第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 神経理学療法 ポスター

脳損傷理学療法18

Sun. Jun 1, 2014 9:30 AM - 10:20 AM ポスター会場 (神経)

座長:権藤要(星ヶ丘医療センターリハビリテーション部)

神経 ポスター

[1404] 急性期脳卒中患者の初回評価時における発症30日目の歩行予測

堀順1, 樋口謙次2, 木山厚1, 保木本崇弘2, 中村高良3, 耒住野健二4, 中山恭秀4, 安保雅博5 (1.東京慈恵会医科大学附属病院リハビリテーション科, 2.東京慈恵会医科大学附属柏病院リハビリテーション科, 3.東京慈恵会医科大学葛飾医療センターリハビリテーション科, 4.東京慈恵会医科大学附属第三病院リハビリテーション科, 5.東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座)

Keywords:急性期脳卒中, 起居, 歩行予測

【目的】
急性期病院では,脳卒中患者本人やその家族に発症早期から歩行の見通しを尋ねられることがある。また,脳卒中患者の臨床場面で発症早期の機能面等から約1ヶ月後は歩行可能と予測するが,監視が必要かの予測に難渋する。一方,急性期脳卒中患者の歩行の自立や監視については高次脳機能や運動麻痺等の影響から転倒リスクを考慮して判断しなければならない。しかし,多くは理学療法士の経験によるところが大きい。よって,脳卒中患者の発症30日目(以下30日目)の歩行予測をすることは重要で,初回よりベッド上評価から目標を見据えて理学療法を展開することは必要である。そこで30日目の歩行の自立や監視を初回評価の各項目から予測する因子を明らかにすることを目的とした。
【方法】
2010年4月から2012年12月まで附属4病院に入院したくも膜下出血を除く初発脳卒中患者で,発症前の歩行は自立し,発症から30日以上在院した101名中,30日目に歩行が不可能または重介助の者を除き,軽介助以上で歩行実施可能である45名(年齢65.2±15.4歳,男性23名,女性22名,右麻痺21名,左麻痺24名,脳梗塞34名,脳出血11名,発症から初回評価の期間5.3±2.6日)を対象とした。初回評価項目は,年齢,Glasgow Coma Scale合計点(以下GCS),高次脳機能障害の有無,BRS,前下方へのリーチ(端坐位にて非麻痺側上肢で足部を触る1不可~5両足接触可能),片側骨盤挙上(端坐位で片側ずつ骨盤を挙上1不可~4両側離殿3秒以上),Ability for Basic Movement Scale2の寝返り,起居,座位保持(1禁止~6完全自立),深部覚の有無とした。30日目の歩行自立度はFunctional Ambulation Categories(以下FAC)を参考に判定し,歩行に監視,軽介助が必要な者(FAC2,3)を歩行監視群(以下監視群),室内歩行自立以上(FAC4,5)を歩行自立群(以下自立群)とした。各項目は附属4病院共通の脳卒中評価表より後方視的に調査した。
解析は,自立群と監視群の妥当性を確認するため,先行研究より報告されたTimed up and go test(以下TUG)の歩行自立と監視のカットオフ値15.6秒と対象の30日目のTUGのデータ間で感度,特異度を算出した。その後初回項目に対し自立群,監視群の2群間で,名義尺度にχ2検定を,他はMann-WhitenyのU検定を用い比較検討を行った。単変量解析で有意差を認めた項目を説明変数,30日目の歩行自立及び監視を目的変数としてロジスティック回帰分析を行った。なお投入する説明変数は多重共線性を考慮し,説明変数間同士で0.6以上の高い相関を認めた項目を選別した。また抽出された項目について,receiver operating characteristic(以下ROC)曲線を作成し,Youden指数(感度+特異度-1)が最大となるカットオフ値を抽出した。統計はSPSSver.20を使用し,有意水準は5%未満とした。
【説明と同意】
本研究は本大学倫理委員会の承認を得て,臨床研究に関する倫理指針に遵守して実施した。
【結果】
先行研究のカットオフ値と自立,監視間で感度80%,特異度94.4%であった。自立群は20名(67.0±14.3歳),監視群は25名(63.6±16.3歳)であった。自立群,監視群間(自立群中央値/監視群中央値)では,年齢,高次脳機能障害の有無,GCS(14.9/14.3),寝返り(5.7/4.2),起居(5.5/3.4),座位保持(5.7/4.0),片側骨盤挙上(3.0/2.0)に有意差が認められた。多重共線性を考慮し,寝返り,座位保持を除く上記の5項目にロジスティック回帰分析を行った結果,起居(オッズ比3.0,95%信頼区間1.5-6.0)において有意差が認められ,判別的中率は76.7%であった。また,起居に対してROC曲線を作成し,カットオフ値が5(修正自立)のとき(感度79%,特異度75%,AUC0.838),Youden指数は最大であった。
【考察】
先行研究のカットオフ値と本研究の自立,監視の判断は感度80%,特異度94.4%と大きな隔たりはなく妥当であると考えられた。解析の結果より起居が抽出され,初回評価の起居が修正自立であることが,30日目の歩行自立の予測に有用であると示唆された。30日目の監視を含まない歩行の自立には,起居動作を可能とする体幹機能などの全般的な動作能力が初回から必要であると考えられた。二木(83年)は入院時ベッド上動作自立であった45名中40名が入院1ヶ月以内に歩行は自立したとしており,本研究は初回起居自立25名中19名が,30日目の歩行は自立したことと概ね同様の結果で,初回評価時に起居動作が自立かを確認することは重要であると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
急性期脳卒中患者において,ベッド上の初回評価から1ヶ月後の歩行自立の可能性を提示することができると考えられた。また本研究の結果は若手の理学療法士への指導や理学療法の目標設定をする上で有用な情報であると考えられた。