[1399] Lung insufflation capacity(LIC)を用いた呼吸理学療法(LIC Training)の効果
Keywords:Lung Insufflation capacity (LIC), 神経筋疾患, 気管切開
【はじめに】
神経筋疾患患者に対する呼吸理学療法は呼吸器合併症の予防と改善を目的としており重要である。深呼吸による肺・胸郭の伸張と咳嗽力の増強を目的とした最大強制吸気量(MIC)は非常に有用であるが,気管切開後ではair stackが不可能の為MICが出来ない。そこでS W.Kang,J R.Bachらによって考案され,本邦では寄本らによる実践報告がある,一方向弁バルブとバックバルブマスクを使用した他動的な最大強制吸気量であるLICがある。本研究の目的は,TPPVを使用している神経筋疾患患者に対し,LICを用いた呼吸理学療法(LIC Training)の効果を検討する事である。
【方法】
対象は,呼吸理学療法の依頼があったTPPVを使用している神経筋疾患患者3名。介入当時,いずれの患者も排痰機器の導入が困難であった。患者全員のVC,LICを測定した。2名は肺炎による加療中に実施した。LIC測定時に併せて気道内圧を測定し,下限圧をcritical opening pressure,上限圧を60cmH2Oと設定しリスク管理をした。以上の方法を用いて入院中の呼吸機能の経過を後方視的に検討した。
【倫理的配慮】
当院倫理委員会の承認を経て,本人もしくは保護者に対し同意を得た。
【結果】
肺炎加療中の患者2名に対してはLIC時に聴診器を用いてcritical opening pressureを測定し,下限圧以上で排痰として実施した。実施前後でVTiの増加が見られ,LIC Trainingを継続する事でVTiとLICに増加がみられた。残りの1名はLIC Trainingの継続実施によりVCとLICに増加が見られ,気管切開以前のVC,MICの値と比較しても増加していた。胸部レントゲン画像では肺炎像の改善が確認できた。また,3名(うち1名は保護者)のPatient Reported Outcomes(PROs)では好意的な反応が見られ,3名ともLIC Trainingの継続を強く希望していた。
【考察】
日常診療でも排痰機器やバックバルブマスクを用い,critical opening pressureを得て排痰やMICによる咳嗽補助,肺・胸郭ストレッチを実施しているが,本研究における症例では当時排痰機器の導入困難であり,気管切開されているためMICも不可であった。本研究で実施したLIC Trainingでは1方向弁が息止めの役割を果たすことで気管切開されていても最大強制吸気量を得る事ができ,排痰や肺・胸郭ストレッチが得られた。その為VCやVTiの増加,排痰効果が得られたと考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
呼吸理学療法において,深呼吸は非常に重要である。しかし,神経筋疾患をはじめとした拘束性換気障害を有している患者において自身で深呼吸を行うことは困難である。代替手段としてMICが用いられているが,気管切開をした患者はMICが実施出来ない。本研究で用いたLICは気管切開後でも患者が深呼吸を得られる手技である為,MIC同様に肺合併症の予防及び改善に有効である。LIC Trainingは気管切開後の呼吸理学療法の中心の一つと考えられる為,今後も検討を続けていく必要がある。
神経筋疾患患者に対する呼吸理学療法は呼吸器合併症の予防と改善を目的としており重要である。深呼吸による肺・胸郭の伸張と咳嗽力の増強を目的とした最大強制吸気量(MIC)は非常に有用であるが,気管切開後ではair stackが不可能の為MICが出来ない。そこでS W.Kang,J R.Bachらによって考案され,本邦では寄本らによる実践報告がある,一方向弁バルブとバックバルブマスクを使用した他動的な最大強制吸気量であるLICがある。本研究の目的は,TPPVを使用している神経筋疾患患者に対し,LICを用いた呼吸理学療法(LIC Training)の効果を検討する事である。
【方法】
対象は,呼吸理学療法の依頼があったTPPVを使用している神経筋疾患患者3名。介入当時,いずれの患者も排痰機器の導入が困難であった。患者全員のVC,LICを測定した。2名は肺炎による加療中に実施した。LIC測定時に併せて気道内圧を測定し,下限圧をcritical opening pressure,上限圧を60cmH2Oと設定しリスク管理をした。以上の方法を用いて入院中の呼吸機能の経過を後方視的に検討した。
【倫理的配慮】
当院倫理委員会の承認を経て,本人もしくは保護者に対し同意を得た。
【結果】
肺炎加療中の患者2名に対してはLIC時に聴診器を用いてcritical opening pressureを測定し,下限圧以上で排痰として実施した。実施前後でVTiの増加が見られ,LIC Trainingを継続する事でVTiとLICに増加がみられた。残りの1名はLIC Trainingの継続実施によりVCとLICに増加が見られ,気管切開以前のVC,MICの値と比較しても増加していた。胸部レントゲン画像では肺炎像の改善が確認できた。また,3名(うち1名は保護者)のPatient Reported Outcomes(PROs)では好意的な反応が見られ,3名ともLIC Trainingの継続を強く希望していた。
【考察】
日常診療でも排痰機器やバックバルブマスクを用い,critical opening pressureを得て排痰やMICによる咳嗽補助,肺・胸郭ストレッチを実施しているが,本研究における症例では当時排痰機器の導入困難であり,気管切開されているためMICも不可であった。本研究で実施したLIC Trainingでは1方向弁が息止めの役割を果たすことで気管切開されていても最大強制吸気量を得る事ができ,排痰や肺・胸郭ストレッチが得られた。その為VCやVTiの増加,排痰効果が得られたと考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
呼吸理学療法において,深呼吸は非常に重要である。しかし,神経筋疾患をはじめとした拘束性換気障害を有している患者において自身で深呼吸を行うことは困難である。代替手段としてMICが用いられているが,気管切開をした患者はMICが実施出来ない。本研究で用いたLICは気管切開後でも患者が深呼吸を得られる手技である為,MIC同様に肺合併症の予防及び改善に有効である。LIC Trainingは気管切開後の呼吸理学療法の中心の一つと考えられる為,今後も検討を続けていく必要がある。