[1421] 人工膝関節全置換術前後における足関節アライメントの変化
キーワード:人工膝関節全置換術, 足関節, X線画像
【はじめに,目的】
変形性膝関節症による下肢アライメントの変化は膝関節のみならず,股関節や足関節および足部にも影響を及ぼすと考えられている。しかし人工膝関節全置換術(以下,TKA)後の足関節アライメントの変化に関する報告は少ない。そこで本研究の目的は,TKA術後早期の下肢及び足関節アライメントの変化を明らかにすることである。
【方法】
2011年4月1日から2013年9月30日の間に当院にて初回片側TKAを施行した患者19名(女性15名,男性4名),平均年齢は75±6.8歳(63歳~87歳)を対象とした。全例,変形性膝関節症を対象とし,TKA再置換術及び下肢に整形外科的手術歴を有するものは除外した。方法は,単純レントゲン立位下肢全長正面像を用い,術前,術後の術側下肢の,大腿骨軸,脛骨軸を決定し,それぞれの骨軸と床面のなす角度,及び大腿脛骨角(以下,FTA)を算出した。また距骨関節面の傾斜角度を,距骨傾斜角度とし,脛骨軸とのなす角度を距腿関節傾斜角度として算出した。術後レントゲン撮影時期は術後平均27.7±14.6日(14日~77日)であった。統計学的解析にはR2.8.1を用い,TKA術前,術後の比較は,正規性が認められた場合には対応のあるt検定を行い,正規性が認められなかった場合にはWilcoxonの符号付順位和検定を行った。また各項目間の関係性の検討には,正規性が認められた場合にはPearsonの積率相関係数を用い,正規性が認められなかった場合にはSpearmanの順位相関係数を用いた。なお有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
使用した単純レントゲンは術前,術後の診察用に撮影されたものを使用した。ヘルシンキ宣言に考慮し,当院倫理委員会規定に則りデータ集計を行った。
【結果】
大腿骨軸と床面のなす角度は術前平均86.75±3.34°,術後平均82.37±2.66°,脛骨軸と床面のなす角度は術前平均96.96±3.61°,術後平均90.23±3.02°,FTAは術前平均183.71±6.31°,術後平均172.60±3.38°で術前に比べ,術後有意に減少していた(p<0.01)。距骨傾斜角度は術前平均9.08±5.98°,術後平均1.47±4.67°で術前に比べ,術後有意に減少していた(p<0.01)。距腿関節傾斜角度は術前平均2.30°(0.20~4.95°),術後平均1.90°(-0.40~4.40°)であり,有意差は認められなかった。距骨傾斜角度と距腿関節傾斜角度との間には術前(r=0.82,p<0.01),術後(r=0.72,p<0.01)とも有意な相関が認められた。
【考察】
TKA術後は術前に比較し,大腿骨軸角度,脛骨軸角度,FTAが有意に減少し,TKA施行により生理的外反膝を獲得していた。距骨傾斜角度も術前に比較し,術後有意に減少しており,TKA施行により膝関節アライメントが改善され,脛骨軸角度が減少し,距骨傾斜角度も減少したと考えられた。距腿関節傾斜角度はTKA術前,術後において有意差は認められず,術後距骨傾斜角度および距腿関節傾斜角度と,術後大腿骨軸角度,脛骨軸角度,FTAとの間には相関は認められなかった。したがって,術後早期ではTKAによる足関節アライメントへの影響はないと考えられた。術後距骨傾斜角度と術後距腿関節傾斜角度に相関が認められ,また先行研究よりTKA術後早期において舟状骨高位の低下,Leg-Heel Angleの増大は残存しているとの報告がある。本研究でTKA術後早期の足関節アライメントに変化を認めなかったのは,足部全体のアライメント異常の残存が影響していると推察され,TKA術後早期において距腿関節を含む足部へのアプローチが必要であると考えられた。
【理学療法研究としての意義】
TKA術前,術後において距骨傾斜角度は有意に減少するが,距腿関節傾斜角度には変化がみられないことが明らかになった。今後は長期的な経過,詳細な足部アライメントを含めた検討が必要と考える。本研究よりTKA術後早期において,距腿関節を含めた足部へのアプローチが必要であることが示唆された。
