[1419] Point Cluster法を用いた落下着地時の膝の動態解析
キーワード:三次元動作解析, 膝関節, 着地動作
【はじめに,目的】
スポーツ動作ではジャンプ及びその着地動作が要求されることが多く,損傷や他の膝外傷予防の観点からも,片脚着地動作時の膝関節運動の男女間の特徴については明らかにする必要がある。しかし,従来の光学式動作解析機器では伸展と屈曲以外の関節運動に大きな誤差を生じる可能性があると報告されてきた。Point Cluster Technique(以下PC法)は,実際の骨運動との整合性が高いことが報告されている。したがって今回はPC法を用いて着地動作の計測を行った。今回PC法にて片脚着地動作の動作解析を行い,健常男性群(男性群),健常女性群間(女性群)での動作を比較することで,健常女性における動作の特徴を見出すことを目的とした。
【方法】
下肢に既往のない健常男性(22歳~26歳:平均年齢22.6±1.26),健常女性(18歳~22歳:平均年齢20±0.87歳)を被験者とした。身体特性はそれぞれ,男性群身長1.71±0.06m,体重64.5±8.3kg,。女性群身長1.59±0.06m,体重52.5±7.1kg,肥満度20.7±3.0であった。着地動作時の運動学データ計測のために赤外線カメラ8台を用いた三次元動作解析装置VICONMX(VICON Motion Systems社,Oxford)を用いて,サンプリング周波数120Hzで計測した。PC法に準じ,直径14mmの赤外線反射マーカーを25個貼付した。得られた各標点の座標データに対し,Andriacchiの開発したPC法演算プログラムで演算処理を行い,膝関節の屈曲・伸展角度,内反・外反角度,内旋・外旋角度,大腿骨座標系原点に対する脛骨座標系原点の前後距離を算出した。計測方法は,被験者は30cmの台からの落下による片脚着地動作を行った。立位時は足部内側間20cm,足先を台の縁とし,着地地点は30cm前方とした。解析区間は着地地点から膝関節最大角度までとし,着地時の膝関節各角度と前後位置,各膝関節最大角度と前後位置を求めた。また,膝関節最大角度時から,着地時を減じ,各運動角度量と前後運動量を算出した。さらに,各角度の最大角度到達時間を求め,各関節運動量から最大運動到達時間を除し,各関節運動速度を算出した。男性群と女性群の比較は,正規分布が確認された場合は,2標本t検定を行った。正規分布が確認できなかった場合は,Mann-WhiteneyのU検定を行った。解析にはDr.SPSSIIfor windows(エス・ピー・エス社,東京)を使用した。なお,数値は平均±標準偏差で表し,p<0.05を持って有意とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
研究の実施に先立ち広島国際大学医療研究倫理委員会にて承認を得た。なお,すべての被験者に研究の目的と内容を説明し,文書による同意を得たうえで計測を行った。
【結果】
着地時において女性群は外反,男性群は内反で有意差が認められた。(女性群 外反2.98°,男性群 内反2.95°,p<0.05)。また,着地時における女性群の内旋運動角度量は,男性群と比較して有意に小さかった。(女性群7.96°,男性群13.44°,p<0.05)。2群の各関節運動の最大運動角度に達する関節運動の順序は,ともに内反または外反と屈曲が同時期に起こり,その後内旋が生じた。最大運動到達時間においては2群間において有意差は認められなかった。各関節運動速度に関しては女性群において男性群と比較し膝関節内旋運動速度が有意に遅延していた。(女性群10.07°/sec,男性群19.48°/sec,p<0.01)。その他の膝関節運動速度において有意差は認められなかった。
【考察】
女性群は男性群と比較し,着地時に膝関節外反位を示した。外反位での片脚立位では膝関節は安定性を獲得することが困難であり,過外旋もしくは過伸展でのみ安定性を獲得するとされている。また,膝関節内旋運動角度量においても男性群と比較し,女性群では有意に小さかった。膝関節は屈曲に伴い内旋を生じさせることで膝関節の安定性を獲得するとされている。これら2点から片脚着地時に女性群では膝関節の機能的安定性が低下していることが推測される。関節運動の順序は,2群ともに内反または外反と屈曲が同時に起こり,その後内旋が生じた。しかし,女性群において男性群と比較し,有意に膝関節内旋における関節運動速度の遅延が見られた。井田らは,女性の片脚着地に膝関節は内外旋方向への剛性が低いと報告した。Randyらは,女性は着地時の衝撃緩衝を膝で多く行っていると報告した。女性群はゆっくりと小さな内旋運動を最後に行うことにより膝における衝撃緩衝を実現させていることが推測される。
【理学療法学研究としての意義】
健常女性の特徴として着地時に膝関節内反角度が有意に小さく,外反位を示すこと,内旋運動量が少ないこと,内旋の関節運動速度が遅いことが明らかになった。今後の多方面からの検討は必要だが,健常女性特有の衝撃緩衝戦略を明らかにし,外傷の原因究明の一助になりうる可能性を示唆した。
