[1406] 当院Branch atheromatous disease(BAD)患者における急性期症状の進行及び退院時機能と病巣位置の関係について
Keywords:BAD, 病巣位置, 機能予後
【はじめに,目的】レンズ核線条体動脈(LSA)領域の脳梗塞であるBADは,穿通枝入口部でのアテロームの進展に伴う狭窄や閉塞により発生し,頭部MRI画像(DWI)にて3スライス以上に及ぶことが診断基準となっている。一般にBADは発症初期に軽度の神経症状を示すが,入院後に進行し重度運動麻痺となることが知られ,機能予後は不良といわれている。しかし臨床において進行の程度(進行度)は患者によって異なり,まれに良好な機能予後を獲得するものも存在する。その要因が画像における病巣の位置やサイズと関係している可能性を考えた。そこで今回,当院BAD患者を退院時の状態に応じて分類し,急性期における進行度と画像所見の関連について退院時機能を踏まえて検討したので報告する。
【方法】対象は2011~2012年の2年間に当院にてBADと診断された患者の内,入院後速やかに頭部DWIを実施,入院後にNIH stroke scale(NIHSS)が1点以上進行し神経症状が悪化した12名。年齢は67.6±9.43歳,男性7例,女性5例,右片麻痺4名,左片麻痺8名,全例とも発症前ADLは自立し独歩可能であった。これら患者を退院時modified Rankin Scale(mRS)1点獲得群(良好群)と2点以上の群(不良群)に分類し,両群の急性期における進行前後の変化について神経症状と画像所見から追った。神経症状評価には進行前/後のNIHSSと進行完成後のBrunnstrom Recovery Stage(BRS)にて示し,画像所見は入院時DWI(進行前画像)と2~4日後再撮影したDWI(進行完成後画像)のaxial像における傍側脳室体部(SC)レベルを用い,病巣位置の特定とサイズ(病巣前後径(mm))を計測した。なお,病巣位置の特定には傍側脳室体部を前後に4分割(①~④)し画像を規定した上で行った。退院時機能評価にはBRSとFunctional Independence Measure(FIM)を用いた。
【倫理的配慮,説明と同意】当院倫理委員会の承認を得て行い,全対象に対し本研究の説明と同意を得た。
【結果】良好群は4名,不良群は8名であった。両群における進行前後(以下進行前→後)の変化は,NIHSS:良好群1.50±0.58→3.00±0.0点,不良群2.10±0.71→6.70±1.30点,進行完成後BRSは良好群:上肢4.0±1.41/手指3.6±0.96/下肢4.8±0.96,不良群:上肢2.3±0.53/手指1.8±0.52/下肢3.1±0.46。不良群は自力歩行不可,特に手/手指には重度の麻痺を呈した。病巣位置は進行前/後で変化は無く,良好群4例は①-②,不良群は4例が②-③,4名が③のみに位置し,病巣サイズは良好群17.38±1.8→23.75±5.59mm,不良群17.28±3.35→21.61±4.71mmと両群に明らかな増加がみられ,病巣の拡大がみられた。退院時機能について,BRSは良好群:上肢5.8±0.50/手指5.0±0.82/下肢6.0±0.0,不良群:上肢4.0±0.53/手指3.1±0.74/下肢5.1±0.99。FIMは良好群4例とも126点を獲得し上肢機能は実用手レベルを獲得したが,不良群はFIM123.9±1.06点と自立指標である100点以上は獲得したが上肢/手指は補助手レベルにとどまり明らかな機能低下が残存した。
【考察】病巣サイズの増加は血管内でのアテロームの進展が起こっていることを示しており,本結果から両群にみられた。進行前画像において病巣が①-②付近に位置した良好群の進行度は軽度にとどまったのに対し,②-③付近の不良群は重度であった。この両群の差異は病巣と錐体路の位置関係が考えられる。小西は,錐体路はLSA領域の後上方を通り両者は密接する事を示し,谷口はSCレベルでの錐体路は②-③領域を通り内包後脚へ下降することを報告している。さらに錐体路は前方から「顔面/上肢/体幹/下肢」と並び,②-③領域も同様の配置が考えられる。上記より,進行前画像において病巣が中部から後方付近の②-③領域に位置した場合,病巣の進展に伴い錐体路と接する範囲が増加する為,進行度は重度となり退院時にも機能低下が残存するが,同部位より外れた位置ならば病巣が伸展しても接する範囲は僅かとなり,進行度は軽く良好な機能予後を獲得することが考えられた。さらに本結果から病巣が③付近に位置する場合,より重症化することが示唆された。また,進行度への影響は病巣のサイズよりも位置が重要である可能性が考えられた。
