/(素足での角度)-(固定後で運動開始前の角度)×100。サポーター群をS群,テーピング群をT群とした。統計処理は,二元配置分散分析反復測定を用い,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
計測に先立ち,全対象者に文書及び口頭にて研究の趣旨を説明し,同意書への署名をもって同意を得た。なお,本研究計画は国際医療福祉大学の倫理審査会の承認(番号13-27)を得ている。
【結果】
二元配置分散分析反復測定において背屈のゆるみ率で有意差が認められた。背屈のゆるみ率は,S群では,15分後16.7±18.2%,30分後35.2±19.4%,45分後49.2±15.4%,運動終了後67.3±10.8%であった。T群では,15分後5.6±9.8%,30分後27.5±15.2%,45分後33.1±16.6%,運動終了後45.6±19.6%であった。その他,底屈,底背屈0°・底屈25°での内反・外反のゆるみ率では有意差は認められなかった。内反のゆるみ率は,15分後で約20%,30分後で約30%,45分後で約60%,運動終了後で約70%であった。外反のゆるみ率は,15分後で約20%,30分後で約35%,45分後で約50%,運動終了後で約60%であった。
【考察】
結果より,背屈のゆるみ率では,サポーターに比べテーピングの固定性の方が有意に高いことが認められた。また,底屈,底背屈0°・底屈25°での内反・外反ではサポーター・テーピングともにゆるみ率の変化に差が認められなかった。これより,足関節捻挫で多い内反方向への制動は,サポーターでも十分に効果があると示唆された。よって,中学生・高校生では,テーピングを巻く技術や経済面を考えると,足関節内反捻挫ではサポーターでも代用できると考えた。また,時間的変化で見ていくと,サポーター・テーピングともに,内反のゆるみ率では,30分後で約30%,45分後で約60%,60分後で約70%であった。サッカーの競技時間は,60分から90分であるため,前半終了後のハーフタイムの間に,サポーター・テーピングとも1度外して巻き直すことで制動効果を持続できると考えた。
【理学療法学研究としての意義】
今回の研究結果から,内反方向への制動は,サポーターでも十分固定ができることが示唆された。また,30分から45分後にかけて,サポーター・テーピングともに1度外して巻き直すことで制動効果が持続できると考えた。