[1403] 急性期脳血管障害症例に対するShort Form Berg Balance Scaleを用いた退院先の予測
Keywords:Short Form Berg Balance Scale, 脳血管障害, 早期退院
【目的】近年,急性期病院では在院日数が短縮傾向にあるため,発症早期から退院先を予測することは,在宅復帰後および転院後に必要なリハビリテーションサービスを検討する上で重要である。脳梗塞症例の在宅復帰の予測について,発症後2週時のBerg Balance Scale(BBS)は,カットオフ値が40点と報告されている(久保田ら,2010)。一方で,BBSは,測定項目が多く時間がかかり疲労や体調の影響を受けることが指摘されている。Chouら(2006)は,脳血管障害症例を対象にBBSを7項目3段階評価に簡略化したShort Form BBS(SFBBS)を提案している(2006)。SFBBSは,簡易的かつ短時間で評価が可能であるが在宅復帰の予測についての報告は少ない。本研究の目的は,SFBBSによる在宅復帰の予測について検討することとした。
【方法】対象は当院に入院した脳血管障害症例55名(脳梗塞(Cerebral Infarction:CI)37名,脳出血(Cerebral Hemorrhage:CH)18名)であった。調査項目は,年齢,在院日数,退院先(在宅復帰:H群,転院:T群)とした。評価項目は,発症後2週時および退院時のNIHSS,SIAS,BBSおよびFIMとした。SFBBSはBBSの下位項目7つで構成され28点満点である。SFBBSの下位項目は,BBSの立ち上がり,Functional Reach Test,閉眼閉脚立位,床からものを拾う,左右の振り向き,継ぎ足立位,片脚立位であった。SFBBSの各項目の得点は,BBSの5段階評価のうち1点から3点を2点とし,0点,2点,4点の3段階評価とした。統計学的分析は,H群とT群の基本特性,在院日数の比較には対応のないt検定,退院先の比較にはχ2検定を用いた。また,2週時におけるCIとCHの比較には対応のないt検定を用いた。CI,CHにおける退院先の予測については,従属変数を退院先,独立変数を2週時BBSおよび2週時SFBBSとしてロジスティック回帰分析による在宅復帰の予測モデルを作成し,ROC曲線から在宅復帰のカットオフ値を算出した。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は高木病院の倫理委員会の承認(承認番号77-2)を得た後に実施した。
【結果】在院日数はCI27.2±13.6日,CH38.6±15.4日とCIが有意に短く,在宅復帰率はCI83.8%,CH38.8%とCIが有意に高かった(それぞれp<0.01)。2週時の各評価は,H群では有意差がなかったが,T群ではNIHSSではCI5.5±3.5点,CH12.2±8.2点とCHが有意に高く,SIASはCI58.8±11.2点,CH33.3±25.9点,FIMはCI87.8±15.6点,CH52.8±37.5点といずれもCHが有意に低かった(それぞれp<0.05)。ロジスティック回帰分析の結果,在宅退院の予測モデルのオッズ比は,2週時BBSのCIでは1.07(95%信頼区間1.01-1.13),CHでは1.13(95%信頼区間1.03-1.25),2週時SFBBSがCIでは1.12(95%信頼区間1.01-1.23),CH1.23(95%信頼区間1.04-1.49)であった(それぞれp<0.01)。ROC曲線を用いた在宅復帰のカットオフ値は,2週時BBSがCIでは45点(感度74.2%,特異度83.3%),CHでは26点(感度71.0%,特異度83.3%)であり,2週時SFBBSがCIでは21点(感度100.0%,特異度81.8%),CHでは7点(感度100.0%,特異度81.8%)であった。
【考察】CHは,CIに対して入院期間が長く,自宅復帰率が低く,T群におけるCHはCIと比較して重症で機能障害が重度であった。CH後の脳浮腫は,発症1週から2週後が極期となり,正常構造の変形,頭蓋内圧亢進が生じるため,発症後2週では,脳浮腫による機能障害が影響していたと考えられる。CIでの在宅復帰のカットオフ値は,BBSが45点,SFBBSが21点であり,転倒リスクのカットオフ値であるBBS45点,SFBBS23点と近似していたことから,急性期病院からの在宅復帰には早期から高いバランス能力が必要である。CHでのBBSが26点,SFBBSが7点であった。基本動作レベルは立ち上がり,立位が取れる程度であり,入院時の転倒インシデントのカットオフ値について,BBS29点との報告もある(Maeda et al.2009)。CHでは脳浮腫減少後の機能改善が見込めることから,転倒に対する予防策および在宅復帰を見据えたリハビリテーションプログラムを立案,実施する必要がある。