【理学療法学研究としての意義】重度進行し予後不良の可能性があるBADに対し,進行前画像における病巣位置から進行度や退院時機能を予測出来ることは,早期リハビリテーションを行う上でのリスク管理,治療プログラムの立案,ゴール設定の一助になると考える。
【方法】対象は2011~2012年の2年間に当院にてBADと診断された患者の内,入院後速やかに頭部DWIを実施,入院後にNIH stroke scale(NIHSS)が1点以上進行し神経症状が悪化した12名。年齢は67.6±9.43歳,男性7例,女性5例,右片麻痺4名,左片麻痺8名,全例とも発症前ADLは自立し独歩可能であった。これら患者を退院時modified Rankin Scale(mRS)1点獲得群(良好群)と2点以上の群(不良群)に分類し,両群の急性期における進行前後の変化について神経症状と画像所見から追った。神経症状評価には進行前/後のNIHSSと進行完成後のBrunnstrom Recovery Stage(BRS)にて示し,画像所見は入院時DWI(進行前画像)と2~4日後再撮影したDWI(進行完成後画像)のaxial像における傍側脳室体部(SC)レベルを用い,病巣位置の特定とサイズ(病巣前後径(mm))を計測した。なお,病巣位置の特定には傍側脳室体部を前後に4分割(①~④)し画像を規定した上で行った。退院時機能評価にはBRSとFunctional Independence Measure(FIM)を用いた。
【倫理的配慮,説明と同意】当院倫理委員会の承認を得て行い,全対象に対し本研究の説明と同意を得た。
【結果】良好群は4名,不良群は8名であった。両群における進行前後(以下進行前→後)の変化は,NIHSS:良好群1.50±0.58→3.00±0.0点,不良群2.10±0.71→6.70±1.30点,進行完成後BRSは良好群:上肢4.0±1.41/手指3.6±0.96/下肢4.8±0.96,不良群:上肢2.3±0.53/手指1.8±0.52/下肢3.1±0.46。不良群は自力歩行不可,特に手/手指には重度の麻痺を呈した。病巣位置は進行前/後で変化は無く,良好群4例は①-②,不良群は4例が②-③,4名が③のみに位置し,病巣サイズは良好群17.38±1.8→23.75±5.59mm,不良群17.28±3.35→21.61±4.71mmと両群に明らかな増加がみられ,病巣の拡大がみられた。退院時機能について,BRSは良好群:上肢5.8±0.50/手指5.0±0.82/下肢6.0±0.0,不良群:上肢4.0±0.53/手指3.1±0.74/下肢5.1±0.99。FIMは良好群4例とも126点を獲得し上肢機能は実用手レベルを獲得したが,不良群はFIM123.9±1.06点と自立指標である100点以上は獲得したが上肢/手指は補助手レベルにとどまり明らかな機能低下が残存した。
【考察】病巣サイズの増加は血管内でのアテロームの進展が起こっていることを示しており,本結果から両群にみられた。進行前画像において病巣が①-②付近に位置した良好群の進行度は軽度にとどまったのに対し,②-③付近の不良群は重度であった。この両群の差異は病巣と錐体路の位置関係が考えられる。小西は,錐体路はLSA領域の後上方を通り両者は密接する事を示し,谷口はSCレベルでの錐体路は②-③領域を通り内包後脚へ下降することを報告している。さらに錐体路は前方から「顔面/上肢/体幹/下肢」と並び,②-③領域も同様の配置が考えられる。上記より,進行前画像において病巣が中部から後方付近の②-③領域に位置した場合,病巣の進展に伴い錐体路と接する範囲が増加する為,進行度は重度となり退院時にも機能低下が残存するが,同部位より外れた位置ならば病巣が伸展しても接する範囲は僅かとなり,進行度は軽く良好な機能予後を獲得することが考えられた。さらに本結果から病巣が③付近に位置する場合,より重症化することが示唆された。また,進行度への影響は病巣のサイズよりも位置が重要である可能性が考えられた。
【理学療法学研究としての意義】重度進行し予後不良の可能性があるBADに対し,進行前画像における病巣位置から進行度や退院時機能を予測出来ることは,早期リハビリテーションを行う上でのリスク管理,治療プログラムの立案,ゴール設定の一助になると考える。