変形性膝関節症による下肢アライメントの変化は膝関節のみならず,股関節や足関節および足部にも影響を及ぼすと考えられている。しかし人工膝関節全置換術(以下,TKA)後の足関節アライメントの変化に関する報告は少ない。そこで本研究の目的は,TKA術後早期の下肢及び足関節アライメントの変化を明らかにすることである。
【方法】
2011年4月1日から2013年9月30日の間に当院にて初回片側TKAを施行した患者19名(女性15名,男性4名),平均年齢は75±6.8歳(63歳~87歳)を対象とした。全例,変形性膝関節症を対象とし,TKA再置換術及び下肢に整形外科的手術歴を有するものは除外した。方法は,単純レントゲン立位下肢全長正面像を用い,術前,術後の術側下肢の,大腿骨軸,脛骨軸を決定し,それぞれの骨軸と床面のなす角度,及び大腿脛骨角(以下,FTA)を算出した。また距骨関節面の傾斜角度を,距骨傾斜角度とし,脛骨軸とのなす角度を距腿関節傾斜角度として算出した。術後レントゲン撮影時期は術後平均27.7±14.6日(14日~77日)であった。統計学的解析にはR2.8.1を用い,TKA術前,術後の比較は,正規性が認められた場合には対応のあるt検定を行い,正規性が認められなかった場合にはWilcoxonの符号付順位和検定を行った。また各項目間の関係性の検討には,正規性が認められた場合にはPearsonの積率相関係数を用い,正規性が認められなかった場合にはSpearmanの順位相関係数を用いた。なお有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
使用した単純レントゲンは術前,術後の診察用に撮影されたものを使用した。ヘルシンキ宣言に考慮し,当院倫理委員会規定に則りデータ集計を行った。
【結果】
大腿骨軸と床面のなす角度は術前平均86.75±3.34°,術後平均82.37±2.66°,脛骨軸と床面のなす角度は術前平均96.96±3.61°,術後平均90.23±3.02°,FTAは術前平均183.71±6.31°,術後平均172.60±3.38°で術前に比べ,術後有意に減少していた(p<0.01)。距骨傾斜角度は術前平均9.08±5.98°,術後平均1.47±4.67°で術前に比べ,術後有意に減少していた(p<0.01)。距腿関節傾斜角度は術前平均2.30°(0.20~4.95°),術後平均1.90°(-0.40~4.40°)であり,有意差は認められなかった。距骨傾斜角度と距腿関節傾斜角度との間には術前(r=0.82,p<0.01),術後(r=0.72,p<0.01)とも有意な相関が認められた。
【考察】
TKA術後は術前に比較し,大腿骨軸角度,脛骨軸角度,FTAが有意に減少し,TKA施行により生理的外反膝を獲得していた。距骨傾斜角度も術前に比較し,術後有意に減少しており,TKA施行により膝関節アライメントが改善され,脛骨軸角度が減少し,距骨傾斜角度も減少したと考えられた。距腿関節傾斜角度はTKA術前,術後において有意差は認められず,術後距骨傾斜角度および距腿関節傾斜角度と,術後大腿骨軸角度,脛骨軸角度,FTAとの間には相関は認められなかった。したがって,術後早期ではTKAによる足関節アライメントへの影響はないと考えられた。術後距骨傾斜角度と術後距腿関節傾斜角度に相関が認められ,また先行研究よりTKA術後早期において舟状骨高位の低下,Leg-Heel Angleの増大は残存しているとの報告がある。本研究でTKA術後早期の足関節アライメントに変化を認めなかったのは,足部全体のアライメント異常の残存が影響していると推察され,TKA術後早期において距腿関節を含む足部へのアプローチが必要であると考えられた。
【理学療法研究としての意義】
TKA術前,術後において距骨傾斜角度は有意に減少するが,距腿関節傾斜角度には変化がみられないことが明らかになった。今後は長期的な経過,詳細な足部アライメントを含めた検討が必要と考える。本研究よりTKA術後早期において,距腿関節を含めた足部へのアプローチが必要であることが示唆された。