スポーツ動作ではジャンプ及びその着地動作が要求されることが多く,損傷や他の膝外傷予防の観点からも,片脚着地動作時の膝関節運動の男女間の特徴については明らかにする必要がある。しかし,従来の光学式動作解析機器では伸展と屈曲以外の関節運動に大きな誤差を生じる可能性があると報告されてきた。Point Cluster Technique(以下PC法)は,実際の骨運動との整合性が高いことが報告されている。したがって今回はPC法を用いて着地動作の計測を行った。今回PC法にて片脚着地動作の動作解析を行い,健常男性群(男性群),健常女性群間(女性群)での動作を比較することで,健常女性における動作の特徴を見出すことを目的とした。
【方法】
下肢に既往のない健常男性(22歳~26歳:平均年齢22.6±1.26),健常女性(18歳~22歳:平均年齢20±0.87歳)を被験者とした。身体特性はそれぞれ,男性群身長1.71±0.06m,体重64.5±8.3kg,。女性群身長1.59±0.06m,体重52.5±7.1kg,肥満度20.7±3.0であった。着地動作時の運動学データ計測のために赤外線カメラ8台を用いた三次元動作解析装置VICONMX(VICON Motion Systems社,Oxford)を用いて,サンプリング周波数120Hzで計測した。PC法に準じ,直径14mmの赤外線反射マーカーを25個貼付した。得られた各標点の座標データに対し,Andriacchiの開発したPC法演算プログラムで演算処理を行い,膝関節の屈曲・伸展角度,内反・外反角度,内旋・外旋角度,大腿骨座標系原点に対する脛骨座標系原点の前後距離を算出した。計測方法は,被験者は30cmの台からの落下による片脚着地動作を行った。立位時は足部内側間20cm,足先を台の縁とし,着地地点は30cm前方とした。解析区間は着地地点から膝関節最大角度までとし,着地時の膝関節各角度と前後位置,各膝関節最大角度と前後位置を求めた。また,膝関節最大角度時から,着地時を減じ,各運動角度量と前後運動量を算出した。さらに,各角度の最大角度到達時間を求め,各関節運動量から最大運動到達時間を除し,各関節運動速度を算出した。男性群と女性群の比較は,正規分布が確認された場合は,2標本t検定を行った。正規分布が確認できなかった場合は,Mann-WhiteneyのU検定を行った。解析にはDr.SPSSIIfor windows(エス・ピー・エス社,東京)を使用した。なお,数値は平均±標準偏差で表し,p<0.05を持って有意とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
研究の実施に先立ち広島国際大学医療研究倫理委員会にて承認を得た。なお,すべての被験者に研究の目的と内容を説明し,文書による同意を得たうえで計測を行った。
【結果】
着地時において女性群は外反,男性群は内反で有意差が認められた。(女性群 外反2.98°,男性群 内反2.95°,p<0.05)。また,着地時における女性群の内旋運動角度量は,男性群と比較して有意に小さかった。(女性群7.96°,男性群13.44°,p<0.05)。2群の各関節運動の最大運動角度に達する関節運動の順序は,ともに内反または外反と屈曲が同時期に起こり,その後内旋が生じた。最大運動到達時間においては2群間において有意差は認められなかった。各関節運動速度に関しては女性群において男性群と比較し膝関節内旋運動速度が有意に遅延していた。(女性群10.07°/sec,男性群19.48°/sec,p<0.01)。その他の膝関節運動速度において有意差は認められなかった。
【考察】
女性群は男性群と比較し,着地時に膝関節外反位を示した。外反位での片脚立位では膝関節は安定性を獲得することが困難であり,過外旋もしくは過伸展でのみ安定性を獲得するとされている。また,膝関節内旋運動角度量においても男性群と比較し,女性群では有意に小さかった。膝関節は屈曲に伴い内旋を生じさせることで膝関節の安定性を獲得するとされている。これら2点から片脚着地時に女性群では膝関節の機能的安定性が低下していることが推測される。関節運動の順序は,2群ともに内反または外反と屈曲が同時に起こり,その後内旋が生じた。しかし,女性群において男性群と比較し,有意に膝関節内旋における関節運動速度の遅延が見られた。井田らは,女性の片脚着地に膝関節は内外旋方向への剛性が低いと報告した。Randyらは,女性は着地時の衝撃緩衝を膝で多く行っていると報告した。女性群はゆっくりと小さな内旋運動を最後に行うことにより膝における衝撃緩衝を実現させていることが推測される。
【理学療法学研究としての意義】
健常女性の特徴として着地時に膝関節内反角度が有意に小さく,外反位を示すこと,内旋運動量が少ないこと,内旋の関節運動速度が遅いことが明らかになった。今後の多方面からの検討は必要だが,健常女性特有の衝撃緩衝戦略を明らかにし,外傷の原因究明の一助になりうる可能性を示唆した。