【理学療法学研究としての意義】急性期脳血管障害症例において,簡便かつ客観的な指標であるSFBBSで退院先が予測できることは,発症早期から退院先を見据えたリハビリテーションプログラム立案する上で重要である。
【方法】対象は当院に入院した脳血管障害症例55名(脳梗塞(Cerebral Infarction:CI)37名,脳出血(Cerebral Hemorrhage:CH)18名)であった。調査項目は,年齢,在院日数,退院先(在宅復帰:H群,転院:T群)とした。評価項目は,発症後2週時および退院時のNIHSS,SIAS,BBSおよびFIMとした。SFBBSはBBSの下位項目7つで構成され28点満点である。SFBBSの下位項目は,BBSの立ち上がり,Functional Reach Test,閉眼閉脚立位,床からものを拾う,左右の振り向き,継ぎ足立位,片脚立位であった。SFBBSの各項目の得点は,BBSの5段階評価のうち1点から3点を2点とし,0点,2点,4点の3段階評価とした。統計学的分析は,H群とT群の基本特性,在院日数の比較には対応のないt検定,退院先の比較にはχ2検定を用いた。また,2週時におけるCIとCHの比較には対応のないt検定を用いた。CI,CHにおける退院先の予測については,従属変数を退院先,独立変数を2週時BBSおよび2週時SFBBSとしてロジスティック回帰分析による在宅復帰の予測モデルを作成し,ROC曲線から在宅復帰のカットオフ値を算出した。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は高木病院の倫理委員会の承認(承認番号77-2)を得た後に実施した。
【結果】在院日数はCI27.2±13.6日,CH38.6±15.4日とCIが有意に短く,在宅復帰率はCI83.8%,CH38.8%とCIが有意に高かった(それぞれp<0.01)。2週時の各評価は,H群では有意差がなかったが,T群ではNIHSSではCI5.5±3.5点,CH12.2±8.2点とCHが有意に高く,SIASはCI58.8±11.2点,CH33.3±25.9点,FIMはCI87.8±15.6点,CH52.8±37.5点といずれもCHが有意に低かった(それぞれp<0.05)。ロジスティック回帰分析の結果,在宅退院の予測モデルのオッズ比は,2週時BBSのCIでは1.07(95%信頼区間1.01-1.13),CHでは1.13(95%信頼区間1.03-1.25),2週時SFBBSがCIでは1.12(95%信頼区間1.01-1.23),CH1.23(95%信頼区間1.04-1.49)であった(それぞれp<0.01)。ROC曲線を用いた在宅復帰のカットオフ値は,2週時BBSがCIでは45点(感度74.2%,特異度83.3%),CHでは26点(感度71.0%,特異度83.3%)であり,2週時SFBBSがCIでは21点(感度100.0%,特異度81.8%),CHでは7点(感度100.0%,特異度81.8%)であった。
【考察】CHは,CIに対して入院期間が長く,自宅復帰率が低く,T群におけるCHはCIと比較して重症で機能障害が重度であった。CH後の脳浮腫は,発症1週から2週後が極期となり,正常構造の変形,頭蓋内圧亢進が生じるため,発症後2週では,脳浮腫による機能障害が影響していたと考えられる。CIでの在宅復帰のカットオフ値は,BBSが45点,SFBBSが21点であり,転倒リスクのカットオフ値であるBBS45点,SFBBS23点と近似していたことから,急性期病院からの在宅復帰には早期から高いバランス能力が必要である。CHでのBBSが26点,SFBBSが7点であった。基本動作レベルは立ち上がり,立位が取れる程度であり,入院時の転倒インシデントのカットオフ値について,BBS29点との報告もある(Maeda et al.2009)。CHでは脳浮腫減少後の機能改善が見込めることから,転倒に対する予防策および在宅復帰を見据えたリハビリテーションプログラムを立案,実施する必要がある。
【理学療法学研究としての意義】急性期脳血管障害症例において,簡便かつ客観的な指標であるSFBBSで退院先が予測できることは,発症早期から退院先を見据えたリハビリテーションプログラム立案する上で重要である。